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半魔神の残念聖女
22 ノノス村では
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「不味い!こんなパン食えるかッ!」
「うるせーよ!俺の作るパンがまずいのは俺がよく知ってるよ!だからアリアに作らせてたんだろ!アリアはどこへ行ったんだよ!」
やっと開いたパン屋の前で怒号が飛び交う。パン屋だっていきなり作れと言われて、パン生地を作り、蜘蛛の巣の張ったパン焼き窯を掃除し、なんとか形にして焼いたというのに。焼きたてを不味い!と言われては頭に来るのは当然だ!
だが……食べなれた半魔神様の加護がふんわり乗った甘くてふわふわのアリアが作ったパンより不味いことはパン屋自身がよくわかっていた。
「だが、食ったんだから金は払え!」
「こんなまずいパンに金を払えるかよ!」
「ふざけるな!タダでパンができるわけねーだろ!」
「アリアにはほとんど金を払ってなかったじゃないか!」
「だからアリアは逃げたんじゃねえのか!?」
そこまで口から出て、辺りは静まり返った。そうだ、おかしい話だ。パン屋でもないアリアがなんで毎朝早起きをしてパンを焼くのだ?そして、そのパンにまともな金額を払った村人はいない。儲からない、下手したらマイナスになるようなモノをなぜ、早起きして頑張って作る必要がある?
何一つない!
「……」
村人はパン屋に金を払い、不味いパンを持ち帰る。パン屋も代金を受け取り店に戻った。
「アリア!朝飯!」
村の子供たちが教会の扉を乱暴に開ける。
「早くしろよ!グズ!仕事始まっちゃうだろう!!……あれ?」
教会というより小屋の中には当然アリアはおらず、何もない。アリアがとても大切に毎日磨いていた半魔神様の神像ももちろんない。
「アリアどこにいったんだ?」
「あいつがいなかったら俺たちの朝飯はどうなるの?」
「俺、かーちゃんの不味い飯食いたくねーよ」
「だよなーホント 母さんの飯はまずい」
「おーい!我慢して食ってやるから早く飯出せよ、アリア」
答えるものは誰もいなかった。
「アリア!今日はポーションを100個よ!……あれ?」
女神神殿の一番下の聖女リサが乱暴に教会の扉を開ける。もちろん誰もいないし、何もない。
「ホントだっさい小屋よね。女神神殿の美しさと比べたらここはホント小屋よ、小屋!アリア!早く出てきなさい!村人が欲しがってんのよ」
しーん。
「アリアッ‼私を待たせるんじゃないわよ‼このグズっ!」
バンっと唯一残されたテーブルを叩いても、古いわりに手入れが行き届いていてまだまだ使える床で地団駄を踏んでも、アリアは出てこない。それはそうだ、村にはいないのだから。
「え?どういうこと?ええ??じゃあポーションは誰が作るの??」
リサはどうしようもなくなって、女神神殿に走って戻るしかなかった。
「アリア!今日の掃除はウチからよ!……あれ?」
「アリア!畑の手伝いはどうしたのっ……あれ?」
「アリア!昼飯がねーぞ!……あれ?」
更に混乱は加速する。
「魔獣が出たぞ!お前の出番だ!アリア……あれ?」
「アリアはどうした!」
「いません……なぜか村にいないんです!」
「この緊急時にいないなんて何を考えてるんだ!あのグズでうすのろはっ!ええい!誰か行け!」
男神神殿の聖者は大声を上げた。しかしその声に答えるものは誰もいない。
「聖者ニック!聖者サライ!早く魔獣を倒してくるのだ‼」
名指しされたニックとサライはすくみ上り、しどろもどろに答える。
「ま、魔獣なんて……恐ろしいもの倒せません!」
「お前たち!それでも偉大なる男神様の聖者か‼恥を知れ!男神様はいついかなる時でも先頭に立ち、血路を開き勝利を導く勇ましき方!その神にお仕えする者が、恐ろしいなど!なんと不敬な!なんと恥知らずな!!」
男神神殿の第一聖者のジュレイは声を張り上げた。
「な、ならば聖者ジュレイよ。あなたのお力をお示しください!」
「は?」
「そうです!ここで一番の神力があるとされるあなたなら、簡単に魔獣を屠り去ることができるはずです!そう!男神様のように!」
「そ、そのようなことは……」
今まで勇ましかったジュレイの語尾はどんどん小さくなって消えそうだ。
「ジュレイ様!さあ、お願いします!」
逆にニックとサライの声は大きくなる。
「いや、あの……その……」
それもそのはず。勇敢でいかなる時も先頭に立ち、血路を開き勝利を導くはずの男神様の聖者たちは、一度も魔獣と戦ったことがなかったのであった。すべてアリアに押し付けて、偉そうに村の安全な所で文句ばかり言っていたのであるから。
「うるせーよ!俺の作るパンがまずいのは俺がよく知ってるよ!だからアリアに作らせてたんだろ!アリアはどこへ行ったんだよ!」
やっと開いたパン屋の前で怒号が飛び交う。パン屋だっていきなり作れと言われて、パン生地を作り、蜘蛛の巣の張ったパン焼き窯を掃除し、なんとか形にして焼いたというのに。焼きたてを不味い!と言われては頭に来るのは当然だ!
