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半魔神の残念聖女
4 とある冒険者と村民
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「な、なんだ!このポーションはーーー!」
立ち寄った街でたまたま買った初級赤ポーションに目玉が飛び出るかと思った。
買った時は汚い子供が売りに来たのもあって良く見ていなかったが、まずいろが美しい。
薄い赤ではなく、ルビーのように深くて美しい真紅だった。そのに金の光がキラキラと舞って芸術のようだ。
そして、美味い。少しとろりとして濃い目だが、それでいてしつこくなく、さらりと飲める。わずかに酸味を感じる所がフルーツを思わせる。
効果も抜群だ。初級ポーションにあるまじき回復値に二度見する。上級ポーション以上じゃないか?!
しかも飲んだ後もしばらく徐々に回復するおまけ付きだ。
「なんだこれ……鬼か!」
俺は買った街へ戻った。ポーションなら女神神殿だろう。女神神殿で売られている初級ポーションを買う。値段はあのポーションの10倍だ。
だめだ。何か腐ったような色をしている。飲んだらダメだと全身が訴えるような色だ。
恐る恐る蓋をあけると、むわんと広がる異臭。これをポーションだと売っている自体どうなんだ?
せっかくなので少し舐めてみた。うん、ドブ味だ。舌が痺れる。本当に回復をするのか?しないよなーーー!
あの奇跡のようなポーションは絶対にここでは作られていない。それだけは分かる。
ああ!あのポーションがもっと欲しい!100倍の値段を出してもアレが飲みたい!
「一体誰が作ったんだ……ちくしょう!こんな罪なもの作りやがって!2度と普通のポーションが飲めないじゃないか!訴えてやる!」
「不味い……」
パサパサでそれでいてカッチカチ。小麦の豊かな風味などせず、ただ焦げて不味い。そんなパンを村人は食べていた。
「アリアがいない!」
肉屋の親父に叩き起こされた村長は
「そんな事がある訳ない!」
と、とびらを閉めて二度寝をしようもしたが、だんだん顔色が悪くなる。良く考えれば
そんな事がない訳がないのである
親父と一緒にアリアの小屋へ向かい、テーブルと手紙しか残されていない中をみて、がっくりと膝をついた。
「そ、村長……どうするんでさ……手紙も全部隠してるんでしょ……」
「ええい!そっちはバレてない!まずは今日の朝飯からだ!」
アリアにパンを作らせ始めてから、ほぼ働いていないパン屋を叩き起こす。
「はぁ?!ねぇわ!」
ぶつぶつと文句を言いながらも、焼いたパンはパサパサだ。
「だから嫌なんだよ!アリアはどこいっちまったんだ?あいつがパン焼けば良いだろう!」
「それが……村を出て行ったみたいで……」
「はぁ?!なんでだよ!」
そこまで言って心当たりがあり過ぎるのにはたと気がつく。
第一、聖女のアリアが何故村人全員のパンを焼かなければならないのか。
パンを焼いてやる理由があるなんてない。しかも大した礼も言われず、代金もギリギリ。今まで作ってくれていた方が不思議なのだ。
「……半魔神様がお怒りか……?」
この村の行く末にぶるりと寒気がした。
立ち寄った街でたまたま買った初級赤ポーションに目玉が飛び出るかと思った。
買った時は汚い子供が売りに来たのもあって良く見ていなかったが、まずいろが美しい。
薄い赤ではなく、ルビーのように深くて美しい真紅だった。そのに金の光がキラキラと舞って芸術のようだ。
そして、美味い。少しとろりとして濃い目だが、それでいてしつこくなく、さらりと飲める。わずかに酸味を感じる所がフルーツを思わせる。
効果も抜群だ。初級ポーションにあるまじき回復値に二度見する。上級ポーション以上じゃないか?!
しかも飲んだ後もしばらく徐々に回復するおまけ付きだ。
「なんだこれ……鬼か!」
俺は買った街へ戻った。ポーションなら女神神殿だろう。女神神殿で売られている初級ポーションを買う。値段はあのポーションの10倍だ。
だめだ。何か腐ったような色をしている。飲んだらダメだと全身が訴えるような色だ。
恐る恐る蓋をあけると、むわんと広がる異臭。これをポーションだと売っている自体どうなんだ?
せっかくなので少し舐めてみた。うん、ドブ味だ。舌が痺れる。本当に回復をするのか?しないよなーーー!
あの奇跡のようなポーションは絶対にここでは作られていない。それだけは分かる。
ああ!あのポーションがもっと欲しい!100倍の値段を出してもアレが飲みたい!
「一体誰が作ったんだ……ちくしょう!こんな罪なもの作りやがって!2度と普通のポーションが飲めないじゃないか!訴えてやる!」
「不味い……」
パサパサでそれでいてカッチカチ。小麦の豊かな風味などせず、ただ焦げて不味い。そんなパンを村人は食べていた。
「アリアがいない!」
肉屋の親父に叩き起こされた村長は
「そんな事がある訳ない!」
と、とびらを閉めて二度寝をしようもしたが、だんだん顔色が悪くなる。良く考えれば
そんな事がない訳がないのである
親父と一緒にアリアの小屋へ向かい、テーブルと手紙しか残されていない中をみて、がっくりと膝をついた。
「そ、村長……どうするんでさ……手紙も全部隠してるんでしょ……」
「ええい!そっちはバレてない!まずは今日の朝飯からだ!」
アリアにパンを作らせ始めてから、ほぼ働いていないパン屋を叩き起こす。
「はぁ?!ねぇわ!」
ぶつぶつと文句を言いながらも、焼いたパンはパサパサだ。
「だから嫌なんだよ!アリアはどこいっちまったんだ?あいつがパン焼けば良いだろう!」
「それが……村を出て行ったみたいで……」
「はぁ?!なんでだよ!」
そこまで言って心当たりがあり過ぎるのにはたと気がつく。
第一、聖女のアリアが何故村人全員のパンを焼かなければならないのか。
パンを焼いてやる理由があるなんてない。しかも大した礼も言われず、代金もギリギリ。今まで作ってくれていた方が不思議なのだ。
「……半魔神様がお怒りか……?」
この村の行く末にぶるりと寒気がした。
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