42 / 80
動物に異様に好かれる手
42
しおりを挟む
シロウ……いいえ、史郎。ありがとう来てくれて。少しだけ待ってね
マリル、良く頑張りました。これからも人を、獣を導いてください。私の心を携える者、聖女として。
「ありがとうございます!アリルレオン様!シロウ様にご加護を!」
マリルと呼ばれた羊の少女がどんどん見えなくなり、真っ白な空間にシロウは立っていた。
「シロウ、史郎。会うのは初めてですね。わたくしは獣と獣人の女神アリルレオンです」
「……」
「謝罪は……後にします。まず、あなたを呼んだリリーシュアは主神から落ち、わたくしが今この世界の主神となりました。あなたの、神の神子たる貴方の扱いの酷さ故に。勇者は何人も用意できるけれど、勇者を選定する神子は一人しか選べないのに」
シロウは何も答えなかった。シロウの心の中をある程度理解しつつ、アリルレオンは話を続けた。
シロウが本気で拒否すれば、アリルレオンとの繋がりも切れてしまうから。
「史郎。貴方はリリーシュアの神鳥の神子からわたくしの獅子の神子になります。胸を見せて、お願い。そのままでは卵が腐って悪魔を産むわ」
そっとアリルレオンは手を伸ばし、シロウの胸の中央にある黒い染みを見る。
「ギリギリね……。あなたの為に詰め込まれたスキル達がここにいたの。神殿で孵化させるつもりだったのよ。……どうして割ってあげなかったのかしら」
アリルレオンが触れると黒いモヤはとれ、丸い卵がそこにある。
「……シロウ、魔王は甦るわ。勇者を選定するの。魔王を倒して、澱みを祓って。それがわたくしからの願いの全てよ」
「なんで……助けてくれなかったの……?」
「ごめんなさい。あの時、わたくしには力がなかった。争う獣人達を止められず、人間も止められず。愛しい子供達が虐げられるのを見ているしか出来なかった」
アリルレオンがふわりと手を振ると、心配そうに見つめる獣人達が見えた。
「シロウが、わたくしに力をくれた。あなたの愛が全てわたくしの力になったの。シロウは獣人達の争いを無くして、皆に笑顔をくれた。そしてわたくしの力はリリーシュアを抜いた。
これからこの世界は獣人が満ちるわ。人は減るでしょう、リリーシュアの力が小さくなったから」
皆、あなたの心配をしているのね。アリルレオンは笑う。
「ありがとう史郎。私の愛し子、私の神子。私の子供達を導く者。これからも子供達を可愛がって欲しいのだけれども、駄目かしら?」
「嫌だって言ったらどうするんだ?」
「許すわ。私の愛しい子。もう好きに生きて良いくらいあなたは良くやってくれたもの。好きな物と好きな人に囲まれて暮らして良いの……でも、魔王は止められない。あんな馬鹿なシステムをなぜリリーシュアがつけたのか。子供を苦しめる試練なんて」
アリルレオンは怒りをあらわにする。
「放っておけば魔王の力は増して行きます。だから目覚めると同時に倒してしまいたい。魔王は人間も獣人も獣も分け隔てなく殺して行くでしょうから」
「そんな魔王なんて、俺にはどうしようもないだろう?」
「あなたの力はまだ目覚めていないだけよ。卵の中で寝ているの」
「……俺、何か出来るのか?」
「何でも出来るわよ、私の愛しい子。あなたはとても強いの。レジールもレンテドールもあなたが守ってあげるのよ」
「え?!俺が!?レジール様を?!」
「ええ、そうよ。だってあなたが神子だもの」
アリルレオンはやっと本当の史郎と話ができると喜んだ。
マリル、良く頑張りました。これからも人を、獣を導いてください。私の心を携える者、聖女として。
「ありがとうございます!アリルレオン様!シロウ様にご加護を!」
マリルと呼ばれた羊の少女がどんどん見えなくなり、真っ白な空間にシロウは立っていた。
「シロウ、史郎。会うのは初めてですね。わたくしは獣と獣人の女神アリルレオンです」
「……」
「謝罪は……後にします。まず、あなたを呼んだリリーシュアは主神から落ち、わたくしが今この世界の主神となりました。あなたの、神の神子たる貴方の扱いの酷さ故に。勇者は何人も用意できるけれど、勇者を選定する神子は一人しか選べないのに」
シロウは何も答えなかった。シロウの心の中をある程度理解しつつ、アリルレオンは話を続けた。
シロウが本気で拒否すれば、アリルレオンとの繋がりも切れてしまうから。
