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9 ぶいーん、ゴーカートだ

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「仕方がないだろう、サライ。ちらっと見たけど、マチェット様の魔力は本物だ」
「分かってる! 分かってるから悔しいんじゃないか!! 」

 そうだよなあ……。そういえばサライ君の魔力具合はどうなんだろう? おへその方まで移動してみようっと。おっと血管内は動きやすい。流石騎士さん、運動してるからコレステロールはたまってないネ!

 うーん。多少魔力がたまってるなあ。マチェット君に比べたら溜まってる量は少ないけれどなんなんだろう、出口がやっぱり狭窄してる。もしかしたらこの国の人達はこういう内臓なんだろうか?? ちょっと押し広げてやろうかな? なんて思ったけれど、待てよ、ここでこのサライ君が魔法めっちゃ使えるようになったらマチェット君が騎士様にもう要らないって言われたらどうしよう? 捨てられちゃうかも。
 俺、2年くらいくっ付いてたマチェット君が捨てられて泣いちゃうのみたくないな……。今もすげーだるそうだけど、頬を赤らめて、にこにこ嬉しそうにパトリック君にくっ付いて一緒にご飯食べたりしてる幸せそうなマチェット君。可哀想だよなあ……つーことでサライ君はちょっと保留!
 魔力流せるんだから、魔力回路の強化に勤めようぜ、サライ君! 俺も応援しちゃうからさ。

「わかった……」
「サライ? 誰に言ってんの?」
「へ?」

 サライ君にも俺の思ったことがちょびっと伝わってしまったみたいだ。まあまあ、頑張ろうぜサライ君。俺がくっ付いた日からサライ君は魔力回路に魔力を回す練習を始めた。

ぶいーん。

 そんな感じで俺は魔力に乗って魔力回路を爆走中。ゴーカートみたいでなんか楽しい。流石に何年も前から覚醒して、魔力を回すのが上手いサライ君の魔力回路は滑りやすい。きっと流れる魔力を増やせばリュージュくらいのスピードで滑ることができる気がする、良いねえ、サライ君!

「サライ、魔力を練るのが上手くなったな」
「ありがとうございます、パトリック様」

 サライ君はもやもやしながらもパトリック君と話せるようになったし、マチェット君のことをあんまり睨まなくなった。なんていうか結構良い奴なんだな……。

「……頑張ってくださいね。パトリック様のために」
「……サライ様……」

 ちょっとトゲトゲしいけど、マチェット君とお話もするようになった。サライ君は自分の気持ちよりパトリック君の利益を優先する手下中の手下だった。偉いなあ、サライ君。

 結構時間をかけてパトリック君一行は首都ってところについた。俺、初めての都会~! サライ君の中から都会の景色が見える。凄い、マチェット君の家は本当に田舎にあったんだ。凄い凄いマジで異世界してるーすごいー! 俺がお上りさんよろしくサライ君の頭のなかで感激してるとサライ君がくすりと笑った。

「どうしたんだ? サライ」
「いいえ、初めて首都を見た日のことを思い出して。あの時、私も思いっきりはしゃいだなって」
「そうだなあ、俺も地方出身だったから初めて来た首都の大きさには驚いたもんなあ」

 サライ君は同僚とほのぼの話をしている。俺のはしゃぎっぷりが伝わってしまったようだ。ちょっと恥ずかしいな。ちなみにこのサライ君の同僚君、サライ君のこと憎からずっていうか好きなんだよなあ。サライ君はパトリック君一筋だったから気が付いてなかったけど、こいつ何かにつけてサライ君の横をキープしてる。ていうか、このパトリック君の腰巾着部隊、サライ君狙い多い。

 ……俺、もしかして男同士愛し合っちゃうのが多い世界に紛れ込んだの??


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