2 / 41
2 油揚げの信者になった
しおりを挟む
「すいません、本当に……」
油揚げは中央辺りを小さく上下して喋った。かなりホラーでシュールだ。口が無いのに言葉が聞こえるんだ!
「えっと……油揚げ……だよね」
「あ、はい……でももうすぐ消えますから……鞄は弁償出来なさそうです申し訳ない……」
そうだ、鞄!べったり油揚げの形に油が染み付いている。酷い……!涙が出そうだが、この油揚げ気になる事を言っている。
「ねえ、油揚げ。さっきから消えるって言ってるよね?」
「ああ、私、こう見えても神様だったんです。でも信じる人も1人も居なくなって、もう存在を保てなくなっているんです。すいません」
よくみると油揚げは縮んできているし、黒いカビみたいなものが大きくなってきている、消えるのは本当のようだ。
「そうなんだ。ねえ、油揚げ。油揚げってどんな神様だったんだい?」
「ふふ、内緒です。最後に話ができて良かった。祟り神になりそうだったんです」
もう小揚くらいになった油揚げは笑ったようだった。なんだろう、このままこの油揚げをこの世から消すのはいけない気がした。どうしたら、どうしたらこの油揚げを消さずに済むかな?
「油揚げの神様かーーやっぱり稲荷?」
「わっ!」
ぽぅん、と音がして、小揚は中身が入った。
「……油揚げがお稲荷さんになった!」
「中に寿司飯が入ってる感じがします!」
お稲荷さんは嬉しかったのか、バランスを崩しただけか知らないけれど、ころん、と横になった。
「駄目だ!まだ油がつくよ、油揚げ!」
「ごめんなさい……」
多分、私が油揚げの信者になったんだ。こうして私は元油揚げ、今いなり寿司と同居する事になった。
「良し、せっかくいなり寿司になったから、SNSにアップしようー」
私はお皿を持ってきて、箸でいなり寿司を摘んだ。
「くふ!くふふ、くすぐったい!」
「ほい、笑ういなり寿司、っと」
カシャー。スマホから無機質なシャッター音がして、あまり美味しくなさそうないなり寿司の写真が撮れた。
「ほら、ツイッツーにアップしたぞ!」
「あ、本当だ。私は今、こんな姿なんですねー」
目も口も耳もないが、いなり寿司はツイッツーの画面が見えるようだ。
「あ!赤いハートがつきましたよ!」
「イイっすされたか!あはは!誰か食べたかったのかなー?」
なんだか、元油揚げが美味しそうに見えてきた。
「なあ、なんだかさっきより美味そうにみえる!」
「ふふ!イイっすされたからでしょうか!」
いなり寿司もなんだか楽しそうだ。良く見ると黒カビも無くなっていたし、テリも出て来てジューシーに見えてくる。おお!良いぞ、良いぞ。
「ねえ、油揚げ。私の名前は宮崎カナ。私は油揚げを何て呼べばいい?」
油揚げは首……はないけれど、あったなら傾げていただろう。少し考えてから
「油揚げで良いですよ」
そう答えた。適当過ぎない??まあ良いか。
「油揚げが神様に戻ったら、鞄の油染みをなんとかしてよ!」
「なんとか出来ると良いのですが、もし力が戻ったら出来る限りの事はしたいと思います!」
期待せずに私は笑った。誰かと仕事以外でこんなに喋ったのは久しぶりだった。
油揚げは中央辺りを小さく上下して喋った。かなりホラーでシュールだ。口が無いのに言葉が聞こえるんだ!
「えっと……油揚げ……だよね」
「あ、はい……でももうすぐ消えますから……鞄は弁償出来なさそうです申し訳ない……」
そうだ、鞄!べったり油揚げの形に油が染み付いている。酷い……!涙が出そうだが、この油揚げ気になる事を言っている。
「ねえ、油揚げ。さっきから消えるって言ってるよね?」
「ああ、私、こう見えても神様だったんです。でも信じる人も1人も居なくなって、もう存在を保てなくなっているんです。すいません」
よくみると油揚げは縮んできているし、黒いカビみたいなものが大きくなってきている、消えるのは本当のようだ。
「そうなんだ。ねえ、油揚げ。油揚げってどんな神様だったんだい?」
「ふふ、内緒です。最後に話ができて良かった。祟り神になりそうだったんです」
もう小揚くらいになった油揚げは笑ったようだった。なんだろう、このままこの油揚げをこの世から消すのはいけない気がした。どうしたら、どうしたらこの油揚げを消さずに済むかな?
