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王都に

37 お丸い人

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 そんなボルトンが泣き叫ぶ馬車の後ろに少し小さめの馬車がゆっくりと止まる。

「ありがとう、どこかに馬車止めがあったよね?」

「はい、裏手にございますので、わたくしはそちらに馬車を置いてから参りますね」

「お願いします。先に神殿へ行きますね」

 ボルトンより遥かに小さな男の子が御者の手を借り、降り立った。

「?失礼します」

 男の子は泣きわめくボルトンの隣を遠慮がちに通り過ぎ、王家の一行が入ろうとしても謎の透明な壁に阻まれて進めなかった場所をするりと通り過ぎた。

「お邪魔致します、半魔神様」

 ぺこりと頭を下げ、楽しそうに歩いて行く。

「あら、小さな紳士ね」

 中で神官に話しかけられているのが外で転がっているボルトンにも見えた。

「はい、聖女アリアお姉さんはいらっしゃいますでしょうか?私は今ミラージ公の下でお世話になっているケビンと申します。宜しければご挨拶をしたいと思いやってまいりました」

「まあ、ご丁寧にありがとうございます、ケビン様。アリア様は今マグノリア様とおうどんを作っていらっしゃいますが、お声をかけておきますね」

「ありがとうございます。ご用事が終わるまでどこかで待たせていただけると嬉しいのですが、私がいてもお邪魔にならない場所などありますか?」

 こちらへどうぞ、とニコニコと女性神官に案内されて中に入って行ってしまった。

「な、なんで、なんで私が入れないのに、あの子供は入る事が出来るのだ!?」

「そ、そう言われましても……」

 侍従はおろおろとするしかない。

「うるさいうるさいうるさーい!」

 そしてただただ暴れるおデブをなだめすかすしかできる事はなかった。

「み、ミラージ公の所のケビンと申されておりました!多分ミラージ公に聞けば分かるのではないでしょうか!」

「すぐミラージ公爵の所へ行くぞ!」

 ここで転がっているのも人目をつく。これ以上醜聞を広げない為にも御者は急いでミラージ公爵の屋敷を目指すのだった。



「外でお丸い人がゴロゴロと転がっていたのですが、首都の子供達はそういう遊びをするのでしょうか?私は辺境生まれなので首都の流行にはあまり自信がありません」

 ちょっとぶりにあったケビンがこてん、と首を傾げて聞いて来たのでその場にいた全員がぶふっと噴き出した。

「あ、アリア!こ、この子良いわね!可愛いわ、最高!」

「でしょう?マグノリア様!ケビン君はとってもいいお兄ちゃんで、素敵な紳士なんですよ!」

「お丸い!お丸い……ワハハハハ!確かに丸かったなあ!」

 びっくりするケビンにもうどんを勧めて、和気あいあいと楽しい時間を過ごした。ケビンに勝手に信者にしてしまったことをアリアが謝ると逆に目をキラキラさせて色々尋ねて来た。

「わ、私が半魔神様の信者ですか!わー!嬉しいです。だって半魔神様はご飯が凄く美味しいから!」

「やっぱそこだよな~分かる、分かるよ~~~。このうどんも美味い!最高!」

 リードとも息が合ったようで、あれが美味しかった、これが美味しかったと興奮気味に話し合っている。ご飯が美味しいのは良い事だよね!ありがとうございます!とアリアは頑張って燻製を作る事を空に約束するのだった。




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