42 / 113
42 脳筋は飛べるように出来てはいない
しおりを挟む
「……」
わぁ、俺、空飛んでるー。前世では学校の旅行で飛行機に乗った事があるけど、この世界で初めてー。わーすごーい……。
楽しくも何とも無いけどな!ついでに言えば頭から麻袋を被せられた、伝統的な人攫いスタイルで外は何も見えないし!
その割にスースーしまくって寒いし!ついでに言えば多分、鳥の獣人の小脇に抱えられてんだよ!
後、二日酔いでまだ気持ち悪りぃんだよ!クソが!クソ野郎がーーー!元フローラ傭兵団の脳筋共は空を飛べるようにできてねーんだよ!追っかけてこれるわけねーだろ!バーカバーカ!
と、言うわけで、俺、攫われちゃった。ごめん皆、助けてくれー。
吐き気を我慢しながら、お勤め用の見せ物パンダ馬車に乗り、手を振りながら街の中にある治療院へ、一週間ぶりに出勤した俺。
「エリスリーヤ様!酷い風邪をお召しになっていたとか……おいたわしや」
「も、もう、大丈夫……ですから」
いや、酔っ払って寝てただけとは口が裂けても言わない。護衛でついて来た脳筋が笑いを堪えるのに苦労している。ふっざけんなよ!
「あ、あの少し冷たいお水が飲みたいのですが……」
「持って来ましょう……ぷっ、やっぱり呑んだ次の日は水ッスよね」
「ほほほほほ!」
何かぶつけてやりたかったが、手元に何も無かった。くそっ!
そうして護衛が扉を閉めた瞬間だった。窓がガラリと音を立てて開いた。窓の近くには誰も居ない。そしてここは2階なんだよな。
「え?」
「御身、失礼します!」
「ひゃ」
頭から麻袋を被せられるとそのまま拉致られた訳。その間、僅か3分。もーどうしろってのよ。いやーこんな方法で来られるとはさしもの俺も対処出来ねーぞ。
うん、これは俺じゃなくても無理なやつね、うんうん。わかる?わかってくれるかなーー?絶対に俺が悪くない奴ね!!
どこをどう飛んだのか知らないし、結構飛んでいたとは思うけど、そのうち地上に降ろされた。
大人しく麻袋を外してくれるのを待っていると、どうも数人に取り囲まれているようだ。
するりと外されると、うん、ある程度予想通り。強そうな肉食獣人の輪の真ん中にいたわ、俺。どうしようちょっと怖いなー。
「お前が聖女エリスリーヤ姫か?」
「違います」
ここいらで眼鏡の眼鏡が光るんだよな。
「嘘をつくな!」
「本当です。だって俺、男ですもん」
「そんなはずは!確かにエリスリーヤ姫と呼ばれて居たぞ!」
「まさか偽物?!替え玉か!」
うんうん、そうそう。そう言う事でーす。やっぱ眼鏡強い、眼鏡凄い!帰ったらボーナス出してもらえるように頼んで上げなくちゃな!
「何と言う事!これでは親父の怪我は……お袋の命は……?リッテも、ガーヴェも死んでしまう!」
はあ?何か大変な事が起こってるんだね。俺も大変な事が起こったよ、おあいこかな?ねーよ!クソが!
「おい!お前!お前は手足を治せんのか!」
「治せる訳ないでしょー。俺はただの替え玉だもん」
「くそっ!くそっ!!くそーーーー!」
ライオンの獣人のお兄さんが地面に四つん這いになって拳で殴りつけている。なんか……ちょっと可哀想なくらい泣いちゃってる……。やばいやばい!同情しちゃいそうだった!俺は帰らなくちゃ。母さんが発狂してしまう!きっと母さんが発狂したら、父さんも発狂して、あの帝国が壊れちゃうかもしれないからね。
そんなことを考えていたら何やら寒気がして、
ぐおおおおぉぉーーー!
結構近くから獰猛な叫び声が聞こえて来た。ひゃっ?!これなんかの魔物かぁ?!
「まずいです!王子!ヒュージサーベルタイガーの臭いが!」
「まずい!来ます!」
「くそっ!抜刀!」
それと同時に近くの茂みから巨大な物が飛び出して、空を覆った大きな大きな、体長は5メートルもあろうかと言う巨大な牙を生やした虎だった。
え?こんなのこの世界にいたの?俺ってば貧民街生まれ貧民街育ちだから外の事なんも知らなかったよ。こわ!
わぁ、俺、空飛んでるー。前世では学校の旅行で飛行機に乗った事があるけど、この世界で初めてー。わーすごーい……。
楽しくも何とも無いけどな!ついでに言えば頭から麻袋を被せられた、伝統的な人攫いスタイルで外は何も見えないし!
その割にスースーしまくって寒いし!ついでに言えば多分、鳥の獣人の小脇に抱えられてんだよ!
