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95 熱くて汗が出るよ

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 ひゅーひゅーと喉が鳴る。隣には俺。手を握りしめる。その隣には子供達を差し置いてフラン。長年のライバルに別れを言いたいらしい。それから、だいぶお爺ちゃんのデリウス様。

「親より先に逝くなんて……」

 涙でぐちゃぐちゃだ。そして子供達、孫も何人かいるんだぜ。
 無言でおじさんになったアライグマ先生と、こき使われまくったハリーは泣いている。

「りー、や」

「おう」

「つぎも、おれとけっこん、して?」

「考えとく」

 そして、クソ小生意気な顔で笑った。

「フラン、ざまー、みろ」

「最後に勝つのは私ですし?」

「そう、だな」


 でも、つぎも、まけねー……

 おいおい、俺はあるかもしれん来世でまたお前らと会うのか?待て待て、次は俺は女性と結婚して子供を産んでもらう予定なんだけど?俺の予定にお前らの出番はないっつーの。

「仕方のねーおっさんどもだな」

 ああ、またな

「わかったよ、またな」

 叶うかどうか分からない約束をしちまった。あーあやだなー。なんか女神に昇格した母さんが笑いながら「母さんにまっかせなさーい!」って嬉しそうで凄く嫌だなーー!

 俺の嫌そうな顰めっ面を確認して、レントは満足そうに笑い、そして握っていた手がするりと抜けた。

「ばっかじゃねー……の」

 レントが死んだ。まだ王様の椅子に座っていたから国葬になった。国民は大半悲しんでくれたし、送る色はやっぱり黒で、大体黒い服を着てくれた。

「レン兄ちゃま!」

 馬をかっ飛ばしてリュンが帝国から飛んで来た。あのチビが立派になったもんだ。

「リーヤ……」

「ごめんなぁ、リュン。早く連絡すれば良かったのに」

「良いよ、レン兄ちゃまはリーヤの事が大好きだったから。リーヤが側に居てくれるだけで。ありがとう、リーヤ」

 俺は何で感謝されるんだ?普通だろう?

「てぇかちょっとフラン様、ツラァ貸して!」

「わわっ!リュン?!」

 俺の横に居たフランを引きずって行ってしまった。しばらく見ないうちにリュンは迫力がある美人になった。レントと似てるし。
 顔立ちが優しいフランとはお似合いだと思うけど、フランは帝国皇帝の伴侶になったら良いのに。きっと帝国はますます繁栄すると思う。

「リーヤ様、お休みになられても」

「お子様方もおられますし」

「大丈夫、問題ないよ」

 皆、気を遣ってくれる。別にどってことないのにな。レントがそこまで長生き出来ない事は薄々気づいていた。良く今まで持ったと言う所だろう。

「リーヤ様」

「アライグマ先生?!目が真っ赤だぞ!」

 アライグマの垂れ目が泣き腫らして真っ赤になっている。

「は、はは……フローラ様の時みたいに笑って送って差しあげられなくてごめんなさい……でも、リーヤ様も真っ赤ですよ」

「そんな事ないぞ」

 レントが俺より先に死ぬ事なんて、分かりきっていたからな。予想した事が予想通りになっただけだぞ。それなのに何で泣く必要があるんだ?

「リーヤさま……」

 アライグマ先生がまた新しい涙をポロポロ落としている。おうおう、お目目が溶けてなくなっちまうぞ!おめーの旦那はどうした?後ろにいたか。
 ハリーに肩を抱かれ、泣きながら帰って行った。

「レントのばーか」

 なんだ、ここは暑いな。汗がぽたぽた落ちてくるぜ。全くどうなってるんだか。

 その水は俺の服に吸い取られて、消えて行く。次々に、次々に消えて行く。


 

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