上 下
48 / 69

48 や、病んでる!!

しおりを挟む
「わあ、きれいになったなあ」

 ゴツゴツぐちゃぐちゃの荒野だった殿下の中はきれいに変わってた。まだ老廃物が捨てきれてなくてゴミ小山を作ってるところもあるけれど、きっと全身を巡る血液や魔力に乗って浄化されていくだろう。ボロボロだった血管の穴もふさがって血が漏れることもなくて、やっぱり若いって凄いと思う。すいーっと頭のほうに上がっていくと、瘤はもうなくなっていたけれど、瘤に押された部分はやっぱり少し戻り切っていない。

「きっとこういうののせいなんだろうけど、これ以上どうしようもないなあ……」

 ちょっと変形してるけど、色も正常だし、うん、もう大丈夫だ。やっぱり俺に出来ることは何もない。

(シャト……シャト、いるんだろう?)

「へ」

 あれ?頭の中なのに殿下に話しかけられた!?どどどどどうしてかな??なんでかな!??

(ウィルズ宰相がね。教えてくれたんだよ……シャトの本体は小っちゃいんだってね)

「ま、まさか……」

(ああ、嬌声を上げて泣きながら喜んで教えてくれたってさ。実際私達は、ソレが知りたかったんだ……最後まで中々言ってくれなかったらしいけど、リッツとオリーの二人がかりだろう? 流石に重い口を開いてくれたって)

 宰相可哀想!!と思ったけれど、俺は気が付く。急いで殿下の体から出ようとするけれど、ぽよん、と内側に跳ね返された!あっ!出られない!

(聞いたよ……全身に魔力を回して、こう……膜のようなものを作るんだって。そしたらシャトは出られない、そうなんだろう?ははは……これでずっと一緒だねえ?シャト)

「え……でん、か……?」

 何か、様子がおかしいぞ……。

(これで、もうずーーっと一緒だ、シャト。もうどこにも行かせない。私の頭の中でずーっとずーっと一緒に暮らしておくれ。シャトの体は死んじゃうかもしれないけれど、頭の中の小さいシャトが一緒にいてくれるなら我慢できるよ。大丈夫、体の方もなるべくきれいに保存しよう。そしてたまに眺めたり触ったりできるように、ずーっと)

「ひいっ!殿下、病んでる!!」

(病んではいないよ、病気はシャトが治してくれたんでしょう?シャト。嬉しいよ、ありがとう愛している。私が死ぬまでずっと一緒だ)

「ぎゃーーーーー!? 助けて宰相さん!」

(ウィルズ宰相ならリッツとオリーに抱えられて連れさられたよ。3日くらいは足腰立たないんじゃないかなあ)

「ひーーーーーー!?」
「ずーっと、ずーっと一緒だ……シャト。大好き、愛している」

 殿下が意識のない俺の体の方を抱き上げて、頬ずりしている。やばいまずい、俺は何度も体当たりしてるけれど、内側へ内側へポインポイン跳ね返される。で、出られない~~~~!

 どうする!?どうすればいい!?ここで頼ることができる人は……いない!

「うーわー……詰んだ」
「そうだね、作戦とはそういう風に立てるものだ。ふふ、諦めなさいシャト」
「うわああああ!殿下酷いー!」
「シャトは叫び声も可愛いなあ、何だろういつもより元気だね。シャト本体は自分のこと俺って言うんだねえ、新鮮で可愛いよ」

 だ、駄目だ……こいつ、早く何とかしないと!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで

橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。 婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、 不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。 --- 記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘! 次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。 --- 記憶は戻りますが、パッピーエンドです! ⚠︎固定カプです

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...