8 / 78
8 良い事がある朝
しおりを挟む
朝に誰かが起こしてくれる。大抵はレミかレラだわ。
「お嬢様、おはようございます。今日もいい天気ですよ」
「おはよう、レラ。本当ね」
お日様の光はあまり当たると良くないと言うけれど、レミとレラは朝一番にたっぷり浴びると良いと言う。
「まず、口を濯いて。お水をどうぞ」
「ありがとう」
そして寝起きにお水を飲む。なんだか朝からスッキリする習慣だわ。レミとレラが始めた事だけど、最近は家の使用人は全員してるみたい。
「体操でもしましょうか!」
「ふふ、あのヘンテコ体操ね?」
「ウェストのくびれに良いんです!」
巻き髪に時間が掛からなくなったので、空いた時間を体操に充てる。
「腕を前から上に上げてぇーー」
レミレラ考案のヘンテコ体操は真面目にやると結構疲れるけれど、朝食前に踊るとご飯が美味しいのよね!
「おはよう」
「お、お父様?!おはようございます!」
朝食の席にお父様がいらっしゃるなんて!初めてだわ!嬉しい!ドキドキして作法を忘れてしまいそう!
「すぐ行かねばならんが」
「あ、はい……お勤めご苦労様でございます」
でも朝から挨拶出来ただけでも嬉しいわ。朝からフルーツたっぷりのパンプティングをいただく。うちの料理長は本当にお料理上手!
「ふ、古くて硬くなったパンがこんなに美味しく!レミレラは天才か?!」
「お嬢様には新しいパンで作って差し上げて?」
「お砂糖は少なめよ!フルーツいっぱいでね!」
厨房にレミとレラも出入りしているから、新しいお料理が生まれて来るかも知れない。楽しみだわ。
お父様はお茶だけをお召し上がりになるみたい。大丈夫かしら?
「朝食は一日の力の源です!しっかり食べてください!」
それがレミの口癖だけど……?
「ぶっ?!なんだこれは!おい!」
お父様が飲んでいた紅茶を吹き出しました。も、もしかして何も言わずに初めて差し上げましたの?!
「ミントティーでございます。ミントには目を覚まし、頭をスッキリさせる作用がございます」
何食わぬ顔顔でレラが言うのが面白いわ!私も初めて飲んだ時は驚いた物です。
「このような物、飲めるかっ!」
声を荒げるお父様ですが、ついわたくしは口を挟んでしまいました。
「不思議な味ですわよね。でも、スッキリ致しませんか?香りも爽やかですし、目もぱっちり開きますわ。わたくし、勉強で疲れを感じる時にいただきますのよ」
「お嬢様のはもっと濃いミントですね」
「あら?そうなの?ふふ。お父様も香りが爽やかで素敵ですわ」
お父様は叩きつけかけたカップを元に戻します。そこにすかさずレラが新しいミントティーを注ぎました。
「このように香りの主張が少ない茶葉に合わせました。ミントの香りを楽しみつつ、お召し上がりください。書類が進みますよ」
「む、むむ……」
難しい顔をしながら、お茶をいただくお父様。そう言う物だと分かれば難なくいただけるようです。
「このミント。割と何処にでも生えるハーブだそうです。庭師が言っておりました。でもわたくしはこのように使えるとは知りませんでした。……ただ知らなかったで、わたくし達はどれだけ多くの利を捨てて来たのでしょう」
今、わたくしのサラダにはお花が載っています。これも食べられるのですよ、とレミが料理長にお願いして美しいサラダに仕立ててくれました。
食べても美味しく、見た目にも美しいなんて素敵です。
「少し酸っぱいのは、お肌に良い証拠なんです」
下町の知恵だと言います。わたくし達貴族は貴族だからと言って人の話を聞かずにいては良くないのです。
「利、か」
「ええ、わたくし達の肩に領民の生活がかかっているのでしょう?」
わたくし達はただ贅沢をしていれば良いわけではありません。レミとレラはわたくしに教えてくれるのです。
そんなわたくしの顔をお父様はじっと見つめておりました。も、もしかして頬に花びらでもついていたでしょうか??
「アルカンジェル。リース殿下と距離を置いて良い」
「?!畏まりました」
お父様、お父様は私と殿下の不仲をお知りでしたのね。そしてわたくしの事を思って……。
お父様はお茶を残して行ってしまいましたが、わたくしは嬉しくて涙が溢れました。
「お嬢様、冷たいタオルですわ。これから学園に向かいませんと」
「あ、ありがとう。レラ。でもお父様はわたくしの事を気にかけてくださっていたのね、わたくしは要らない子供ではないのね?」
「ええ、そうですとも。お嬢様は最高のヴェルデ公爵家令嬢、アルカンジェル様でございますよ」
レミとレラの言った通りでした。お父様はわたくしを嫌ってなどいなかったのです。ああ!長年の心の痛みがすっと消えて行きました。
昨日よりもっと胸を張って生きて行けそうですわ!
レミとレラを信じてよかった!