後、二日酔いでまだ気持ち悪りぃんだよ!クソが!クソ野郎がーーー!元フローラ傭兵団の脳筋共は空を飛べるようにできてねーんだよ!追っかけてこれるわけねーだろ!バーカバーカ!
と、言うわけで、俺、攫われちゃった。ごめん皆、助けてくれー。
吐き気を我慢しながら、お勤め用の見せ物パンダ馬車に乗り、手を振りながら街の中にある治療院へ、一週間ぶりに出勤した俺。
「エリスリーヤ様!酷い風邪をお召しになっていたとか……おいたわしや」
「も、もう、大丈夫……ですから」
いや、酔っ払って寝てただけとは口が裂けても言わない。護衛でついて来た脳筋が笑いを堪えるのに苦労している。ふっざけんなよ!
「あ、あの少し冷たいお水が飲みたいのですが……」
「持って来ましょう……ぷっ、やっぱり呑んだ次の日は水ッスよね」
「ほほほほほ!」
何かぶつけてやりたかったが、手元に何も無かった。くそっ!
そうして護衛が扉を閉めた瞬間だった。窓がガラリと音を立てて開いた。窓の近くには誰も居ない。そしてここは2階なんだよな。
「え?」
「御身、失礼します!」
「ひゃ」
頭から麻袋を被せられるとそのまま拉致られた訳。その間、僅か3分。もーどうしろってのよ。いやーこんな方法で来られるとはさしもの俺も対処出来ねーぞ。
うん、これは俺じゃなくても無理なやつね、うんうん。わかる?わかってくれるかなーー?絶対に俺が悪くない奴ね!!
どこをどう飛んだのか知らないし、結構飛んでいたとは思うけど、そのうち地上に降ろされた。
大人しく麻袋を外してくれるのを待っていると、どうも数人に取り囲まれているようだ。
するりと外されると、うん、ある程度予想通り。強そうな肉食獣人の輪の真ん中にいたわ、俺。どうしようちょっと怖いなー。
「お前が聖女エリスリーヤ姫か?」
「違います」
ここいらで眼鏡の眼鏡が光るんだよな。
「嘘をつくな!」
「本当です。だって俺、男ですもん」
「そんなはずは!確かにエリスリーヤ姫と呼ばれて居たぞ!」
「まさか偽物?!替え玉か!」
うんうん、そうそう。そう言う事でーす。やっぱ眼鏡強い、眼鏡凄い!帰ったらボーナス出してもらえるように頼んで上げなくちゃな!
「何と言う事!これでは親父の怪我は……お袋の命は……?リッテも、ガーヴェも死んでしまう!」
はあ?何か大変な事が起こってるんだね。俺も大変な事が起こったよ、おあいこかな?ねーよ!クソが!
「おい!お前!お前は手足を治せんのか!」
「治せる訳ないでしょー。俺はただの替え玉だもん」
「くそっ!くそっ!!くそーーーー!」
ライオンの獣人のお兄さんが地面に四つん這いになって拳で殴りつけている。なんか……ちょっと可哀想なくらい泣いちゃってる……。やばいやばい!同情しちゃいそうだった!俺は帰らなくちゃ。母さんが発狂してしまう!きっと母さんが発狂したら、父さんも発狂して、あの帝国が壊れちゃうかもしれないからね。
そんなことを考えていたら何やら寒気がして、
ぐおおおおぉぉーーー!
結構近くから獰猛な叫び声が聞こえて来た。ひゃっ?!これなんかの魔物かぁ?!
「まずいです!王子!ヒュージサーベルタイガーの臭いが!」
「まずい!来ます!」
「くそっ!抜刀!」
それと同時に近くの茂みから巨大な物が飛び出して、空を覆った大きな大きな、体長は5メートルもあろうかと言う巨大な牙を生やした虎だった。
え?こんなのこの世界にいたの?俺ってば貧民街生まれ貧民街育ちだから外の事なんも知らなかったよ。こわ!
43
お気に入りに追加
3,396
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました。
おまけのお話を更新したりします。
やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜
ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。
短編用に登場人物紹介を追加します。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
あらすじ
前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。
20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。
そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。
普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。
そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか??
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。
前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。
文章能力が低いので読みにくかったらすみません。
※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました!
本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
BLが蔓延る異世界に転生したので大人しく僕もボーイズラブを楽しみます~愛されチートボーイは冒険者に溺愛される~
はるはう
BL
『童貞のまま死ぬかも』
気が付くと異世界へと転生してしまった大学生、奏人(かなと)。
目を開けるとそこは、男だらけのBL世界だった。
巨根の友人から夜這い未遂の年上医師まで、僕は今日もみんなと元気にS〇Xでこの世の窮地を救います!
果たして奏人は、この世界でなりたかったヒーローになれるのか?
※エロありの話には★マークがついています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる