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50 やっぱり宴はしておかなければ

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「痛くない……痛くないよぉ!」

「俺の、足が……ううっ……」

「けっ!」

 王様は予想通りの事を言う訳。子供達をって。そんで子供達は言う訳。

「僕らを庇って怪我をした騎士達を」

 ってよ!そんで騎士まで言うんだよ。

「私達より兵士たちを」

 クソがーーーー!俺は治して治して治しまくって毎日ヘロヘロだ。そんでやーっとチビどもの番が来た訳。
 なんとレントの兄弟はレントを入れて7人。10人兄弟だったって……2人は遺体も見つからねぇってよ……。1人は俺が着く前に死んじまっていた。

「2人づつな!今日はもう無理!」

「リーヤちゃん……無理しないで?」

「ありがとう、リーヤ兄。妹と弟を治してくれて。皆を治してくれて」

「おー……」

 今日も疲れた。でももう一仕事。

「リーヤ、今日こそヤろうぜ」

「しねーし」

「そう言うなよ?なぁ、良くしてやるから」

「しねーし!」

 毎日のレントの猛攻だ。疲れてるから早く寝かせろ!と言うかなんで俺の部屋がレントの部屋と一緒なんだ!
 知ってる。全方向から結婚しろビームが飛んで来てることくらい。はっきり言う四面楚歌も良い所だ。味方なんてネズミ1匹いやしない。

「なあ」

「やめろ!俺は寝るんだから!」

 するりと後ろに回り込んで抱き込めてくる手とか、払っても払ってもパタパタ纏わりついてくる尻尾とか!

「少しくらい良いだろ?」

「少しってなんだよ!……っんんっ!やめっ」

「味見」

「んーーっ!」

 ベロリと首筋を舐められてゾクゾク震える。

「なあ、良いだろ?」

「やだぁ……っ」

 治す奴はどんどん減って来ている。多分最後に治すことになるのは王様の足だろう。王様の足を治した瞬間、ぶち込まれる気がする。なんとか、何とかしなくちゃ……。


 俺はしっかり王様の足も治してやった。長さは気持ち短くしたかもしれん。ふんだ!

「ありがとう……感謝の言葉をいくつ重ねても足りはしない」

「……まあ、なんつーか……足はあった方が良いし、怪我は無い方が良い、から」

 俺は……そう思ってる。

「じゃあ、俺……帰る」

「えーーー!リーヤ兄ちゃまどっか行くのーーー!?」

 チビどもがわぁっと群がって来た。クソ面倒くせえ!

「俺んちここじゃねーから!帰るんだよ!」

「やだー!ずっといてよー!」「レン兄のお嫁さんになってずっといてよー!」「私たちのお姉様になってください!」

「お姉様にはなんないからね?!?!」

 まとわりつくチビどもを千切っては投げ千切っては投げしても、無限の体力の子供には勝てない!くそっ!

「せめて、感謝の宴だけでも……」

 おい!レント!約束守れ、そう文句を言おうと振り返ると

「宴にゃ獣人秘蔵の火酒が振る舞われる。リーヤみたいなお子ちゃまじゃ飲めねー奴な?」

「な!なにおう?!」

 俺を舐めてんのか!クソライオンが!

「ま、まあ。旅立たれるにしても、早朝出発がよろしいでしょう?今はもう昼も近い。今夜は是非、宴を楽しまれては?」

「おう!やってやらぁ!!」

「きゃーーーーっ!やってやらぁ!」

 チビどもが真似しているが、お前らはまだ酒なんか飲んだら駄目だぞ!俺は立派な大人だから良いけどな!へっ!

 俺は人間で、耳は普通だ。そして獣人は耳が良いんだと。その獣人がヒソヒソと話をしていれば、大体俺には聞こえない。

「アジェントの酒を用意しろ。それと見届け人だ」

「畏まりました、レント王子」

「気取られるなよ」


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