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11 尻の痛みを忘れるほどの手触り
しおりを挟む「んふふ」
「レンさん?」
「いえっ何でもないです!」
ああ、この手触り、ツルツルでいて手のひらに吸い付くような滑らかさ! ひんやりとした触り心地も大好きな奴。なのに、内部に仕掛けられた付与が生きていて小さく呼吸をしている……堪らない!
「兄ちゃん~」
「はっ?! だ、大丈夫だって!」
「もう、しっかりして……うぎゃっ」
「リンさんこそしっかり捕まっててくださいね」
「はひぃ……お手数かけますぅ~うぎゃっ」
「リン! もっとしっかり騎士のさんにしがみつけ!」
「ひぃーー! 馬、怖いぃーー!」
そう、俺達は馬で移動中なんだ。俺とリンは二年間ずっと村で暮らしていて他の街に行ったことが無かった。だから馬なんて乗ったことがない。でも殿下達はのんびり旅じゃないから移動は早い方がいいってことで馬だったんだ。
「の、乗ったことありません……」
「同じくです……」
思ったよりでかい馬の前で顔を青くしている俺とリンは笑われてしまったが仕方ないじゃないか。
「ではレンさんは私と一緒に乗りましょう。さ、お手をどうぞ」
「ひ、ひええ……申し訳ないです」
何だか優雅な手付きで殿下の後ろに乗せてもらう事になってしまった。リンは別の騎士さんに乗せて貰ってる。そして知らなかったんだけど、馬って凄く高いし、早いし揺れるっていうかお尻が痛いしで思いっきりしがみつかないと怖いって知った。
「しっかりくっ付いて下さいね?」
「はひぃ!」
言われた通り以上にしっかりしがみついていた訳だ。でもそのお陰で殿下の鎧を思う存分抱き締めてかなり嬉しい。やっぱり殿下の鎧は最高だな! すりすり。
「ふふ、レンさん……可愛い人だ」
「え? 何か言いましたか?」
「何でもありませんよ」
ならいいか。俺はまたとても素晴らしい鎧の手触りを楽しませて貰うとしよう!この手触りさえあればお尻の痛みも忘れられる気がする!
そんな感じで俺達は北の端にあるという魔王城目指して旅を続けていた。
「魔物が出ませんね」
「魔物避けのポーションを使ってますからね! その方が安全かと思いまして。必要なかったですか?」
「いえ、無用な戦いは避けるべきですから、助かります」
聞くとどうやら俺達が合流する前はあちこちで魔物と戦ったりしながら進んで来たそうだ。魔物避けのポーションを使わなかったのかな?
「使ってはいましたが、何度も襲撃を受けました。」
「粗悪品でも掴まされました?」
「そんなはずは……王都の信頼のおける道具屋から購入していますよ」
ふむ、道具屋か。俺達がこの世界をゲームとして遊んでいた時、確か道具屋にも魔物避けのポーションは売っていた。物凄く高いけど、効き目が最弱の奴だ。それだからかな? なら薬師であるリンが作ったポーションの方が効き目が良くて当たり前だなあ。それならどんどん進んでしまおう!
リンも自分のポーションが役に立っているって褒めて貰えて鼻高々みたいだしね。
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