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半魔神の残念聖女
23 ノノス村では
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「うわぁああ!」
魔獣は結界が破れた所から侵入していた。最初に牙に掛かったのは、若者2人。次に近くで農作業をしていた若者の父親だった。
一緒に作業していた母親は命からがら逃げ出した。
「何故結界が?!」
理由は遠目で見ても分かった。アリアが「ここから絶対に動かしてはいけない」と、置いた岩の上から結界石が転がり落ちている。
「む、息子達が……」
真っ青な顔で母親が震える。
「今日、アリアがうちの畑手伝いにくる日だろ?なんであいつこねーんだ?」
「サボってんじゃねーの?」
アリアが手伝いにこれば、自分達はサボれる。息子達はそう考えて、アリアが来るたびにサボっていた。
「おっ、そうだ。この石を落とせば結界が消えるんだろ?そしたら慌てて来るんじゃね?」
「アリアの結界だろ?消えた所でどうってことねぇだろうけどな!」
「村長にとっちめられればいいんだよ!」
そーれ、ゴロン。
この石から隣の石までを繋いでいた結界が途切れる。急に冷たい風が結界の隙間から入って来たような気がして、2人はぶるりと身を震わせた。
「へっ!なんでもねぇじゃねーか」
ぐるるるる……
「全くだ……うっ!」
振り返った兄の後ろには、大型の魔獣の牙を剥いた顔があった。
そこからはあっという間の出来事だった。一瞬で兄弟はバラバラになり、次に父親が犠牲になった。
そして魔獣はまだ村の中に居座っている。近づけば襲いかかってくるだろう。
「早く!アリアを連れてこい!」
「あ、アリアは居ない!村を出て行った!」
「なんでだ?!あいつがいなかったら、誰が魔獣を倒して、結界を直すんだ?!」
「……男神様の聖者様と女神様の聖女様じゃないかな?」
「結界なら賢神様の聖者様が得意かもしれないな!」
「早く呼んでこい!こういう時の為にお布施と言って金を払ってるんだろう!」
毎月少なくないお金を神殿に納めている。当然、アリアの半魔神の教会には1ギルも支払われてはいないが。
急いで各神殿に使いをやると、どこもなかなか出てこない。しまいには誰が行くかで喧嘩を始める。
「全員で来い!」
村長の一喝で聖女や聖者がズラリと並んだが、皆下を向いて立ち向かおうというものは居なかった。
「あんな魔獣倒せません!」
「何故だ!アリアは倒していたぞ!」
「それは……」
モゴモゴと語尾は口の中に消えていく。
「戦うのは男神様の得意とする所だろう!武器や防具はどうした!買う為に金も出していたよな?!」
「それは……そのう……」
飲み食いに使いました。とは口が裂けても言えない。
「アリアは一人で倒していたが、これだけ聖者と聖女が揃っておるのだ!魔獣の一匹片付けるのなど、容易いだろう!」
「ひぃ!!」
「3人、5人、3人全員で11人で1匹の魔獣に挑むとは、情けない」
村長と村人はため息をついた。
「そ、そんなにいうなら、お前達が行けば良かろう!自警団はどうした!」
「うっ!」
今度は村長が言葉に詰まる番だった。
魔獣は結界が破れた所から侵入していた。最初に牙に掛かったのは、若者2人。次に近くで農作業をしていた若者の父親だった。
一緒に作業していた母親は命からがら逃げ出した。
「何故結界が?!」
理由は遠目で見ても分かった。アリアが「ここから絶対に動かしてはいけない」と、置いた岩の上から結界石が転がり落ちている。
「む、息子達が……」
真っ青な顔で母親が震える。
「今日、アリアがうちの畑手伝いにくる日だろ?なんであいつこねーんだ?」
「サボってんじゃねーの?」
アリアが手伝いにこれば、自分達はサボれる。息子達はそう考えて、アリアが来るたびにサボっていた。
「おっ、そうだ。この石を落とせば結界が消えるんだろ?そしたら慌てて来るんじゃね?」
「アリアの結界だろ?消えた所でどうってことねぇだろうけどな!」
「村長にとっちめられればいいんだよ!」
そーれ、ゴロン。
この石から隣の石までを繋いでいた結界が途切れる。急に冷たい風が結界の隙間から入って来たような気がして、2人はぶるりと身を震わせた。
「へっ!なんでもねぇじゃねーか」
ぐるるるる……
「全くだ……うっ!」
振り返った兄の後ろには、大型の魔獣の牙を剥いた顔があった。
そこからはあっという間の出来事だった。一瞬で兄弟はバラバラになり、次に父親が犠牲になった。
そして魔獣はまだ村の中に居座っている。近づけば襲いかかってくるだろう。
「早く!アリアを連れてこい!」
「あ、アリアは居ない!村を出て行った!」
「なんでだ?!あいつがいなかったら、誰が魔獣を倒して、結界を直すんだ?!」
「……男神様の聖者様と女神様の聖女様じゃないかな?」
「結界なら賢神様の聖者様が得意かもしれないな!」
「早く呼んでこい!こういう時の為にお布施と言って金を払ってるんだろう!」
毎月少なくないお金を神殿に納めている。当然、アリアの半魔神の教会には1ギルも支払われてはいないが。
急いで各神殿に使いをやると、どこもなかなか出てこない。しまいには誰が行くかで喧嘩を始める。
「全員で来い!」
村長の一喝で聖女や聖者がズラリと並んだが、皆下を向いて立ち向かおうというものは居なかった。
「あんな魔獣倒せません!」
「何故だ!アリアは倒していたぞ!」
「それは……」
モゴモゴと語尾は口の中に消えていく。
「戦うのは男神様の得意とする所だろう!武器や防具はどうした!買う為に金も出していたよな?!」
「それは……そのう……」
飲み食いに使いました。とは口が裂けても言えない。
「アリアは一人で倒していたが、これだけ聖者と聖女が揃っておるのだ!魔獣の一匹片付けるのなど、容易いだろう!」
「ひぃ!!」
「3人、5人、3人全員で11人で1匹の魔獣に挑むとは、情けない」
村長と村人はため息をついた。
「そ、そんなにいうなら、お前達が行けば良かろう!自警団はどうした!」
「うっ!」
今度は村長が言葉に詰まる番だった。
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