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いいえ、メイドです
22 自業自得というもの
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「では、件の箱を引き上げ、ヘイルズの平原に捨てて参ります」
「ええ、レミ、レラお願いね、気をつけて」
「……」
ナイトレイは自国の海軍兵がムキムキマッチョに変わっていようが、船の舳先に人魚っぽいものが縛り付けられていようが、海竜っぽい物に鎖をかけて船を引かせているとか……。
「何も、何事もない!頼んだぞ!」
「お任せ下さい!お嬢様の為に頑張りますわ~!」
そうだ、いずれシーランの王妃となるアルカンジェルの為で良いから頑張って欲しい!心から願った。
「さて、気合入れて行きますわよ」
「ええ」
シーランの領海内沖には海竜の顎門と呼ばれる大海溝がぱっくりと口を開けている。沈んだ船は二度と戻らないと言われている深海への入り口だが、ここに倒しきれなかった魔王を捨てた勇者が居たのだ、多分。
「流石の私達でも頑張らないといけませんわ。海軍の皆様は船の警備をお願いします」
「まず、鎖とロープを下ろして……潜ります」
「はっ!レラ様!レミ様!」
ジョルジュ以下海軍全員で敬礼をする。
「魔王の箱が上がって来たら多分魔物が押し寄せます。ジェームズ、お願いしますね」
「ええ、全て余さず食材にしてやりますよ」
「トムもボンドもお願いします」
「お任せください料理長レミ」
では、行きます。と、レミとレラが海にドボンと飛び込んだ。無論メイド服のままだ。
「お二人がかりでなさる事とは……やはり魔王がいると言う話は本当なのですね」
「お二人がかりでなくてはならないとは!ああ、魔王とはなんと恐ろしい存在なのだろうか」
「流石は世界を滅ぼす魔王……恐ろしいものですね」
残念な事にこの船には調教された者しか乗り合わせていなかった為、深海にメイド服で向かった2人に疑問を投げかける者はいなかったし、メイド二人と比べられる魔王とは?と首を傾げるものも無かった。
ただ、作戦を成功させて戻ってくる事しか考えていない者のみだったのである。
「引き上げます!封印の上に結界を張りました!」
「倒しても倒しても大型魔獣がやって来ます!」
「ヘイルズの奥地、草原地帯にぶん投げてしまいましょう!」
「そうしましょう!そうしましょう!」
ヘイルズ国は自業自得としか言えないのである。
「お嬢様ーー!」
「レミ!レラ!お帰りなさい!」
その日の夜遅く、船は帰って来た。船を引いていた海竜が行く時より2回りほど大きくなっているとか、舳先に括り付けられていた人魚がぐったりしているとか、聞きたい事は色々あったが、まずは皆の無事を確認した。
「どうでした?」
「やはりヘイルズの封印箱でした。見れば分かる物で、しかもご丁寧に箱の表面に勇者の筆跡がありました」
魔法で写して来たと言って寄越した紙にナイトレイは目を見張る。そこには300年ほど前のヘイルズの勇者の名前が刻まれていて、しっかりと海竜の顎門に投げ入れる事を許して欲しいと書かれていた。
「『顎門ほどの深海であれば魔王も出てこられぬと信じている、しかしもしシーランに迷惑をかける事があればヘイルズ国の全てをもって償う所存である』と当時の王の署名も刻まれていたんですね」
「はい」
「完璧です」
二人のメイドは頭を下げる。どうやって引き上げたかは、聞いても仕方のない事だと分かっている。
「今後、シーラン海域の魔物の数は激減する、間違いないですね?」
「呼び寄せていた魔王はヘイルズに返して来ましたから」
どうやって返したかも聞くのはやめた。国内の事でもいっぱいいっぱいなのに、協力もしていない他国など構っている余裕はない。
「アルカ、労って上げて下さい。ジョルジュ、海兵達もご苦労様でした。まだ忙しくなるでしょうが、今日は休息を」
「ありがとうございます!殿下!」
「……あと、後ろの何かよく分からない山はそちらで何とかしてくれるのですよね……?」
「お任せ下さい、ナイトレイ殿下。つきましては明日から若干肉祭りを開催さしますが、お目溢し頂ければ幸いです」
帰ってきた船の後ろに何か小山を曳航してきているのは気が付いていた。しかし、見ないふりも慣れた物なのだ。
「……素敵な祭りを期待しております」
ナイトレイは自室に戻る事にした。荒れた海が本当に元に戻るのか、シーランは昔の賑わいを取り戻せるのか。
