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動物に異様に好かれる手

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 シロウ……いいえ、史郎。ありがとう来てくれて。少しだけ待ってね

 マリル、良く頑張りました。これからも人を、獣を導いてください。私の心を携える者、聖女として。

「ありがとうございます!アリルレオン様!シロウ様にご加護を!」

 マリルと呼ばれた羊の少女がどんどん見えなくなり、真っ白な空間にシロウは立っていた。

「シロウ、史郎。会うのは初めてですね。わたくしは獣と獣人の女神アリルレオンです」

「……」

「謝罪は……後にします。まず、あなたを呼んだリリーシュアは主神から落ち、わたくしが今この世界の主神となりました。あなたの、神の神子たる貴方の扱いの酷さ故に。勇者は何人も用意できるけれど、勇者を選定する神子は一人しか選べないのに」

 シロウは何も答えなかった。シロウの心の中をある程度理解しつつ、アリルレオンは話を続けた。
 シロウが本気で拒否すれば、アリルレオンとの繋がりも切れてしまうから。

「史郎。貴方はリリーシュアの神鳥の神子からわたくしの獅子の神子になります。胸を見せて、お願い。そのままでは卵が腐って悪魔を産むわ」

 そっとアリルレオンは手を伸ばし、シロウの胸の中央にある黒い染みを見る。

「ギリギリね……。あなたの為に詰め込まれたスキル達がここにいたの。神殿で孵化させるつもりだったのよ。……どうして割ってあげなかったのかしら」

 アリルレオンが触れると黒いモヤはとれ、丸い卵がそこにある。

「……シロウ、魔王は甦るわ。勇者を選定するの。魔王を倒して、澱みを祓って。それがわたくしからの願いの全てよ」

「なんで……助けてくれなかったの……?」

「ごめんなさい。あの時、わたくしには力がなかった。争う獣人達を止められず、人間も止められず。愛しい子供達が虐げられるのを見ているしか出来なかった」

 アリルレオンがふわりと手を振ると、心配そうに見つめる獣人達が見えた。

「シロウが、わたくしに力をくれた。あなたの愛が全てわたくしの力になったの。シロウは獣人達の争いを無くして、皆に笑顔をくれた。そしてわたくしの力はリリーシュアを抜いた。
 これからこの世界は獣人が満ちるわ。人は減るでしょう、リリーシュアの力が小さくなったから」

 皆、あなたの心配をしているのね。アリルレオンは笑う。

「ありがとう史郎。私の愛し子、私の神子。私の子供達を導く者。これからも子供達を可愛がって欲しいのだけれども、駄目かしら?」

「嫌だって言ったらどうするんだ?」

「許すわ。私の愛しい子。もう好きに生きて良いくらいあなたは良くやってくれたもの。好きな物と好きな人に囲まれて暮らして良いの……でも、魔王は止められない。あんな馬鹿なシステムをなぜリリーシュアがつけたのか。子供を苦しめる試練なんて」

 アリルレオンは怒りをあらわにする。

「放っておけば魔王の力は増して行きます。だから目覚めると同時に倒してしまいたい。魔王は人間も獣人も獣も分け隔てなく殺して行くでしょうから」

「そんな魔王なんて、俺にはどうしようもないだろう?」

「あなたの力はまだ目覚めていないだけよ。卵の中で寝ているの」

「……俺、何か出来るのか?」

「何でも出来るわよ、私の愛しい子。あなたはとても強いの。レジールもレンテドールもあなたが守ってあげるのよ」

「え?!俺が!?レジール様を?!」

「ええ、そうよ。だってあなたが神子だもの」

 アリルレオンはやっと本当の史郎と話ができると喜んだ。

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