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いいえ、メイドです

10 呼び出された男達

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 話は少し時間が戻る。

「でも、下町って初めてだわ!」

「そう言えばそうだね、ユーノ」

 殴られるのが怖くて、急いで曲がり角に隠れた二人は当たりを見回した。泣いていたのにもう涙が引っ込んでいるのは、大したものかもさんしれない。

 雑踏、たくさんの平民達が歩いている。誰も二人に頭を下げたりしないのが不思議でならない。
 王族の子供にありがちな、お忍びで下町探索をユーシスとユーノはした事がなかった。

「ととととんでもございません!!」

「私たちの寿命が縮まってしまいます!!」

 クロードとメアリーにしてみれば預かっている大切な大切な王子と王女だ。下町などとんでもない!と絶対に許可しなかったし、二人の警護も手厚かった。二人もその厚すぎる警護を突破出来なかった。

 だから、二人は初めての街に少しわくわくした。自分の置かれている状況を忘れて。
 それでも人並みに乗れずに人気のない方、人気の無い方に流されていた。

 きれいな身なりの子供が物珍しそうにキョロキョロと当たりを見ている。完全にカモだ。そう言う目でみる悪い大人はやはりいた。
 だが二人に近づく前に

「いてぇっ!」「うっ!」

 どことからもなく飛んできた串焼き用の串が腕や足に突き刺さる。

「あのあさりは小さ過ぎる。まだ食用には向かないぜ」

 ぞっとする声が背後から聞こえ、恐怖で身がすくむ。

「命が惜しくば他で仕事をする事だ」

「ひ、ひい!」

 何者だと詮索するより、逃げる事を選んだのは賢かった。圧倒的実力差、超えた修羅場の違いが分かるような声だった。

「全く、あれが本当にお嬢様の義弟と義妹かねぇ?これは気合入れてまともにしてやらなきゃ、ヴェルデ家の料理人の名が廃るなぁ」

 レミとレラがユーシスとユーノを更生させる為に呼んだのはヴェルデ家の副料理長4人である。
 全員ブートキャンプを生き抜いた猛者であり、料理を心より愛する男達なのだ。
 四人の名前はトムとクルーズとジェームズとボンドというがこれは秘密の名前コードネームであるらしいともっぱらの噂だ。
 それに助手としてノルド・ヴェルデ公爵子息とヒューバート・オースティン侯爵令息が最近弛んでいる、と言う名目で呼び出されていた。

「全員これを装着して」

「何ですか?これ」

「スパイ物はサングラスにトランシーバーって決まってるの!」

「さんぐらす?と、とらん??」

「何かしら??」

「な、なんでもありません!料理長マスターシェフレミ!」

 なんだかよく分からないが、とても高性能な魔道具を顔と耳に装着した6人は、お嬢様の義弟と義妹を使えるあさりにするべく、暗躍を開始するのだ。
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