レミとレラの仕事に一番期待していたのは自分なんだと思い返しながら。
「ええ、レミ、レラお願いね、気をつけて」
「……」
ナイトレイは自国の海軍兵がムキムキマッチョに変わっていようが、船の舳先に人魚っぽいものが縛り付けられていようが、海竜っぽい物に鎖をかけて船を引かせているとか……。
「何も、何事もない!頼んだぞ!」
「お任せ下さい!お嬢様の為に頑張りますわ~!」
そうだ、いずれシーランの王妃となるアルカンジェルの為で良いから頑張って欲しい!心から願った。
「さて、気合入れて行きますわよ」
「ええ」
シーランの領海内沖には海竜の顎門と呼ばれる大海溝がぱっくりと口を開けている。沈んだ船は二度と戻らないと言われている深海への入り口だが、ここに倒しきれなかった魔王を捨てた勇者が居たのだ、多分。
「流石の私達でも頑張らないといけませんわ。海軍の皆様は船の警備をお願いします」
「まず、鎖とロープを下ろして……潜ります」
「はっ!レラ様!レミ様!」
ジョルジュ以下海軍全員で敬礼をする。
「魔王の箱が上がって来たら多分魔物が押し寄せます。ジェームズ、お願いしますね」
「ええ、全て余さず食材にしてやりますよ」
「トムもボンドもお願いします」
「お任せください料理長レミ」
では、行きます。と、レミとレラが海にドボンと飛び込んだ。無論メイド服のままだ。
「お二人がかりでなさる事とは……やはり魔王がいると言う話は本当なのですね」
「お二人がかりでなくてはならないとは!ああ、魔王とはなんと恐ろしい存在なのだろうか」
「流石は世界を滅ぼす魔王……恐ろしいものですね」
残念な事にこの船には調教された者しか乗り合わせていなかった為、深海にメイド服で向かった2人に疑問を投げかける者はいなかったし、メイド二人と比べられる魔王とは?と首を傾げるものも無かった。
ただ、作戦を成功させて戻ってくる事しか考えていない者のみだったのである。
「引き上げます!封印の上に結界を張りました!」
「倒しても倒しても大型魔獣がやって来ます!」
「ヘイルズの奥地、草原地帯にぶん投げてしまいましょう!」
「そうしましょう!そうしましょう!」
ヘイルズ国は自業自得としか言えないのである。
「お嬢様ーー!」
「レミ!レラ!お帰りなさい!」
その日の夜遅く、船は帰って来た。船を引いていた海竜が行く時より2回りほど大きくなっているとか、舳先に括り付けられていた人魚がぐったりしているとか、聞きたい事は色々あったが、まずは皆の無事を確認した。
「どうでした?」
「やはりヘイルズの封印箱でした。見れば分かる物で、しかもご丁寧に箱の表面に勇者の筆跡がありました」
魔法で写して来たと言って寄越した紙にナイトレイは目を見張る。そこには300年ほど前のヘイルズの勇者の名前が刻まれていて、しっかりと海竜の顎門に投げ入れる事を許して欲しいと書かれていた。
「『顎門ほどの深海であれば魔王も出てこられぬと信じている、しかしもしシーランに迷惑をかける事があればヘイルズ国の全てをもって償う所存である』と当時の王の署名も刻まれていたんですね」
「はい」
「完璧です」
二人のメイドは頭を下げる。どうやって引き上げたかは、聞いても仕方のない事だと分かっている。
「今後、シーラン海域の魔物の数は激減する、間違いないですね?」
「呼び寄せていた魔王はヘイルズに返して来ましたから」
どうやって返したかも聞くのはやめた。国内の事でもいっぱいいっぱいなのに、協力もしていない他国など構っている余裕はない。
「アルカ、労って上げて下さい。ジョルジュ、海兵達もご苦労様でした。まだ忙しくなるでしょうが、今日は休息を」
「ありがとうございます!殿下!」
「……あと、後ろの何かよく分からない山はそちらで何とかしてくれるのですよね……?」
「お任せ下さい、ナイトレイ殿下。つきましては明日から若干肉祭りを開催さしますが、お目溢し頂ければ幸いです」
帰ってきた船の後ろに何か小山を曳航してきているのは気が付いていた。しかし、見ないふりも慣れた物なのだ。
「……素敵な祭りを期待しております」
ナイトレイは自室に戻る事にした。荒れた海が本当に元に戻るのか、シーランは昔の賑わいを取り戻せるのか。
レミとレラの仕事に一番期待していたのは自分なんだと思い返しながら。
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