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13 厚顔無恥な女

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 予想はしていたけれど、いつまでたってもナルクがごねて婚約が解消されないでいた。

「費用は手切れ金としてくれてやる! だから婚約解消に同意しなさい」
「い、嫌です! 私はアネモネのことを愛しているんです」
「アネモネは君の顔はもう見たくないと言っている。完全に心が離れているんだ、諦めろ」
「嫌です!」

 毎日我が家に訪れて喚き散らす邪魔なデニス家。しかもナルクの父はどれだけ顔の皮が厚いのか、お父様から聞いて驚いた。

「あ、あの……ウィンフィールド公爵、その、我が家に融資は、その……今まで通りしていただけませんか」
「するわけないでしょう?! 我が家に金を返す立場なのですぞ?!」

 この期に及んで金をくれ? デニス侯爵は一体何を考えているのかうちの使用人も理解できなかった。

「借金を返せと言われているのに、その返事が金を貸してくれ……?」
「どうして貸してもらえるって思ったんだろう、理解に苦しむ」

 それでも毎日やってくるデニス家の面々を冷たい目で追い払いながら時だけが過ぎていく。そして学園生活がまだ残っている私はどうしても学園でダリアに会ってしまう。

「アネモネ! ナルク様と喧嘩をしたの? 早目に謝った方が良いわ、私も一緒について行ってあげるから」
「結構よ、マリクス子爵令嬢。それに私とデニス侯爵令息の話を何故あなたが知っているのかしら?」
「そ、それは私が、あなたとナルク様と友達だからに決まっているじゃない」

 喧嘩ではなく婚約解消なのだけれど、と口に出すほど私は愚かではない。私がナルクと婚約を解消したいという話は多分貴族の間ではもう広がっているだろうけれど、大声で皆様にお伝えすることではないことは誰もが知っているのに、どうしてそんな話を学園でするんだろう。

「もし仮に私とマリクス子爵令嬢が友人だとしても、頼まれもしないのに友人の婚約者との関係に口を出すのははしたないんじゃないかしら?」
「えっ……だって、ナルク様にアネモネとの仲を取り持って欲しいっていわれたから」

 ダリアは何も考えていないんだろう、彼女は朝の教室に続く廊下で私に話しかけて来た。周りにはたくさんの生徒達がいるというのに……ざわざわとざわめき、誰もが聞いていない振りをして聞き耳を立てている。

「マリクス子爵令嬢、あなたは現在まだ私の婚約者であるナルク・デニス侯爵令息と、私のいない所でお会いしたというのかしら? 私はあなた方の関係が一体どんなものか尋ねる必要性がありそうね」
「は……? 何その言い方」

 本当は私は知っている。ダリアはもうナルクと体の関係を持っていることを。でもあえてここで口にした。証人は多い方が良いもの。
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