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41 罪は還る

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 俺はきっちり一週間、飲んで歌って明け方気がつくとパンツ一枚で寝ていて、ついでにパンツにお金がねじ込まれていると言う皇帝の子供にしては不適切な日々を過ごした。

「お小遣いが……増えたけど、ストリップショウでもやったのか……?」

 ただし、穴は無事だったので誰かと致した訳では無さそうだ。記憶がない、酒って怖いね。

「うう~」

「あらあら!肌も髪もボロボロですよ。まあ年頃の男子ならハメを外す事もありますかしらねぇ?」

「うー気持ち悪い~」

 俺は手入れをされながら、唸るしかなかった。

「二日酔いですわね。少しやりすぎましたわね、リーヤ様」

「うー……」

 あー侍女ちゃん達の優しさが身に沁みます~~。今日からはまた皇帝の娘、聖女エリスリーヤ姫として頑張ろう!

「頑張るぞーおー……うぇ」

「程々に」

 苦笑いされちゃったよ、うん、ほどほどにしまーす。

 そして俺の休暇中にデズモンド一味の処遇が決まったらしい。

「我が国の炭鉱の中に、一度入ったら二度と出られない窟がありまして」

 大きな坑道からもっと深く良質な物が掘り出されるが、そこから地上に出るには厳重に警備された魔導エレベーターしかないと言う。入る者は大罪を犯した死刑囚か遺書を書いてから潜るよっぽど立ち行かなくなった者だけだ。

「デズモンド以外、男も女も全員そこに放り込まれました。一生、陽の目を見る事はないでしょう」

「そうなんだ。デズモンド以外って事はデズモンドは?」

 眼鏡や脳筋達の話を俺は聞いていたが、肝心の奴はどうなった?

「見張り付きで市中を自由に移動していました」

「は?!良いの??」

 自由ってそれで良いの???

「皆の決が決まるまで、あの罪人は狭い牢に閉じ込めておりました。狭すぎたのでしょう、背は老婆より折れ曲がり、足は萎え変形しておりました。引きずって歩くのがやっとです」

 そんな腰の曲がりきった汚いなりの男が街の中をウロウロしてたって?街は大騒ぎじゃないか??
 この件を一任されているアルベルトの眼鏡が掻い摘んで話してくれる。こんな感じだった。



「あれが皇帝を裏切ったデズモンドって言う奴だって」

「ああ!あの「切断公爵」?」

「その公爵ってのも自分で偽造したんだってよ」

「関わるな、目を合わせるな。災厄が降り掛かるぞ」

 街の人達は全員遠巻きに見る。

「たぁすけてぇ……くれぇ……だぁれかぁ……」

 デズモンドの口から声は出るが、皆耳を塞ぐ。

「ねぇあのおじいちゃん、助けてって言ってるよ?」

 子供の純粋な問いに母親は

「あの人はね、助けてくれって何百人にも言われたのに、一人も助けなかったの。それなのに今になって助けてくれって言っても、ダメだって思わない?」

「えっ!一人も?一人も助けなかったの??」

「そうよ、助ける所か虐めて酷い事したの」

「うわぁーーん!怖い!怖いよーお母さん~!」

「そうね、早く行きましょう?」

「ううっ……」

 助けてくれと徘徊するデズモンド。言う事を聞かない子供達の脅し文句の定番は「デズモンドが来て、地獄に引っ張って行くよ」になったとか。

 いく先々で罵声を浴び、扉は閉まる。遠巻きに人はデズモンドを蔑み、見る。

「あれが公爵の末路か」「人の生き血を啜って来たんだ。当然だ」「ざまぁみろ」「早く死なねーかな」

 デズモンドに手足を切られた者達も、彷徨い回るデズモンドを冷たく見下ろす。

「許す事など到底出来ません。手足が戻ったとはいえ、あの時の絶望、痛み、屈辱、全て忘れる事などできません」

「もう二度とあのような蛮行を犯す者が出ぬよう、あの姿を皆に覚えていて貰いたい」

「罪は還るのですから」

 泥水を啜り、草の根を食べ。デズモンドは10日ほど、街を彷徨ったが大きな噴水のある広場で力尽き、死んで行った。

 遺骸はしばらく放置され、人々は己の行いを省みる。自らの罪は自らに罰を与えると。
 その後バラバラにされ、名のある教会や神殿に納めされたらしい。「切断公爵」は最後は自分のせいで自分自身を切り刻まれてしまった訳だ。

「デズモンドの悪行は後世まで伝えられるでしょう。そのうち、伝承は書き変わり、悪魔を産むかもしれません。その為に、デズモンドは復活出来ぬように処分する事が望ましい」

「そうなんだ」

 こうしてデズモンド一味はこの世の光の部分から消えて闇に埋もれた。抉った傷は大き過ぎたが、時が癒してくれる事を俺は願った。



 ーーーーー ーーーーー ーーーーー

「ねーねー詩人さん!あの歌、歌ってー?」

「良いですよ。悪魔に操られた皇帝と、それを愛で助けた女神エルフローラとその娘、聖女エリスリーヤの歌ですよね?」

「それそれー!私だーいすき!美しい金髪のお姫様エリスリーヤ姫が50人の騎士を従えて、悪魔デズモンドをやっつけるの!」

「ふふ、このサーガを嫌いな人は誰もいませんよ?では始めましょう。昔昔、おじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんがまだ子供だった頃、本当にあったお話です~」

「わーい!」
 

ーーーー ーーーーー ーーーーー



「ぶえっくしょーーーい!なんかものすごーーく嫌な噂を500年以上言われ続ける寒気がしたわ」

「意味わからんぞ、リーヤ様。おら、働け働け」

「うぇーい……」

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