「お嬢様、おはようございます。今日もいい天気ですよ」
「おはよう、レラ。本当ね」
お日様の光はあまり当たると良くないと言うけれど、レミとレラは朝一番にたっぷり浴びると良いと言う。
「まず、口を濯いて。お水をどうぞ」
「ありがとう」
そして寝起きにお水を飲む。なんだか朝からスッキリする習慣だわ。レミとレラが始めた事だけど、最近は家の使用人は全員してるみたい。
「体操でもしましょうか!」
「ふふ、あのヘンテコ体操ね?」
「ウェストのくびれに良いんです!」
巻き髪に時間が掛からなくなったので、空いた時間を体操に充てる。
「腕を前から上に上げてぇーー」
レミレラ考案のヘンテコ体操は真面目にやると結構疲れるけれど、朝食前に踊るとご飯が美味しいのよね!
「おはよう」
「お、お父様?!おはようございます!」
朝食の席にお父様がいらっしゃるなんて!初めてだわ!嬉しい!ドキドキして作法を忘れてしまいそう!
「すぐ行かねばならんが」
「あ、はい……お勤めご苦労様でございます」
でも朝から挨拶出来ただけでも嬉しいわ。朝からフルーツたっぷりのパンプティングをいただく。うちの料理長は本当にお料理上手!
「ふ、古くて硬くなったパンがこんなに美味しく!レミレラは天才か?!」
「お嬢様には新しいパンで作って差し上げて?」
「お砂糖は少なめよ!フルーツいっぱいでね!」
厨房にレミとレラも出入りしているから、新しいお料理が生まれて来るかも知れない。楽しみだわ。
お父様はお茶だけをお召し上がりになるみたい。大丈夫かしら?
「朝食は一日の力の源です!しっかり食べてください!」
それがレミの口癖だけど……?
「ぶっ?!なんだこれは!おい!」
お父様が飲んでいた紅茶を吹き出しました。も、もしかして何も言わずに初めて差し上げましたの?!
「ミントティーでございます。ミントには目を覚まし、頭をスッキリさせる作用がございます」
何食わぬ顔顔でレラが言うのが面白いわ!私も初めて飲んだ時は驚いた物です。
「このような物、飲めるかっ!」
声を荒げるお父様ですが、ついわたくしは口を挟んでしまいました。
「不思議な味ですわよね。でも、スッキリ致しませんか?香りも爽やかですし、目もぱっちり開きますわ。わたくし、勉強で疲れを感じる時にいただきますのよ」
「お嬢様のはもっと濃いミントですね」
「あら?そうなの?ふふ。お父様も香りが爽やかで素敵ですわ」
お父様は叩きつけかけたカップを元に戻します。そこにすかさずレラが新しいミントティーを注ぎました。
「このように香りの主張が少ない茶葉に合わせました。ミントの香りを楽しみつつ、お召し上がりください。書類が進みますよ」
「む、むむ……」
難しい顔をしながら、お茶をいただくお父様。そう言う物だと分かれば難なくいただけるようです。
「このミント。割と何処にでも生えるハーブだそうです。庭師が言っておりました。でもわたくしはこのように使えるとは知りませんでした。……ただ知らなかったで、わたくし達はどれだけ多くの利を捨てて来たのでしょう」
今、わたくしのサラダにはお花が載っています。これも食べられるのですよ、とレミが料理長にお願いして美しいサラダに仕立ててくれました。
食べても美味しく、見た目にも美しいなんて素敵です。
「少し酸っぱいのは、お肌に良い証拠なんです」
下町の知恵だと言います。わたくし達貴族は貴族だからと言って人の話を聞かずにいては良くないのです。
「利、か」
「ええ、わたくし達の肩に領民の生活がかかっているのでしょう?」
わたくし達はただ贅沢をしていれば良いわけではありません。レミとレラはわたくしに教えてくれるのです。
そんなわたくしの顔をお父様はじっと見つめておりました。も、もしかして頬に花びらでもついていたでしょうか??
「アルカンジェル。リース殿下と距離を置いて良い」
「?!畏まりました」
お父様、お父様は私と殿下の不仲をお知りでしたのね。そしてわたくしの事を思って……。
お父様はお茶を残して行ってしまいましたが、わたくしは嬉しくて涙が溢れました。
「お嬢様、冷たいタオルですわ。これから学園に向かいませんと」
「あ、ありがとう。レラ。でもお父様はわたくしの事を気にかけてくださっていたのね、わたくしは要らない子供ではないのね?」
「ええ、そうですとも。お嬢様は最高のヴェルデ公爵家令嬢、アルカンジェル様でございますよ」
レミとレラの言った通りでした。お父様はわたくしを嫌ってなどいなかったのです。ああ!長年の心の痛みがすっと消えて行きました。
昨日よりもっと胸を張って生きて行けそうですわ!
レミとレラを信じてよかった!
33
お気に入りに追加
3,970
あなたにおすすめの小説
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます
kana
恋愛
前世の記憶を持って生まれたエリザベートはずっとイヤな予感がしていた。
イヤな予感が確信に変わったのは攻略対象者である王子を見た瞬間だった。
自分が悪役令嬢だと知ったエリザベートは、攻略対象者の弟をゲームに関わらせない為に一緒に隣国に連れて逃げた。
悪役令嬢がいないゲームの事など関係ない!
あとは勝手に好きにしてくれ!
設定ゆるゆるでご都合主義です。
毎日一話更新していきます。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる