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ゼノアギアス戦記2

26 君は誰のもの?

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 体が自由に動くようになると、今後の事を考えなければならなかった。

 僕が居たのはアリという小さな町だった。そこの傾きかけた教会、身内を亡くした子供達が6人と良い人すぎる神父様の孤児院だった。

 僕がずっといる訳にはいかない事はすぐに分かった。僕は大人だ。大人になると、孤児院からはでていかなければならない。
 そうでなくても、この貧乏を絵に書いたような孤児院には人が1人増えても良いくらいの余裕など、豆粒一つもなかった。
 だから、出て行く前に僕はこの孤児院に恩返しをする事にした。

 荒れた裏庭は借りてきたクワで、耕して畑にする。木の根や大きな岩があったが、怪我の治った僕はかなりの力持ちであったようで、そう苦労なく除ける事が出来た。
 後で知ったのだけれど、無意識に魔法で身体強化をしていたらしい。

 でも1番上手だったのは狩りだった。狐の属性を持つ僕はウサギや鳥くらいなら素手で捕まえる事が出来たのだ。

「に……肉うううう!」

 初めてウサギを仕留めて来た時のフィルの顔は忘れられない。肉は年に1度か2度、小さなウサギを分け合って食べるくらいだったらしい。
 そこに8羽も捕まえて戻ってきたから、お祭り騒ぎだった。町で唯一の肉屋に持って行き、解体をお願いして……教えて貰った。
 小さい町で、つまりは辺りは自然が広がっている。獲物はたくさんいた。そして畑でクワを握るより、町の外で剣や弓を使い、獲物を狩る方が得意だった。

 命を奪う事にためらいがないのは、指摘されてからきづいて驚いた。

 孤児院の子供達が常に腹を空かせていなくなった。近所の人にも受け入れられた。そんな時、薬屋のベル兄さんに呼び出された。

「ティアン、奥へ」

 年齢不詳のお兄さんは秘密の話があると、僕を奥の部屋に連れて行って、鍵をかけた。誰にも聞かせたくない話らしい。
 大袈裟だな、とは思ったが僕はベルお丹生さんに従った。逆らうと物凄く怖いのだ。

「ティアン、お前は……多分誰か偉い人の……奴隷かペットだったんじゃないか?」

「えっ?!そうなの?お兄さん!?」

 僕は目を白黒させた。僕は今は数が少ない狐族の獣人だ。毛並みは黄色く、光の加減によっては金色に見える。
 自分がこんな色合いだったか?と違和感を持っているが、現にそんな色合いなんだからしょうがない。

「ティアン、少し魔力を流すよ」

「え?うわっ!」

 お兄さんが僕のお腹に手を当てると、ふわっと暖かい風が吹いて光が灯る。傷が残ったお腹にポツリポツリと光る点のような文字のようなものが浮かび上がる。

「気分は悪くないかい?」

「うん……大丈夫だけど……」

「壊された呪縛の陣の名残があるね……効力は壊れているみたいだ」

「呪縛……?」

「ああ…あと……まだ生きているのがいくつか……あー…あー…あー。」

 何がどうしたのか聞くのが怖い。お兄さんの顔が哀れみなんだか、ニヤケなんだか分からない。嫌な予感しかしない。

「かなり衝撃だから心して聞いてね……ティアン、君は間違いなく性奴隷だったね?!」

「は!?」

 まったく、記憶がありませんが!

「まず、お腹の中に……浄化の魔法陣がある。これ、物凄い高額なやつでね……これがあると、どうなるか分かる?」

「まさか……」

「そう……うんこが出なくなる」

「うわーーー!やっぱりー!どうして僕だけ出ないのかずっと不思議だったんですー!病気なのか、お腹が物凄い丈夫なのかと思ってたーー!」

「エロい人にいじられたお腹だった訳だ」

 誰だ!まったく、ここ最近ずっと悩んでたのに!会ったら文句言ってやる!遠くのどこかのお城で誰かがくしゃみをしている事を僕は知らない。

「あと、まだお腹に1つ……頭の方に2つある……1番大きいのはやっぱり壊れた奴だね……名残でもこんなに大きな魔法陣を使うなんて。ティアン、君のご主人様は本当に君に執着していたようだよ?」

「ひぇえええー!何それ!怖い!」

 僕は毛の全てが逆立った。落ち着く為に自分の尻尾を抱きしめる。

「僕……記憶、なくても良いかもしれない……」

 ベルお兄さんはそうかもね、と苦笑いをしたが

「でもね、覚えておいて欲しい。それだけ執着していた人だ。きっと君を探しているんじゃないかな…?」

 ぞくり、悪寒が走る。

「探知の魔法はかかってはいないように感じるけど……可能性は高いと思っている」

「ど、どうしよう……僕は…僕は、嫌です……」

「誰だって自由を奪われるのは嫌だよね……なら、君に出来る事は…自分を鍛えて、知識を得ることだと思う。私は君にかけられた魔法陣を壊す事はできない。そこまで強くないからね」

 ベルお兄さんは悲しそうに目を伏せた。

「ティアン。鍛えて、勉強しなさい。それが君の力になる。自分の身は自分で守るんだ」

「…わかりました……ありがとう、兄さん……」

 衝撃が大きすぎた僕は、お礼しか言う事が出来なかった。

「あと…1つ。もし、好きな人ができて、エッチなことする時は気をつけてね!そっちの方もいやらしい感じにされてるから!」

「ぎゃーーーー!」

 記憶を失う前の僕に色々してくれちゃった人を、僕は心底恨んだ。

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