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3 仕事を忘れた悪役令嬢に囲まれる

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「ちょっと宜しいかしら?」

「はい?」

 またすんごい美少女に呼び出された。こ、この人はアイリス・ディル。ディル侯爵令嬢にして辺境伯令息、シュレイズ・ベルファンの婚約者だ!
 愛虹3は彼女が悪役令嬢なのだ。なんだなんだ?実は3なのか?!

 ちなみにアイリス・ディルは魔女の血筋に連なる者で、毒薬が得意。アイリスの秘密の庵は完全に魔女の家で、大鍋の中に何が入っているか分からない。グツグツと煮込まれているけど、絶対料理じゃない。だってゲーム画面では緑色の液体だったもの。

 シュレイズに近寄る聖女に怪しげな薬を飲ませたり、髪や服が溶ける薬をかけたり、呪いをかけたりと陰湿極まりない。

 そんな恐怖の魔女に呼び出された。お昼休みの人気の少ないベンチでアイリスが待っていた。

「座ってくださるかしら?」

「あ、はい」

 アイリス様は私を座らせて、自分は立って私を見下ろす。

「まず、これを渡しておくわ」

「え、あ、はい」

 何か可愛らしい布に包まれた物を渡される。なんだろう?お弁当に見える。いや、アイリスがくれる物だ。一体何が入っているの?!

「ハル様、わたくしあなたに言いたい事がありましたの」

 なんだろう?なんの接点もないアイリス様に言われる事って……。

「申し訳ありませんが、ハル様。シュレイズ様を引き取っていただけないかしら?」

「へ?」

 引き取るって何?!

「あーー!ずるいですわ!アイリス様!ハル様には兄のテオルドを引き取っていただく予定でしたのに!」

 ルータベーガがガサゴソと茂みをかき分けて顔を出した。波打つ金髪に木の葉が付いていて可愛らしい。

「いえいえ!ハル様にはアリオス殿下を引き取っていただきます!もううんざりなのですわ!」

 これまた美少女。そして私は小説で読んで知っている。1の悪役令嬢マルグレータ・ティカッツ公爵令嬢だ。

 マルグレータ様は見た目通りの縦ロール悪役令嬢。公爵家の笠を着てテンプレ虐めを繰り返す。

 3人は3人とも私に婚約者もしくは兄を押しつけてきた。な、なによそれ!あ、あなた達の大事な人でしょう?!

「アリオス様は第一王子よ!いずれ国王!お得すぎるわよ?!」

「お兄様は公爵家をつぎますわ!家柄も良いのに、面倒な王妃教育などありませんわよ!」

「シュレイズ様は辺境伯!うるさい貴族の付き合いも面倒な作法もいりません!」

 それぞれの美少女は自分の担当する婚約者やら、兄やらを売り込みにきた。

「辺境には魔物が出るじゃない!」

「王宮だって魔物みたいなのがうじゃうじゃいるじゃないですか!」

「婚約者がいないのはお兄様だけ!おすすめ!」

「すぐ解消しましてよ!」

「ええなんなら今!書類も出来上がった物を持ってますわ!」

 な、なにが、何が起こっているの?!わ、私は、私は

「どれもいりませんけど……」

「「「そう言わずに!」」」

 どうした、悪役令嬢!仕事忘れたのか!
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