「史郎。貴方はリリーシュアの神鳥の神子からわたくしの獅子の神子になります。胸を見せて、お願い。そのままでは卵が腐って悪魔を産むわ」
そっとアリルレオンは手を伸ばし、シロウの胸の中央にある黒い染みを見る。
「ギリギリね……。あなたの為に詰め込まれたスキル達がここにいたの。神殿で孵化させるつもりだったのよ。……どうして割ってあげなかったのかしら」
アリルレオンが触れると黒いモヤはとれ、丸い卵がそこにある。
「……シロウ、魔王は甦るわ。勇者を選定するの。魔王を倒して、澱みを祓って。それがわたくしからの願いの全てよ」
「なんで……助けてくれなかったの……?」
「ごめんなさい。あの時、わたくしには力がなかった。争う獣人達を止められず、人間も止められず。愛しい子供達が虐げられるのを見ているしか出来なかった」
アリルレオンがふわりと手を振ると、心配そうに見つめる獣人達が見えた。
「シロウが、わたくしに力をくれた。あなたの愛が全てわたくしの力になったの。シロウは獣人達の争いを無くして、皆に笑顔をくれた。そしてわたくしの力はリリーシュアを抜いた。
これからこの世界は獣人が満ちるわ。人は減るでしょう、リリーシュアの力が小さくなったから」
皆、あなたの心配をしているのね。アリルレオンは笑う。
「ありがとう史郎。私の愛し子、私の神子。私の子供達を導く者。これからも子供達を可愛がって欲しいのだけれども、駄目かしら?」
「嫌だって言ったらどうするんだ?」
「許すわ。私の愛しい子。もう好きに生きて良いくらいあなたは良くやってくれたもの。好きな物と好きな人に囲まれて暮らして良いの……でも、魔王は止められない。あんな馬鹿なシステムをなぜリリーシュアがつけたのか。子供を苦しめる試練なんて」
アリルレオンは怒りをあらわにする。
「放っておけば魔王の力は増して行きます。だから目覚めると同時に倒してしまいたい。魔王は人間も獣人も獣も分け隔てなく殺して行くでしょうから」
「そんな魔王なんて、俺にはどうしようもないだろう?」
「あなたの力はまだ目覚めていないだけよ。卵の中で寝ているの」
「……俺、何か出来るのか?」
「何でも出来るわよ、私の愛しい子。あなたはとても強いの。レジールもレンテドールもあなたが守ってあげるのよ」
「え?!俺が!?レジール様を?!」
「ええ、そうよ。だってあなたが神子だもの」
アリルレオンはやっと本当の史郎と話ができると喜んだ。
23
お気に入りに追加
514
あなたにおすすめの小説
フォークでよかった
きすけ
BL
ケーキバースが出現し始めた世界でフォークとケーキだったパートナーの二人。
自分の正体がどんな怪物だろうと、心から愛するケーキを食欲なんかで手にかけるはずがない、そう強く確信していたフォークの話。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
みにくい凶王は帝王の鳥籠【ハレム】で溺愛される
志麻友紀
BL
帝国の美しい銀獅子と呼ばれる若き帝王×呪いにより醜く生まれた不死の凶王。
帝国の属国であったウラキュアの凶王ラドゥが叛逆の罪によって、帝国に囚われた。帝都を引き回され、その包帯で顔をおおわれた醜い姿に人々は血濡れの不死の凶王と顔をしかめるのだった。
だが、宮殿の奥の地下牢に幽閉されるはずだった身は、帝国に伝わる呪われたドマの鏡によって、なぜか美姫と見まごうばかりの美しい姿にされ、そのうえハレムにて若き帝王アジーズの唯一の寵愛を受けることになる。
なぜアジーズがこんなことをするのかわからず混乱するラドゥだったが、ときおり見る過去の夢に忘れているなにかがあることに気づく。
そして陰謀うずくまくハレムでは前母后サフィエの魔の手がラドゥへと迫り……。
かな~り殺伐としてますが、主人公達は幸せになりますのでご安心ください。絶対ハッピーエンドです。
無能扱いの聖職者は聖女代理に選ばれました
芳一
BL
無能扱いを受けていた聖職者が、聖女代理として瘴気に塗れた地に赴き諦めたものを色々と取り戻していく話。(あらすじ修正あり)***4話に描写のミスがあったので修正させて頂きました(10月11日)
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる