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5 銀天使

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「アルカ!お前はまたマリリーに酷い事を言ったそうだな!」

「……おはようございます、リース殿下」

 朝の挨拶もなしに何言ってるのかしらあのバカ王子は。何も言うわけないじゃない。お嬢様は私達が目を覚まさないのは自分のせいだと思い詰めて、食事も喉を通らず学園も休んでたわよ。馬鹿じゃないの?さて、私は録音録画石を用意します。
 乙女ゲームの世界なので、そういう便利アイテムがあるんですよ。凄いでしょう?

「昨日はマリリーに何をした!?」

「リース様、お言葉ですが。わたくし、昨日は学園をお休みいたしました」

 あれ?と馬鹿王子は隣にくっ付いている女の顔を見ます。こいつがマリリーみたいですね。ブスです……いえ、ユニークな顔立ちです。ゲームの主人公の聖女ならもっと可愛いのですが、こいつは……胸が大きいだけです、似ても似つきませんね。

「あ、あら?一昨日だったかしら??マリリー勘違いしちゃったわ!」

「一昨日のことだ!」

「リース様、わたくしは一昨日も学園はお休み致しました」

 だからお嬢様は一週間休んだのに。そんなお嬢様がその女に会うはずがないのだけれども、リース王子はお嬢様が学園に登校していない事も気づいていなかったようです。

「えーと、その前の日だったかもぉ~」

「その前の日だ!」

 馬鹿王子、マリリーの言葉を繰りかえすだけ。オウムより頭が悪そうね。

「ですから、その日もわたくしはお休みをしております」

「あ、あれぇ……?」

 マリリーという聖女(?)は本当に頭が悪そうで、ある意味馬鹿王子とは似合いのカップルになれそうだわ。

「ぷ」

 耐えきれなくなった淑女が一人歩み出てきました。綺麗な銀髪に、真っ青な瞳。わたくしたちのアルカンジェルお嬢様は金のエンジェルならこちらは銀のエンジェル。ミカエラ・サウラス公爵令嬢です。ああ、美女!美女って感じです!

「おはようございます、リース殿下。このような朝の往来で、自らの婚約者に大声を上げるのはいかがなものかと存じますわ。紳士の風上にも置けませんわね?」

 ミカエラ様はとても胸のすくことを言ってくださいました。隠れて見守っている私もスッキリいたしますね。

「さ、行きましょう?アルカンジェル様」

「ありがとう存じますわ。ミカエラ様」

「ふふ、宜しければミカと呼んで頂けませんか?わたくし、アルカンジェル様みたいな妹が居ればなと常々思っていましたのよ?」

「まあ!とても嬉しいです!ではわたくしのことは、アルカと……あの、ミカ……お姉様……」

「まあ!嬉しいわ!アルカ様!」

「そ、そこは、呼び捨てにしてくださいませ。その方が……し、姉妹っぽいですから……わたくし、お姉様がいないので、あ、憧れて……あっ!すみませんっ」

「まあ!まあ!まあ!嬉しいわ!アルカ……!」

 まあ!アルカンジェルお嬢様に素敵なお姉様が出来ました。ミカエラ・サウラス公爵令嬢は素晴らしい令嬢です。お嬢様に良い影響を与えてくださるでしょう。ぽかんと口を開けているリース王子、マリリーさんを置いて、楽し気に歩いてゆくお嬢様をほっと見送るのでした。

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