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動物に異様に好かれる手

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「知ってっか?今は獣人の方が偉いんだぜ。お前の理論から行くと、俺らはお前を虐めて良いんだけど?」

「は?!そんな事ない!」

「人間の神、リリーシュアが力を失って、俺たちのアリルレオンが一番力を持ったんだ。わかるだろ?お前らの神様は祈っても無反応。俺らの神様はさっきまでそこにいて、助けてくれる」

「う、嘘だ!!リリーシュア神は力を失ってなんてない!」

「なら、祈ってみれば?」

 はーやれやれと言った風に、攻撃の手を止めてしまった。

「シロウ!アリルレオンの加護をくれ!」

「え!あ、はい!」

 レジール、レンテドール、シロウに次々とアリルレオンからの加護として回復や、防御などの魔法がかかって行く。

「神様!神様!リリーシュア様!」

 答えはない。

「どうして!」

「だから、リリーシュアには答える力がねーんだってよ。あと、お前もう魔王だろ。神の加護なんて貰えねーよ」

「う、嘘だ。私が魔王……!?」

「お前らの神様が魔王になれってよ。本当、理解できねぇよ」

「嘘だ、私は知らない!だって、私は……私は……」

 真っ黒な魔王という力の中に核となったゼリアの心が見え隠れしている。

「私はただ、誰かに愛して貰いたかっただけなのに……」

 母に、父に、兄に、弟に。メイドに、庭師に、料理人に。誰でもなんでも良かった。ただ、愛して貰いたかっただけなのに。
 羨ましかった。母親に愛されているレオニーが。侍女達もレオニーの事を愛していた。同じ愛してくれない父がいるのに、レオニーの周りには愛が溢れて、ゼリアには一つもなかった。
 みどりの芝生の上で楽しそうに、歌を歌っているなんて、ゼリアが夢にまでみて憧れた姿だったのに。

「どうして……」

「あーそりゃお前が人間だったからだろ」

 レジールの答えは身も蓋もない。レジールの中でゼリアは魔王であり、倒すべき相手で、シロウの邪魔になる者だ。
 少し手を緩めている今はただの気まぐれだ。

「人間だから……獣人なら愛して貰えた……?」

「少なくても獣人ならシロウは愛してくれるだろうな」

 シロウの博愛はとても広い。でもその愛の中で一番深くて濃い所を独り占めしている自覚はあるし、優越感がある。
 だからレジールも本気でシロウを愛している。他の者と分け隔て、深い所まで自分を許し、受け入れてくれるシロウを心の底から愛している。

「そうか……私も獣人に生まれたかったな……」

「次は獣人に生まれて来れば良いんじゃないか?」

 なんの毒気もなくそう言われ、ゼリアは笑った。

「そう、だな。ぜひそうさせてくれ」

「おーそうしろそうしろ」

 レジールは腕を振り上げる。

「ありがとう、獅子の勇者。できる事ならあなたの子供として生まれてみたかった」

 ザン!振り下ろされると音がして、ごとり、とゼリアの首は地に転がった。呆気ない幕切れだった。

「残念だが、俺に子供ができる事はねーぜ。何せ嫁が男だからな」

 だがそれはレジールが望んだ事だから後悔も何もないし、レジールはゼリアの願いを叶えてやる義理もない。

 魔王というシステムを組み込んだままのゼリアの首を奉納して、幕を閉じることになった。


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