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狐 オン ザ ライス

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 いくら探してもミーティアの行方は分からなかった。探知も何もかも発動しない。

 ミーティアと言う最大戦力を失って、人族との戦いを続けると言う声も小さくなっていった。
 元々ここまで拡大させるつもりはなかったのだ。管理が行き届いていないのは分かっていた。ただ、軍や民衆の声は無敗の魔王軍に撤退をさせなかっただけだ。
 私が無理にでも手を引けば良かったのだが、確かに負けるはずのない戦いに少し酔っていた所もある。
 
 しかし、それも終わりだ。滞っていた内政を強化せねばならない。手の届かぬ場所は人族に返還も考える。

 寒いと思った。膝の上と、そして夜が。妃の宮へ通う気にはならなかった。ミーティアを連れて来てから、自分のベッドにあの子供を連れて来た。抱くようになってから、部屋を与えた。何かある時や、陣の強化などはその部屋で行った。
 たまに気分で尋ねることもあった。

 いつも嫌な顔で迎え、とろとろに溶けた声で啼いた。

好き。
大好き。

 あの日の告白が衝撃過ぎて、耳に残っている。嫌な顔で迎え、嫌々抱かれていたミーティアの記憶があの日の告白と混じって、笑顔で迎え入れられ、願って甘い時を過ごしたのではないかと勘違いしそうになるくらいに。

「ティーア、お前は最後に」

 何を言いたかった?私はあの言葉の続きが聞きたい。

 近衛軍にミーティアの捜索を依頼した。渋い顔をされたが、隊長のスレイは

「承りました」

 と、深々と頭を垂れた。軍部で捜索を続けているのは知っていたが、あちらからの報告は梨の礫だ。

 人族との和平は進み、共同で学園の設立の話が進んでいた。ミーティアもとしの頃で言えば学生になってもおかしくない。
 少し興味が湧いて来た。

 やはり近衛は優秀で、副長のフリックは可能性を伝えて来た。

「銀の勇者が「歪みの壺」を破壊し、内部まで調査。ミーティア・ゼノアギアスの痕跡はなし」

 銀の勇者…神に召喚されし、強き者。報告では魔族にも友好的と聞く。

「なお、勇者は可能性を指摘して来ました。ミーティア・ゼノアギアスは魔力の全てを歪みに取られ、代わりに聖剣を所持している可能性があると」

 なんと、そんな事があるのか?2.3度瞬いた。

「全ての魔力を失ったミーティア・ゼノアギアスは今は普通の色の狐の獣人ではないか?と銀の勇者は言いました。もしくは聖剣の色を持った金かもしれないと。そして聖剣の護りを得て、生きていると」

「分かった。下がって良い」

 フリックは恭しく礼をし、出て行く。なるほど、軍部は黒い狐を探しているのだろう。だから見つからないのだ。あの黒は私の与えた魔力で染まった色だ。魔力を失えば色が戻るかもしれない。
 黄色、黄金色…ミーティアの生まれた時の色、白銀に空色の瞳に。

「生きている」

 安堵した、殺してしまおうと思っていたのに、いざ居なくなると騒めき、生きていると思うと安堵した。何と傲慢なのだろうか。

「ティーア、それでも私は」

 あの日の続きを。
 
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