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26 シシリー的にはオールOK

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「見た?あの国王の顔。すぐ追い返したいって感じでした!」

「ええ!周りの貴族達も同調してましたし、すぐ帰ることが出来そうですわね!シシリー様」

 豪華だけれどもどこか薄汚れた客間に案内され、私の侍女達だけになった途端お喋りが始まる。皆緊張してたものね。

「ええ、そうね。皆も頑張ってわがまま皇女の使用人を演じてどんどん嫌われてちょうだいね。但しやり過ぎな禁物よ、この国は血の気が多い人が多そうだわ」

「ええ!勿論ですわ、シシリー様」

 実家にいる時より一致団結している私達。さあ、頑張って婚約破棄されるわよぉーー!


 そうやって私達が絆を深めている頃、ゾーネ王宮の方も団結していたようだったの。

「これほどまでとは……」

「噂に違わぬ豚っぷり」

「早く追い出しましょう!」

「……皆の意見も尤もであるが、この縁談は我が国が望んだ物だと言う事を忘れるな」

 国王は苦々しく下知する。全くどう言うつもりなのかと、問いたいが本人は姿を現さないから聞き出す事も出来ない。

「全くギルは何を考えているんだ」

 ゾーネ国国王ガザルとその弟ギルマルドは仲の良い兄弟だが、ガザルにも限界がある。流石に無能な黒豚を義妹と呼ぶ訳にはいかない。

「兄上、兄弟が間違った道に進もうとしているなら正してやるのもまた兄弟の責務かと!」

 ギルマルドの下の弟ゲーニッツは苦々しく吐き捨てる。武門の家系らしい体つきのゲーニッツは肉体の怠惰を嫌う男だ。

「あの豚!存在が許せない!」

「分かるわ!」

 下の妹のゴーテルもシシリーを敵視した。

「分かりますぞ!」

「なんですの!醜いあの女は!」

 とにかくシシリーは全員にめでたく嫌われ、シシリー的には順調な滑り出しだった。


「あら、誰も起こしに来ないわね?疲れてたからちょうど良いわ」

 いつもなら侍女達がシシリーを起こしに来る時間に誰も現れなかった。しばらくしてメイドがやって来る。

「申し訳ございません!勝手が分からずこちらの城の指示を待っていましたら、もう朝食は終わったと……」

「つまりは私に食べさせる朝食などない、と言うことね?あなた達はどう?お腹空いてない?」

 困った顔のメイドは

「使用人用のご飯なら用意できると言われております……」

 あらあら、意外と優しいわね。

「豚に飯抜きが一番堪えるとか思われてそうね、ふふふ!予想通り」

「シシリー様、申し訳ございません……」

 この子は真面目ねぇ?

「良いのよ、リンダ。そうねぇここはわがままっぷりを発揮するところかしら?厨房へ行って「わたくしに食べさせる料理は作れないと言うのっ?!」と、凄く怒っていたと伝えてちょうだい」

 お腹は空いてるけど、そこまでじゃない。一食でも抜くと怒り狂う食いしん坊キャラでもないしね。

「良い?大袈裟に言うのよ。暴れて本を投げた!とか言ってちょうだいね」

「え?うふふ、分かりましたー!」

 リンダはやっと笑顔を見せてくれた。良かったわー!



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