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7 まだ生かしておいてやります

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「これはまことなのだな?レミ、レラ」

「録画録音石をお調べになって下さい」

「……あいわかった」

 私とレミは公爵様の前に立っております。本当ならこのように面と向かって話すことなど出来ない御方。しかし、私達はお嬢様の為に立っています。

 本日の朝、ひどい言葉をリース王子よりぶつけられたお嬢様の映像を手に持って。

「リース殿下のなさりようは、公爵令嬢に向けるものではございません」

「リース殿下のなさり様なもう学園中に知れ渡っております」

「ではノルドに……」

 私とレミは畳みかけます。

「ノルド様はマリリーに骨抜きにされております。何故か分かりませんがお嬢様を憎むがごときです」

 すっとマリリーとノルド様のキスシーンの写真を取り出します。乙女ゲームだから、写真技術は進んでいるのです。
 流石の写真に、公爵もあっけに取られました。ここまでとは思っていなかったようですね。

「ノルド様はマリリーの味方。妹であらせられるアルカンジェル様を人前で悪様に罵るなど日常茶飯事でございます」

 録音石。すっと差し出して再生すると、実の妹にかけるはずもない言葉がずらずらと並んだ恫喝の声がよくとれていました。

「ノルドは一体何をしておるのだ……」

「マリリーと言う子爵令嬢と将来を誓ったそうです」

 流石の公爵も聞き返してきた。

「マリリーという娘はリース殿下が執心しているのでは?」

 ぺこりと肯定のお辞儀をする。

「マリリーは双子でも何でもなく、一人しかおりません」

「王太子様と交代で夫婦生活でもなさるのでしょう。私達には理解出来ませんが」

 こめかみを押さえて、公爵は天を仰いだ。

「良く知らせてくれた。早急に手を打つ。褒美をとらせよう、何が良い?」

 私達の願いは一つ。

「お嬢様の事をもっと良く見て下さいませ。お嬢様は使用人に大変可愛がられておりますよ、誰一人として嫌っている者はございません」

「お嬢様にもっと贈り物をしてあげて下さいませ。リース殿下がああなのです、お嬢様にはドレスの一つも送って下さらないのです。お嬢様が旦那様の命令でどうやって今まで夜会に行っていたか、考えて下さいませ」

 婚約者も兄にも、ついでに父親にも見捨てられていたお嬢様。それでも公爵家の義務として夜会に参加させられていたお嬢様。
 たった一人で貴族の目に晒されて耐えていたお嬢様。強がりな悪役令嬢の態度で無ければやり過ごせなかったのです。

 そして

「真っ赤なドレスは贈らないで下さいませ、似合いません」

「贈るなら空色か薄緑でお願いします」

 真っ赤なドレスは縁起が悪い。ゲームで断罪された時も真っ赤なドレスだった。

「あ、ああ」

 ドレスがないなら贈れば良い。色はよく着ている赤でいいか、と言う安易な考えを私達に見抜かれ、公爵の歯切れは最悪だ。

 だから、お嬢様の事を良く見ろと言うのです!

「赤いドレスはお嬢様の必死の強がり。分かってあげてくださいませ」

「……良く分かった……」

 これなら大丈夫、私達は深くお辞儀をして扉を閉めたのでした。

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