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14 弟よ、酷くないか?

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「レンさん、ちょっとこちらへ来て下さい」
「は、はひ!」

 俺は殿下の真ん前に座らされた。

「レンさんは鍛冶師でしたね?」
「はいっその通りです」
「何故、鍛冶師があんなに強いんでしょうか」
「え……普通ですよね?」
「いいえ、今あなたが一刀で倒したら魔物達は我々が束になって倒せるか倒せないかという程の強さを持っています」
「えっそんなことないです! なあ、リン。普通だよな!」

 騎士さん達の垣根の向こうからリンの声が聞こえる。

「普通だよぉ~兄ちゃんー!」

 ほらぁ、普通だ! 

「訂正しましょう。どうやらあなた達兄弟はとても強いようですね?」
「そんなこと……」
「レンさん?」
「はひゃぁ……っ」

 ま、まずい……殿下が凄く怒ってる気がする! 顔は笑ってるのに目が冷たいっ。

 そこから俺とリンは並べて座らされると根掘り葉掘り、尋問のような取り調べのような大量の質問責めにあってしまった。

「つまり、二人で欲しい素材を集めまくってたら凄く強くなっていた、ということですか」
「……はい……」
「そうです……」

 俺達は……俺は鍛冶師のレベルを上げるのに必死だった。たくさん鍛冶をすればレベルが上がる。それには大量の素材がいる。俺達が住んでいた村にそんな大量に鉱物がある訳じゃない。なら自分で手に入れるしかない。
 それにどの魔物を倒せば素材が出るかわかっていたし、魔物の強さも何となく理解できたし、リンの鑑定魔法も凄く役に立った。だから、二人で森に草原に山に川に出かけて目ぼしい魔物は狩りまくったんだ……。そしたら強くなっていた、らしい。あまり自覚はなかったけど……。

「そしてリンさんは魔法が強いと?」
「そ、そんなことないです。魔法は素材を駄目にしちゃうから、狩るのは大体兄ちゃんに任せてますし!」
「リンがやると辺り一面丸焦げになるし、魔物も焦げ焦げか消滅しちゃうからなー」
「素材が取れない奴は消し炭だって良いじゃない?」
「まあね」

 そうなんだよー。折角薬草摘みに来たのに、火の魔法で草が全部燃えちゃったり、水で全部押し流してみたり……だから俺が倒すことにしてるんだよな。

「なるほどよく分かりました」
「……はぁい……」
「な、なんかすみません……」

 少し殿下の口調が優しくなった気がした! 助かった!

「ところでレンさん?」
「な、何でしょうか!」

「あなた、私に良くくっ付いてたのはこの勇者の鎧が気になってたからというのは本当ですか?」

 あぎゃあああーー! なんだか、なんだか、殿下の視線が今日一番冷たいよーーっ!

「り……リン、助けて……うわっ居ないっ」

 隣で正座していたはずのリンはいつの間にか居なくなってた! どこ行ったの?! お願い、助けてーー!

「レンさん? お答え願えますか」
「あひゃい……」

 俺は知った。普通に怒りを露わにする人より、笑顔のまま怒ってる人の方が何倍も怖いってことを。後、弟は結構俺を見捨てて逃げるってことも……!




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