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いいえ、メイドです

27 腹立たしい事です

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「いくら凶暴な獣とて、檻の中に閉じ込めてあれば恐ろしくないではありませんか」

「それはそうですが」

「しかし、外に獣の臭いは漏れます。そういう事です」

 分かったような、分からないような。野の獣と魔王を一緒にして良いのかしら?わたくしは違う気がするのですが、レラがそう言うのです。
 恐ろしくないとレラは言いますが、もうヘイルズは地図の上から消えてしまいました。我が国へ使者を向けるかどうかで揉めている間に、王宮へ魔物達が侵入したそうです。

「罪なき者もいたでしょうが、国として判断を間違えたのです」

 ヘイルズは沢山の国民を巻き込んで滅亡しました。国の頂点に立つ者は時に慎重に、時に素早く動く必要があります。
 権力を持つ事の恐ろしさをまざまざと見せつけられた心地がします。

「……可哀想、と言わないのですか?」

「言って何か変わる事でもありません。それよりその後どうするかを考えなければならないのではないでしょうか」

 ヘイルズの物とはいえ、魔王の箱は近隣諸国にも被害を及ばしているらしいのです。

「救援要請は来ておりますが、はっきり言えばどれもシーランに旨味はないのです」

「……低く見られていると言う事ですね?腹立たしいです。こちらが頭を下げる必要などないですわ、ナイトレイ様。レミ、レラもよ」

「分かりました、お嬢様」

「かしこまりました、お嬢様」

 ナイトレイ様はどこかお優しくていけないわ、ここはわたくしが毅然とした態度を示さねば。
 わたくしとて、支える者。そしてシーランの一員なのです。自国民を大事に出来ずに何が貴族でしょうか。

「ナイトレイ様!シーランは最高の国ですわ!軽んじられて良い筈がありませぬ」

「アルカンジェル……そこまで言ってくれてありがとう……しかし」

「弱気はいけません。王たる者が頭を垂れるべきではありません」

「分かった、そうだね。私は少し貧乏が染み付いているようだ。やはり君に来て貰って良かった。誇り高き我が婚約者様、ありがとう」

「どういたしまして」

 わたくしは知らない。わたくしの一言でレミとレラが秘密裏に張っていた結界を解いた事、食用にとトム達が狩っていた魔物の量を減らした事。
 
「今日、海から来る魔物が増えてるンスけど!!?」

「つべこべ言わずに倒しまくれ!早く倒してアサリ達を見に行かないと、お仕置きが来るぞ!」

「ひええええ!」

 お兄様とヒューバード様がいつもの10倍魔物狩りを頑張っていた事など。

「何の問題もありませんわ、お嬢様」

「新しいお茶でもお持ちしますね、お嬢様」

 
「でも、魔王がシーランに入ったのならなんとかしなくてはいけませんね」

「大丈夫です。箱に入って手も足も出ないのですよ?」

 なるほど、言われてみればその通りです。ヘイルズには質の良い兵士がいなかったと言う事なのでしょうね。

 
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