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動物に異様に好かれる手
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「死ね!死ねぇ!」
「断る」
ざんっ!伸びた爪がまた少し闇を抉り取り、魔王になったゼリアはぐらりと傾いた。
ゼリアの周りは瘴気が満ちていて、そばにいるだけで病んで行くのに、レジールは平気な顔で切りかかってくる。
「なんだ?!障壁か!」
「お前にいうべき事はないな!」
ゼリアの目にも闇を弾く緑の壁が見え隠れする。
「あいつか!あの奴隷!」
後ろにあのレオニーが懐いていた奴隷の男が見える。守られながらひょこひょこと顔を出し、何かを唱える。それはゼリアの邪魔をするものだ。
「まずはお前を黙らせる!」
「レンテドールっ!」
目障りな男が闇を裂く。
「大丈夫だ、問題ない」
あの奴隷を庇うように、立ち塞がる。
「シロウを狙ってんじゃねーよ!」
「ぎゃっ!」
目の前の男に深々と切り裂かれた。痛い、痛いなんてなんて酷い。
「痛い!痛いよ!」
「おめーに殺された奴らも同じ事言ったろうな!ほら、お前の後ろの奴等も同じ事言ってるぜ!」
振り返ると、闇に囚われたままの王と王妃、そして第一王子が叫んでいた。
「痛い…!痛い!」
「ゼリア……なんて事を……!」
「憎い……お前がぁ……!」
「ひっ!」
私はそれから離れようとした。でもこれから離れるには目の前の男に近づかねばならない。
目の前の男は怒っていて、また私を攻撃してくる。
「わ、私は、私は悪くない!」
「ああん?!悪いだろーが!お前、何人殺したんだよ!ここに来るまで人がいなかったぞ?!全部お前がやったんだろ?!」
私が……?そういえば、生きている物を殺せと誰かに命令したような。誰が?誰に……?
し、知らない!私は知らない!
「レンテドール様、あの魔王何か変です」
「よく分からないが、レジール殿との話が明確になって来ているな」
シロウは頷いた。
「さっきまで、真っ黒な塊だったんです。何もない、真っ黒な。今、少しだけ違う物があるような気がして」
「闇に呑まれていた元の人間が裂かれて顔を出したか?」
「そう、かもしれません」
もっと闇を切り裂けば!
「レジール様、お願いします!」
「ふ、やはり愛しい者の声が一番力になるな」
ニヤリと笑うレジールに、ゼリアは声を上げる。
「愛しい?あいつ奴隷で男だろう?!愛しいってなんだよ、おかしいだろう!」
「俺が誰を愛そうとお前には関係ない。口を挟むな、ひよっこが!」
牙を剥き、爪を光らせるレジールにゼリアは後退りする。
「し、しかもあいつ人間だろ!お前獣の癖になんで!」
「俺がシロウを愛したんだ人間だとか獣人だとか、どうでもいいんだよ、うるせぇな!」
「どうでも良くないよ!だって母上が言ったんだ!獣人は汚らしい、人間より下の生き物だから、生きている意味がないって!虐めて良いんだって!」
「はん」
レジール様は小指を頭の上の耳をほじった。
「断る」
ざんっ!伸びた爪がまた少し闇を抉り取り、魔王になったゼリアはぐらりと傾いた。
ゼリアの周りは瘴気が満ちていて、そばにいるだけで病んで行くのに、レジールは平気な顔で切りかかってくる。
「なんだ?!障壁か!」
「お前にいうべき事はないな!」
ゼリアの目にも闇を弾く緑の壁が見え隠れする。
「あいつか!あの奴隷!」
後ろにあのレオニーが懐いていた奴隷の男が見える。守られながらひょこひょこと顔を出し、何かを唱える。それはゼリアの邪魔をするものだ。
「まずはお前を黙らせる!」
「レンテドールっ!」
目障りな男が闇を裂く。
「大丈夫だ、問題ない」
あの奴隷を庇うように、立ち塞がる。
「シロウを狙ってんじゃねーよ!」
「ぎゃっ!」
目の前の男に深々と切り裂かれた。痛い、痛いなんてなんて酷い。
「痛い!痛いよ!」
「おめーに殺された奴らも同じ事言ったろうな!ほら、お前の後ろの奴等も同じ事言ってるぜ!」
振り返ると、闇に囚われたままの王と王妃、そして第一王子が叫んでいた。
「痛い…!痛い!」
「ゼリア……なんて事を……!」
「憎い……お前がぁ……!」
「ひっ!」
私はそれから離れようとした。でもこれから離れるには目の前の男に近づかねばならない。
目の前の男は怒っていて、また私を攻撃してくる。
「わ、私は、私は悪くない!」
「ああん?!悪いだろーが!お前、何人殺したんだよ!ここに来るまで人がいなかったぞ?!全部お前がやったんだろ?!」
私が……?そういえば、生きている物を殺せと誰かに命令したような。誰が?誰に……?
し、知らない!私は知らない!
「レンテドール様、あの魔王何か変です」
「よく分からないが、レジール殿との話が明確になって来ているな」
シロウは頷いた。
「さっきまで、真っ黒な塊だったんです。何もない、真っ黒な。今、少しだけ違う物があるような気がして」
「闇に呑まれていた元の人間が裂かれて顔を出したか?」
「そう、かもしれません」
もっと闇を切り裂けば!
「レジール様、お願いします!」
「ふ、やはり愛しい者の声が一番力になるな」
ニヤリと笑うレジールに、ゼリアは声を上げる。
「愛しい?あいつ奴隷で男だろう?!愛しいってなんだよ、おかしいだろう!」
「俺が誰を愛そうとお前には関係ない。口を挟むな、ひよっこが!」
牙を剥き、爪を光らせるレジールにゼリアは後退りする。
「し、しかもあいつ人間だろ!お前獣の癖になんで!」
「俺がシロウを愛したんだ人間だとか獣人だとか、どうでもいいんだよ、うるせぇな!」
「どうでも良くないよ!だって母上が言ったんだ!獣人は汚らしい、人間より下の生き物だから、生きている意味がないって!虐めて良いんだって!」
「はん」
レジール様は小指を頭の上の耳をほじった。
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