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24 失った物の大きさ(王太子リース視点
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「やーん!遅刻遅刻ぅ!リースさまぁ、早くぅ!」
「待て!廊下を走るな!大声を出すな!手を引っ張るな!私は試験には出ないと何度言ったら!」
「えー!マリリーが頑張る所、しっかり見てくださいよぉ!」
王子妃試験の会場の広間の扉にマリリーが手をかけた。
「や、やめろ!馬鹿っ」
「遅れましたぁ~でも許してくれますよねぇ!」
扉を開けるための侍従が目を向く中、マリリーは両開きの扉を思いっきり押し開く。
バターン!とあるまじき音が辺りに響き、ガシャーン、パリーン!振動で近くの花瓶が床に落ち、割れる。
その花瓶二つでいくらすると思っているんだ!
「っ?!」
「うっ」
「きゃっ」
中には美しく品があっても落ち着いたドレスを纏った3人の淑女とその前にアデリア夫人が立っていた。
流石アデリア夫人、眉が少し跳ねたくらいで落ち着いているが、4番目の王子の婚約者は小さく悲鳴を上げた。
「あはっ!大丈夫みたいよ!リースさま、マリリー頑張るわ!」
見ればマリリーのようにフリルやリボンがたっぷりついた派手なドレスを着ている者は一人もいない。
「マリリーこれが良い!絶対これ!」
と、試験にはドレスが必要だと選んだものは、ピンクを基調としたフリフリのドレスだ。
試験だろう?と何度言ってもこれじゃなきゃ嫌だと店で駄々をこね、手がかかっているから、値の張るそれを買わされた。
アルカンジェルならば勝手に自分で金を払っていたがマリリーの子爵家にそんな金はなかった。私の自由になる金額など高が知れているのに……。
部屋に一歩踏み込もうとするマリリーにアデリア夫人は声をかけた。
「マリリー・ミルド子爵令嬢。もう帰って宜しいです」
は……し、試験は……?
「えー!そうなの!わーいやったぁ!リースさま、帰りましょう!」
「ま、待て!アデリア夫人!試験は……試験は、どうなるのです?!」
私の王太子の座は、どうなるのですか!
アデリア夫人は小さくため息をつきながらも冷静に通る声で伝えてくる。
「これ以上失態を積み重ねてどうするのですか?ヴェルデ公爵令嬢の積み上げた実績すら食い潰して。お帰り下さい」
「な……」
扉の前にいた侍従達に下がるよう促され、無常にも扉は閉められた。
上機嫌なマリリーを伴って、自室に戻ると、積み上がっていた書類の山が消えている。
王太子の職務だからと、沢山の決済書類があったはずなのだが?書類を抱えて出て行こうとするハワードを見かけ、声をかける。
「ハワード、ここにあった私の仕事書類はどこへ行ったのだ?」
「ああ、あの書類ならば王太子の承認が必要なものでしたからね」
「だから、どこへ?」
「そりゃ王太子の元へですよ。お分かりになりません?」
ま、まさか、それは……もう私は王太子ではないと言う事なのか!
「良いじゃないですか。リース様はお仕事が嫌いでしたし、アルカンジェル様が代理で行っていた書類も山積みでしたもん。無くなって良かったですね。書類待ちの関係各所も喜んでますよ、仕事が進むって」
確かに城の事を何も知らないマリリーに手をかけていて書類は遅れてはいた。だが、遅れは少しだっただろう?!
「アルカンジェル様がいた頃は次の日には終わっていた書類が5日経っても10日経っても戻って来なければ皆、困りますよ?」
「いや、そんなはずは……」
確かにアルカンジェルがいた頃は机の上に書類が山積みになっていた事など無かった。私が何もしなくとも、書類は片付いていた……私が街に皆とお忍びで出かけた日も、いつでも。
「あー私も転職したいなーヴェルデ家で雇ってくれないかなー。あそこなんか凄いって今話題なんですよねー竜核がどうのこうのって」
ハワードの言葉は最後まで聞こえなかった。
「少し、一人にしてくれないか?」
「へ?マリリーと遊びましょう!天気も良いですし、お散歩でも良いわ」
「出て行ってくれ!」
「ちぇー!ハワード、案内してくれない?」
ハワードは渋々マリリーをつれ、部屋から出て行った。私は項垂れて失った物の大きさを噛み締めるしか無かった。
「待て!廊下を走るな!大声を出すな!手を引っ張るな!私は試験には出ないと何度言ったら!」
「えー!マリリーが頑張る所、しっかり見てくださいよぉ!」
王子妃試験の会場の広間の扉にマリリーが手をかけた。
「や、やめろ!馬鹿っ」
「遅れましたぁ~でも許してくれますよねぇ!」
扉を開けるための侍従が目を向く中、マリリーは両開きの扉を思いっきり押し開く。
バターン!とあるまじき音が辺りに響き、ガシャーン、パリーン!振動で近くの花瓶が床に落ち、割れる。
その花瓶二つでいくらすると思っているんだ!
