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IF編 闇へ
4 なぜ
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シロウにミシェルからの手紙が届き、開いて最初の文字を見た瞬間から、シロウはガタガタと震え出した。
「シロウ?!」
隣にいたレジールはシロウの異変に驚く。
「れ、レジールさま、お、俺、いかな、きゃ、レザントに、今、すぐ」
「馬車を!一番速い馬車を用意しろ!」
何も聞かずレジールは手配をする。
「私も同行させてくれ。邪魔はしない」
真剣な顔のレンテドールも名乗りをあげたので、三人は取るものも取らず、レザントに向けて走り出した。
真っ青な顔のシロウが、自ら口を開くまで二人は辛抱強く待ち、ついにシロウは話す。
「ミシェルさまが、美恵を保護したって……」
「美恵、とは?」
努めて優しく、レンテドールは聞き返す。
「美恵、は、俺の妹……この、世界に連れて、来られる前に、いた世界の、妹……何で美恵が……」
今にも吐きそうな顔をしながら、シロウは懸命に話す。
自分はこの世界の人間ではなかった事。神様に無理矢理連れて来られた事。この世界に突然落とされた事。そして……レンテドールを癒し、人間に捕まった事。
「何で、美恵がこの世界に……?」
しかもミシェルの手紙の内容は更にシロウの顔色を失わせた。
「美恵は、突然王宮に現れた。だから、不審者として囚われた。かなり酷い目に合わされた……ご、拷問の、あ、跡も……」
「良い!言わなくて良い!」
レジールはシロウを抱き締め、レンテドールがシロウの許可を得て手紙を黙読する。
中には女性にする仕打ち以上の凄惨な跡があったと書かれていた。
「シロウ、急いで来て頂戴、ミエをそちらに送る事は出来ない。衰弱が激しすぎて動かせないの。早く、早く来て頂戴!ミエの命が繋がっている間に!」
文字も文も乱れている。本当に急いで書いたのだろう。それでもジェストとレザントはかなり遠い。
ガタガタと恐怖で震えながら、シロウは馬車で進むしかない。
「……」
レンテドールは手紙を丁寧に畳むと、シロウに手渡した。どうするべきか、どうしたらシロウの為になるか。
レンテドールの腹心達は既に先へ走っている。シロウの為なら足や腕が折れようとも笑っていられる信用に足るもの達だ。
特にうさぎなどは行き過ぎたほど医療に詳しい。人間どものヤブ医者にシロウの妹を預けてなどおきたくない。
「疲れるかもしれんが夜通しかけよう。チュタ、ラビア良いな」
「問題ないっす」
「任せろ!」
「替えの馬車の手配をしておく」
「頼む」
「美恵……美恵……どうして……」
これ以上何に助けを求めれば良いかシロウには分からなかった。
「シロウ?!」
隣にいたレジールはシロウの異変に驚く。
「れ、レジールさま、お、俺、いかな、きゃ、レザントに、今、すぐ」
「馬車を!一番速い馬車を用意しろ!」
何も聞かずレジールは手配をする。
「私も同行させてくれ。邪魔はしない」
真剣な顔のレンテドールも名乗りをあげたので、三人は取るものも取らず、レザントに向けて走り出した。
真っ青な顔のシロウが、自ら口を開くまで二人は辛抱強く待ち、ついにシロウは話す。
「ミシェルさまが、美恵を保護したって……」
「美恵、とは?」
努めて優しく、レンテドールは聞き返す。
「美恵、は、俺の妹……この、世界に連れて、来られる前に、いた世界の、妹……何で美恵が……」
今にも吐きそうな顔をしながら、シロウは懸命に話す。
自分はこの世界の人間ではなかった事。神様に無理矢理連れて来られた事。この世界に突然落とされた事。そして……レンテドールを癒し、人間に捕まった事。
「何で、美恵がこの世界に……?」
しかもミシェルの手紙の内容は更にシロウの顔色を失わせた。
「美恵は、突然王宮に現れた。だから、不審者として囚われた。かなり酷い目に合わされた……ご、拷問の、あ、跡も……」
「良い!言わなくて良い!」
レジールはシロウを抱き締め、レンテドールがシロウの許可を得て手紙を黙読する。
中には女性にする仕打ち以上の凄惨な跡があったと書かれていた。
「シロウ、急いで来て頂戴、ミエをそちらに送る事は出来ない。衰弱が激しすぎて動かせないの。早く、早く来て頂戴!ミエの命が繋がっている間に!」
文字も文も乱れている。本当に急いで書いたのだろう。それでもジェストとレザントはかなり遠い。
ガタガタと恐怖で震えながら、シロウは馬車で進むしかない。
「……」
レンテドールは手紙を丁寧に畳むと、シロウに手渡した。どうするべきか、どうしたらシロウの為になるか。
レンテドールの腹心達は既に先へ走っている。シロウの為なら足や腕が折れようとも笑っていられる信用に足るもの達だ。
特にうさぎなどは行き過ぎたほど医療に詳しい。人間どものヤブ医者にシロウの妹を預けてなどおきたくない。
「疲れるかもしれんが夜通しかけよう。チュタ、ラビア良いな」
「問題ないっす」
「任せろ!」
「替えの馬車の手配をしておく」
「頼む」
「美恵……美恵……どうして……」
これ以上何に助けを求めれば良いかシロウには分からなかった。
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