だが……食べなれた半魔神様の加護がふんわり乗った甘くてふわふわのアリアが作ったパンより不味いことはパン屋自身がよくわかっていた。
「だが、食ったんだから金は払え!」
「こんなまずいパンに金を払えるかよ!」
「ふざけるな!タダでパンができるわけねーだろ!」
「アリアにはほとんど金を払ってなかったじゃないか!」
「だからアリアは逃げたんじゃねえのか!?」
そこまで口から出て、辺りは静まり返った。そうだ、おかしい話だ。パン屋でもないアリアがなんで毎朝早起きをしてパンを焼くのだ?そして、そのパンにまともな金額を払った村人はいない。儲からない、下手したらマイナスになるようなモノをなぜ、早起きして頑張って作る必要がある?
何一つない!
「……」
村人はパン屋に金を払い、不味いパンを持ち帰る。パン屋も代金を受け取り店に戻った。
「アリア!朝飯!」
村の子供たちが教会の扉を乱暴に開ける。
「早くしろよ!グズ!仕事始まっちゃうだろう!!……あれ?」
教会というより小屋の中には当然アリアはおらず、何もない。アリアがとても大切に毎日磨いていた半魔神様の神像ももちろんない。
「アリアどこにいったんだ?」
「あいつがいなかったら俺たちの朝飯はどうなるの?」
「俺、かーちゃんの不味い飯食いたくねーよ」
「だよなーホント 母さんの飯はまずい」
「おーい!我慢して食ってやるから早く飯出せよ、アリア」
答えるものは誰もいなかった。
「アリア!今日はポーションを100個よ!……あれ?」
女神神殿の一番下の聖女リサが乱暴に教会の扉を開ける。もちろん誰もいないし、何もない。
「ホントだっさい小屋よね。女神神殿の美しさと比べたらここはホント小屋よ、小屋!アリア!早く出てきなさい!村人が欲しがってんのよ」
しーん。
「アリアッ‼私を待たせるんじゃないわよ‼このグズっ!」
バンっと唯一残されたテーブルを叩いても、古いわりに手入れが行き届いていてまだまだ使える床で地団駄を踏んでも、アリアは出てこない。それはそうだ、村にはいないのだから。
「え?どういうこと?ええ??じゃあポーションは誰が作るの??」
リサはどうしようもなくなって、女神神殿に走って戻るしかなかった。
「アリア!今日の掃除はウチからよ!……あれ?」
「アリア!畑の手伝いはどうしたのっ……あれ?」
「アリア!昼飯がねーぞ!……あれ?」
更に混乱は加速する。
「魔獣が出たぞ!お前の出番だ!アリア……あれ?」
「アリアはどうした!」
「いません……なぜか村にいないんです!」
「この緊急時にいないなんて何を考えてるんだ!あのグズでうすのろはっ!ええい!誰か行け!」
男神神殿の聖者は大声を上げた。しかしその声に答えるものは誰もいない。
「聖者ニック!聖者サライ!早く魔獣を倒してくるのだ‼」
名指しされたニックとサライはすくみ上り、しどろもどろに答える。
「ま、魔獣なんて……恐ろしいもの倒せません!」
「お前たち!それでも偉大なる男神様の聖者か‼恥を知れ!男神様はいついかなる時でも先頭に立ち、血路を開き勝利を導く勇ましき方!その神にお仕えする者が、恐ろしいなど!なんと不敬な!なんと恥知らずな!!」
男神神殿の第一聖者のジュレイは声を張り上げた。
「な、ならば聖者ジュレイよ。あなたのお力をお示しください!」
「は?」
「そうです!ここで一番の神力があるとされるあなたなら、簡単に魔獣を屠り去ることができるはずです!そう!男神様のように!」
「そ、そのようなことは……」
今まで勇ましかったジュレイの語尾はどんどん小さくなって消えそうだ。
「ジュレイ様!さあ、お願いします!」
逆にニックとサライの声は大きくなる。
「いや、あの……その……」
それもそのはず。勇敢でいかなる時も先頭に立ち、血路を開き勝利を導くはずの男神様の聖者たちは、一度も魔獣と戦ったことがなかったのであった。すべてアリアに押し付けて、偉そうに村の安全な所で文句ばかり言っていたのであるから。
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