45 / 78
いいえ、メイドです
7 ちびアサリは檻の中
しおりを挟む
「おや、レラさん。この前は差し入れありがとうございました」
「いえいえ、いつもご苦労様です。個室を二つ貸してくださいね」
「えっ?!もしかして……」
牢番はレラの両手にぶら下げられている二人を見てギョッとする。レラの細腕で人間を一人づつぶら下げるなんて!
「では頭が冷えるまでここで暮らしてくださいませ」
はっと気づいた時にはもう遅く、2人の目の前で牢の扉は閉じられ、ガシャン!という絶望的な音が響いた。
「え、ここどこ」
「囚人用の地下牢でございます」
「嘘っ!私達を誰だと思っているのよ!?」
「さて、犬の方が利口ですし、野ザルの方が男に媚びる術を知っておりましたし。海にいる実入りの少ないアサリ以下ですかねぇ?」
「私達は王族の一員よ!」
「それもいつまで名乗れるか。明日ですかね?明後日ですかね?」
別々の牢に入りながら、2人はギョッとする。
「う、嘘よ!そんな事ないわ!」
「王太子ナイトレイ様に言われておりましたよね?本日のお二人の行動は貴族、ましてや王族の人間のやることとは到底思えません。明日には門外へ放り出されるんじゃないですか?」
「だって!そんな事されてもいく場所なんてないよ!」
「あ、そうなんですか?私には関係のない事ですし、お嬢様に害ばかり加えているチビあさりが居なくなってせいせいしますわ」
2人は言葉に詰まった。ここまで冷たくされた事は今まで生きて来て一度もなかったからだ。
「孤児なんかは一人で貧民街で暮らしているようですよ。もう10歳ですし、2人ですし問題ありません」
「問題しかないよ!?どうやって着替えたら良いの?!」
レラはそれには答えずに「私も忙しいので」と背を向けた。
「さあ?それよりその牢、かなり囚人が死んでいるらしいですよ。王族の横暴を訴えた無実の民がね。横暴な王族を憎んで恨んでいるでしょうね」
「「ひっ?!」」
「では、ごゆっくり」
レラは一礼して、足音を響かせながら遠ざかる。
「レラさぁん、ここには酔っ払って暴れた兵士くらいしか入ってませんけど……?」
あまり使われていない牢は汚くもないのだが、そんな事をあの2人は気づくはずもない。
一応いる牢番にそう言われ、レラはくすりと笑う。
「聞いてますでしょ?ユーシス王子とユーノ王女の酷さ。やっと何とかする事になったのよ、お城で働く者として手を貸してちょうだいね」
はっとして牢番は胸を叩いた。
「そう言う事でしたら!お慰めせずに脅してやった方が良いですかね?!」
「勿論よ!」
2人はビッ!と親指を立て合い、ニヤリと笑った。
「実は私、少々演劇に凝った事がありまして」
「まあ!凄い」
「任せてくださいよ!ここは地下牢ですしいくら叫んでも誰の迷惑にもなりません!」
もう思いっきりやっちゃってください!レラは予想外の参戦を心から喜んだ。
「可哀想なんて言いませんし」
まだまだこれからなのですわよ?
「いえいえ、いつもご苦労様です。個室を二つ貸してくださいね」
「えっ?!もしかして……」
牢番はレラの両手にぶら下げられている二人を見てギョッとする。レラの細腕で人間を一人づつぶら下げるなんて!
