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35 俺のせいじゃない

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「ホルランド殿下。私が誰だか分かりますか?」
「私のシャトルリアだ」
「(貴方のものではありませんが)大丈夫そうですね。あとはまだ体に蓄積されている薬物を抜き、体力を戻してやれば問題ないですよ」

 まだカサカサとした場所も多いし、抜けてしまった歯は戻らないけれど、残ったものでもちゃんとご飯は食べられるだろう。早目に処置できてラッキーだな、殿下!めでたしめでたし。

「では、そろそろ私はお暇を……」
「シャト!パ、パンケーキがまだ来ていない!」
「では料理長にお願いしてきますね」
「そばに居てシャト」
「……」

 殿下はちょっとわがままになった。まあ頭の中をかなりいじってしまったから、性格が変わってしまったのかな。そこは少し申し訳ないと思うけど、命には代えられないよな?
 に、してもだ!流石に俺だっていう時はいうぞ!

「私はもうホルランド殿下の婚約者ではございません。治療が終わったので国へ帰らせてもらいます」

 カシャーン!メイドちゃんがお高いティーセットを落として割った。ガチャーン!出来る侍従君が超お高そうな壺を落として割った。バリーン!窓の側にいた護衛騎士がよろけて壁の絵を破いた。

「ちょ、ちょっと皆?! 」

 この一瞬で一体どれくらいの資産が失われたんだ?!お、俺のせいじゃないよね???

「シャト、シャト……か、帰る?なぜ、シャトは私のそばに……」
「いえ、私とホルランド殿下は何の関係もなくなっています。帰ります」

 ピシャァーーーーン!雷に打たれた人はこんな顔をするんだろうな?という顔をして殿下が硬直した。ちょうど良いから少し離れよう。この人、回復してから距離感がゼロだ。暑苦しいわ!

「しゃ、しゃとぉ……」

 今度は噂に聞く捨てられた子犬の顔か?捨てられたのは殿下じゃなくて俺でしょうに。

「何でしょうか?」
「わ、私を捨て、な……」
「捨てられたのは私ですが?」
「あぅ」

 いやまあ、あまり病人を虐める趣味はないが、流石にそれは調子が良過ぎるよ?殿下。
 ティーセットの破砕音を聞いて駆けつけて来た侍女ちゃん達も護衛騎士達も侍従達も皆青い顔で倒れた。

「王太子妃様が、シャト様が、か、え、る、と……?ふぅ」
「?! 」

 なんか死屍累々の山ができてるんですけど??ちょっとーー!?

「シ、シャト、あ、あの……あの、あのね」

 病気だったとか、薬のせいだったとかいろいろあるのは分かるけれど、でもね?事実は事実。王族が行って、しかも王の印まで押してある書類もあるんだよ?その事実はどうしようもないことなんだよ?俺がどんだけ苦しい思いをしたか、どんな気持ちでここに来たか、そしてここに立っているか分かっているのかな?
 ……分かっているから、もう一度婚約者になれとは言えないのかな?まあ、婚約者なんてまっぴらごめんだけど。




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