「っ?!」
「うっ」
「きゃっ」
中には美しく品があっても落ち着いたドレスを纏った3人の淑女とその前にアデリア夫人が立っていた。
流石アデリア夫人、眉が少し跳ねたくらいで落ち着いているが、4番目の王子の婚約者は小さく悲鳴を上げた。
「あはっ!大丈夫みたいよ!リースさま、マリリー頑張るわ!」
見ればマリリーのようにフリルやリボンがたっぷりついた派手なドレスを着ている者は一人もいない。
「マリリーこれが良い!絶対これ!」
と、試験にはドレスが必要だと選んだものは、ピンクを基調としたフリフリのドレスだ。
試験だろう?と何度言ってもこれじゃなきゃ嫌だと店で駄々をこね、手がかかっているから、値の張るそれを買わされた。
アルカンジェルならば勝手に自分で金を払っていたがマリリーの子爵家にそんな金はなかった。私の自由になる金額など高が知れているのに……。
部屋に一歩踏み込もうとするマリリーにアデリア夫人は声をかけた。
「マリリー・ミルド子爵令嬢。もう帰って宜しいです」
は……し、試験は……?
「えー!そうなの!わーいやったぁ!リースさま、帰りましょう!」
「ま、待て!アデリア夫人!試験は……試験は、どうなるのです?!」
私の王太子の座は、どうなるのですか!
アデリア夫人は小さくため息をつきながらも冷静に通る声で伝えてくる。
「これ以上失態を積み重ねてどうするのですか?ヴェルデ公爵令嬢の積み上げた実績すら食い潰して。お帰り下さい」
「な……」
扉の前にいた侍従達に下がるよう促され、無常にも扉は閉められた。
上機嫌なマリリーを伴って、自室に戻ると、積み上がっていた書類の山が消えている。
王太子の職務だからと、沢山の決済書類があったはずなのだが?書類を抱えて出て行こうとするハワードを見かけ、声をかける。
「ハワード、ここにあった私の仕事書類はどこへ行ったのだ?」
「ああ、あの書類ならば王太子の承認が必要なものでしたからね」
「だから、どこへ?」
「そりゃ王太子の元へですよ。お分かりになりません?」
ま、まさか、それは……もう私は王太子ではないと言う事なのか!
「良いじゃないですか。リース様はお仕事が嫌いでしたし、アルカンジェル様が代理で行っていた書類も山積みでしたもん。無くなって良かったですね。書類待ちの関係各所も喜んでますよ、仕事が進むって」
確かに城の事を何も知らないマリリーに手をかけていて書類は遅れてはいた。だが、遅れは少しだっただろう?!
「アルカンジェル様がいた頃は次の日には終わっていた書類が5日経っても10日経っても戻って来なければ皆、困りますよ?」
「いや、そんなはずは……」
確かにアルカンジェルがいた頃は机の上に書類が山積みになっていた事など無かった。私が何もしなくとも、書類は片付いていた……私が街に皆とお忍びで出かけた日も、いつでも。
「あー私も転職したいなーヴェルデ家で雇ってくれないかなー。あそこなんか凄いって今話題なんですよねー竜核がどうのこうのって」
ハワードの言葉は最後まで聞こえなかった。
「少し、一人にしてくれないか?」
「へ?マリリーと遊びましょう!天気も良いですし、お散歩でも良いわ」
「出て行ってくれ!」
「ちぇー!ハワード、案内してくれない?」
ハワードは渋々マリリーをつれ、部屋から出て行った。私は項垂れて失った物の大きさを噛み締めるしか無かった。
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