「では頭が冷えるまでここで暮らしてくださいませ」
はっと気づいた時にはもう遅く、2人の目の前で牢の扉は閉じられ、ガシャン!という絶望的な音が響いた。
「え、ここどこ」
「囚人用の地下牢でございます」
「嘘っ!私達を誰だと思っているのよ!?」
「さて、犬の方が利口ですし、野ザルの方が男に媚びる術を知っておりましたし。海にいる実入りの少ないアサリ以下ですかねぇ?」
「私達は王族の一員よ!」
「それもいつまで名乗れるか。明日ですかね?明後日ですかね?」
別々の牢に入りながら、2人はギョッとする。
「う、嘘よ!そんな事ないわ!」
「王太子ナイトレイ様に言われておりましたよね?本日のお二人の行動は貴族、ましてや王族の人間のやることとは到底思えません。明日には門外へ放り出されるんじゃないですか?」
「だって!そんな事されてもいく場所なんてないよ!」
「あ、そうなんですか?私には関係のない事ですし、お嬢様に害ばかり加えているチビあさりが居なくなってせいせいしますわ」
2人は言葉に詰まった。ここまで冷たくされた事は今まで生きて来て一度もなかったからだ。
「孤児なんかは一人で貧民街で暮らしているようですよ。もう10歳ですし、2人ですし問題ありません」
「問題しかないよ!?どうやって着替えたら良いの?!」
レラはそれには答えずに「私も忙しいので」と背を向けた。
「さあ?それよりその牢、かなり囚人が死んでいるらしいですよ。王族の横暴を訴えた無実の民がね。横暴な王族を憎んで恨んでいるでしょうね」
「「ひっ?!」」
「では、ごゆっくり」
レラは一礼して、足音を響かせながら遠ざかる。
「レラさぁん、ここには酔っ払って暴れた兵士くらいしか入ってませんけど……?」
あまり使われていない牢は汚くもないのだが、そんな事をあの2人は気づくはずもない。
一応いる牢番にそう言われ、レラはくすりと笑う。
「聞いてますでしょ?ユーシス王子とユーノ王女の酷さ。やっと何とかする事になったのよ、お城で働く者として手を貸してちょうだいね」
はっとして牢番は胸を叩いた。
「そう言う事でしたら!お慰めせずに脅してやった方が良いですかね?!」
「勿論よ!」
2人はビッ!と親指を立て合い、ニヤリと笑った。
「実は私、少々演劇に凝った事がありまして」
「まあ!凄い」
「任せてくださいよ!ここは地下牢ですしいくら叫んでも誰の迷惑にもなりません!」
もう思いっきりやっちゃってください!レラは予想外の参戦を心から喜んだ。
「可哀想なんて言いませんし」
まだまだこれからなのですわよ?
16
お気に入りに追加
3,970
あなたにおすすめの小説
修羅場を観察していたら巻き込まれました。
夢草 蝶
恋愛
異様な空気の社交場。
固まる観衆。
呆然とする第三王子。
そして──、その中央でキャットファイトを繰り広げる二人の少女。
片や、名門貴族のご令嬢。
片や、平民ながらに特別な魔力を持つ少女。
その口からは泥棒猫やら性悪女やらと品に欠ける言葉が飛び出す。
しかし、それに混じってヒロインがどうの、悪役令嬢がどうの、乙女ゲームがどうのと聞こえる。
成程。どうやら二人は転生者らしい。
ゲームのシナリオと流れが違うなーって思ってたからこれで納得。
実は私も転生者。
乙女ゲームの展開を面白半分で観察してたらまさかこんなことになるなんて。
でも、そろそろ誰か止めに入ってくれないかなー?
おお! 悪役令嬢の巴投げが決まった! ヒロインが吹っ飛んで──ん? え? あれ?
なんかヒロインがこっちに飛んできたんですけど!?
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
前世は婚約者に浮気された挙げ句、殺された子爵令嬢です。ところでお父様、私の顔に見覚えはございませんか?
柚木崎 史乃
ファンタジー
子爵令嬢マージョリー・フローレスは、婚約者である公爵令息ギュスターヴ・クロフォードに婚約破棄を告げられた。
理由は、彼がマージョリーよりも愛する相手を見つけたからだという。
「ならば、仕方がない」と諦めて身を引こうとした矢先。マージョリーは突然、何者かの手によって階段から突き落とされ死んでしまう。
だが、マージョリーは今際の際に見てしまった。
ニヤリとほくそ笑むギュスターヴが、自分に『真実』を告げてその場から立ち去るところを。
マージョリーは、心に誓った。「必ず、生まれ変わってこの無念を晴らしてやる」と。
そして、気づけばマージョリーはクロフォード公爵家の長女アメリアとして転生していたのだった。
「今世は復讐のためだけに生きよう」と決心していたアメリアだったが、ひょんなことから居場所を見つけてしまう。
──もう二度と、自分に幸せなんて訪れないと思っていたのに。
その一方で、アメリアは成長するにつれて自分の顔が段々と前世の自分に近づいてきていることに気づかされる。
けれど、それには思いも寄らない理由があって……?
信頼していた相手に裏切られ殺された令嬢は今世で人の温かさや愛情を知り、過去と決別するために奔走する──。
※本作品は商業化され、小説配信アプリ「Read2N」にて連載配信されております。そのため、配信されているものとは内容が異なるのでご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる