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いいえ、メイドです

7 ちびアサリは檻の中

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「おや、レラさん。この前は差し入れありがとうございました」

「いえいえ、いつもご苦労様です。個室を二つ貸してくださいね」

「えっ?!もしかして……」

 牢番はレラの両手にぶら下げられている二人を見てギョッとする。レラの細腕で人間を一人づつぶら下げるなんて!

「では頭が冷えるまでここで暮らしてくださいませ」

 はっと気づいた時にはもう遅く、2人の目の前で牢の扉は閉じられ、ガシャン!という絶望的な音が響いた。

「え、ここどこ」

「囚人用の地下牢でございます」

「嘘っ!私達を誰だと思っているのよ!?」

「さて、犬の方が利口ですし、野ザルの方が男に媚びる術を知っておりましたし。海にいる実入りの少ないアサリ以下ですかねぇ?」

「私達は王族の一員よ!」

「それもいつまで名乗れるか。明日ですかね?明後日ですかね?」

 別々の牢に入りながら、2人はギョッとする。

「う、嘘よ!そんな事ないわ!」

「王太子ナイトレイ様に言われておりましたよね?本日のお二人の行動は貴族、ましてや王族の人間のやることとは到底思えません。明日には門外へ放り出されるんじゃないですか?」

「だって!そんな事されてもいく場所なんてないよ!」

「あ、そうなんですか?私には関係のない事ですし、お嬢様に害ばかり加えているチビあさりが居なくなってせいせいしますわ」

 2人は言葉に詰まった。ここまで冷たくされた事は今まで生きて来て一度もなかったからだ。

「孤児なんかは一人で貧民街で暮らしているようですよ。もう10歳ですし、2人ですし問題ありません」

「問題しかないよ!?どうやって着替えたら良いの?!」

 レラはそれには答えずに「私も忙しいので」と背を向けた。

「さあ?それよりその牢、かなり囚人が死んでいるらしいですよ。王族の横暴を訴えた無実の民がね。横暴な王族を憎んで恨んでいるでしょうね」

「「ひっ?!」」

「では、ごゆっくり」

 レラは一礼して、足音を響かせながら遠ざかる。

「レラさぁん、ここには酔っ払って暴れた兵士くらいしか入ってませんけど……?」

 あまり使われていない牢は汚くもないのだが、そんな事をあの2人は気づくはずもない。
 一応いる牢番にそう言われ、レラはくすりと笑う。

「聞いてますでしょ?ユーシス王子とユーノ王女の酷さ。やっと何とかする事になったのよ、お城で働く者として手を貸してちょうだいね」

 はっとして牢番は胸を叩いた。

「そう言う事でしたら!お慰めせずに脅してやった方が良いですかね?!」

「勿論よ!」

 2人はビッ!と親指を立て合い、ニヤリと笑った。

「実は私、少々演劇に凝った事がありまして」

「まあ!凄い」

「任せてくださいよ!ここは地下牢ですしいくら叫んでも誰の迷惑にもなりません!」

 もう思いっきりやっちゃってください!レラは予想外の参戦を心から喜んだ。

「可哀想なんて言いませんし」

 まだまだこれからなのですわよ?
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