「油揚げの神様かーーやっぱり稲荷?」
「わっ!」
ぽぅん、と音がして、小揚は中身が入った。
「……油揚げがお稲荷さんになった!」
「中に寿司飯が入ってる感じがします!」
お稲荷さんは嬉しかったのか、バランスを崩しただけか知らないけれど、ころん、と横になった。
「駄目だ!まだ油がつくよ、油揚げ!」
「ごめんなさい……」
多分、私が油揚げの信者になったんだ。こうして私は元油揚げ、今いなり寿司と同居する事になった。
「良し、せっかくいなり寿司になったから、SNSにアップしようー」
私はお皿を持ってきて、箸でいなり寿司を摘んだ。
「くふ!くふふ、くすぐったい!」
「ほい、笑ういなり寿司、っと」
カシャー。スマホから無機質なシャッター音がして、あまり美味しくなさそうないなり寿司の写真が撮れた。
「ほら、ツイッツーにアップしたぞ!」
「あ、本当だ。私は今、こんな姿なんですねー」
目も口も耳もないが、いなり寿司はツイッツーの画面が見えるようだ。
「あ!赤いハートがつきましたよ!」
「イイっすされたか!あはは!誰か食べたかったのかなー?」
なんだか、元油揚げが美味しそうに見えてきた。
「なあ、なんだかさっきより美味そうにみえる!」
「ふふ!イイっすされたからでしょうか!」
いなり寿司もなんだか楽しそうだ。良く見ると黒カビも無くなっていたし、テリも出て来てジューシーに見えてくる。おお!良いぞ、良いぞ。
「ねえ、油揚げ。私の名前は宮崎カナ。私は油揚げを何て呼べばいい?」
油揚げは首……はないけれど、あったなら傾げていただろう。少し考えてから
「油揚げで良いですよ」
そう答えた。適当過ぎない??まあ良いか。
「油揚げが神様に戻ったら、鞄の油染みをなんとかしてよ!」
「なんとか出来ると良いのですが、もし力が戻ったら出来る限りの事はしたいと思います!」
期待せずに私は笑った。誰かと仕事以外でこんなに喋ったのは久しぶりだった。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
隠り世あやかし結婚事情~私の夫は魅惑のたぬたぬ~
瀬戸呼春
キャラ文芸
旧題:私の夫は魅惑のたぬたぬ~異種族夫婦のあやかし新婚ライフ~
千登世(ちとせ)には秘密がある。あと、とっておきの癒しが。
ひょんなことから半年前に結婚した永之丞(えいのじょう)の正体は、なんとたぬきのあやかし!
隠り世という独自の世界を持ちながらも、あやかし達は人間界のあちこちに紛れていると言う。
夫の正体は周りには秘密だが、優しくてもっふもふのしっぽ付きの彼と千登世の新婚生活は順風満帆だった。
けれどある日、千登世は会社の後輩に指摘されてしまう。
「だって、先輩からたぬきの匂いがぷんぷんするんですもん!」
いきなりの身バレ!?千登世と永之丞の平穏な生活は守られるのか――――?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~
硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚
多くの人々があやかしの血を引く現代。
猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。
けれどある日、雅に縁談が舞い込む。
お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。
絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが……
「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」
妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。
しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。
ようこそアヤカシ相談所へ
松田 詩依
キャラ文芸
とある町の路地裏にある、廃墟同然のビル。
地元では最恐の心霊スポットとして恐れられているその中に「相談所」があるという都市伝説のような噂があった。
その相談所に訪れる客は決して人間だけではなく――怪しい、妖しい、アヤカシ相談所へようこそ。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
このたび、小さな龍神様のお世話係になりました
一花みえる
キャラ文芸
旧題:泣き虫龍神様
片田舎の古本屋、室生書房には一人の青年と、不思議な尻尾の生えた少年がいる。店主である室生涼太と、好奇心旺盛だが泣き虫な「おみ」の平和でちょっと変わった日常のお話。
☆
泣き虫で食いしん坊な「おみ」は、千年生きる龍神様。だけどまだまだ子供だから、びっくりするとすぐに泣いちゃうのです。
みぇみぇ泣いていると、空には雲が広がって、涙のように雨が降ってきます。
でも大丈夫、すぐにりょーたが来てくれますよ。
大好きなりょーたに抱っこされたら、あっという間に泣き止んで、空も綺麗に晴れていきました!
真っ白龍のぬいぐるみ「しらたき」や、たまに遊びに来る地域猫の「ちびすけ」、近所のおじさん「さかぐち」や、仕立て屋のお姉さん(?)「おださん」など、不思議で優しい人達と楽しい日々を過ごしています。
そんなのんびりほのぼのな日々を、あなたも覗いてみませんか?
☆
本作品はエブリスタにも公開しております。
☆第6回 キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました! 本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる