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馬車から転がり落ちるように、私達は大きな神殿に駆け寄ります。
「お急ぎを!」「日が落ちます!」
「来た!」
私達を庇うように神官さんが影に立ちはだかります。
「神よ!汝の子を守る盾を我に!」
そんな物が私に通じるか!
あの魔物は腕を一振りするだけで、神官達を薙ぎ払いました。なんて恐ろしい力なのでしょう。
おねぇえさまぁー!ちょうだい!ちょうだいよーー!
私の体が死んでしまったの!だからあなたのからだを!!
「ひっ!」
腕を伸ばされる、ルルが私を必死で引っ張る。
あ、足、足に!足に手がかかる!
助けて!お母様!
何故そう思ったのかは分かりません、でも。
魔物のようなロクサーヌの手は私の足を掴みます。
ずるり
なによ、これぇ!なによお!!
サイズの合っていないツギの当たった靴下と靴が引き抜かれ、ロクサーヌの手に残りました。
素足の私は無傷でなんとか魔法陣の中に逃げ込むことができたのです。
こんなもの!こんな子供騙しの加護で!お母様かしらああああっ
ロクサーヌは靴を靴下を乱暴に捨てました。あのボロの靴下は誰から貰った物だったかしら……貰った時から、穴を繕ってあった靴下。それは心を込めて繕われた物だった?思い出せぬまま、私達はまたロクサーヌらしき魔物と一晩対峙する事になったのです。
レティシアあああ!!!すべてを私に頂戴よおおお!
「囲め!閉じよ!」
これまで守ってばかりだったのに、今夜は神殿が動きました。
「魔女の本体はもう死滅している!あとは精神体を破壊するだけだ!結界を閉じよ!」
人間のくせにぃー!このわたくしを殺すと言うのかぁああ!!レティシアあ!力を!力をおよこしぃ!
恐ろしい恫喝が続きます。でも隣にいるルルの暖かさに、私はなんとか正気でいられるのです。私達はお互いにお互いの体を抱きしめあいながら震えて夜が明けるのを今か今かと待ちわびます。
ああああ!!!!死ぬ死んでしまう!わたくしがぁ!わたくしがああ!
結界に封じられ、登ってきたお日様に焼かれ。多分ロクサーヌであっただろう影はチリになり消えて行きました。
「し、死んだの……?」
「ええ!ええ!良く頑張りました!レティシアお嬢様!ああ!神よ感謝します!」
ルルが私の横で涙を流して喜んでくれますが、全てが現実味がなく、ぼうっとしてしまうのです。
国を追われて、ロクサーヌらしき影がチリになり……もう襲ってこないと確認されてから、私は王宮に呼ばれて全てを聞くことができました。
「ロクサーヌが古の黒魔女の生まれ変わり……?」
「うむ。そなたら一家はなんの落ち度もなかった。ただ、選ばれてしまった、それだけだった」
私の妹として恐ろしい黒魔女の生まれ変わりとしてロクサーヌは生まれました。生まれた時から、邪悪な力を持っていたらしいのです。
そしてロクサーヌは私を使って完全に力を取り戻すつもりだったようでした。
「レティシアの両親はなんとか君を助ける方法を探して……そして徹底的に君を貶めることにした。ロクサーヌを可愛がり、君から遠ざけたんだ。両親の異常な君に対する厳しさはいわば君のためであった……それが正しいことであったか、私は分からない。だが、君はこうして命を繋いでいる。その事実だけは忘れないで欲しい」
あの両親の態度は全部私のため?ロクサーヌの興味を私からそらすための?嘘でしょう?
「君たちの犠牲があって黒魔女という厄災から世界は守られた。人として礼を言わねばならない。ありがとう、そしてすまなかった、レティシア」
何も頭に染み込んで来なかった。
「お急ぎを!」「日が落ちます!」
「来た!」
私達を庇うように神官さんが影に立ちはだかります。
「神よ!汝の子を守る盾を我に!」
そんな物が私に通じるか!
あの魔物は腕を一振りするだけで、神官達を薙ぎ払いました。なんて恐ろしい力なのでしょう。
おねぇえさまぁー!ちょうだい!ちょうだいよーー!
私の体が死んでしまったの!だからあなたのからだを!!
「ひっ!」
腕を伸ばされる、ルルが私を必死で引っ張る。
あ、足、足に!足に手がかかる!
助けて!お母様!
何故そう思ったのかは分かりません、でも。
魔物のようなロクサーヌの手は私の足を掴みます。
ずるり
なによ、これぇ!なによお!!
サイズの合っていないツギの当たった靴下と靴が引き抜かれ、ロクサーヌの手に残りました。
素足の私は無傷でなんとか魔法陣の中に逃げ込むことができたのです。
こんなもの!こんな子供騙しの加護で!お母様かしらああああっ
ロクサーヌは靴を靴下を乱暴に捨てました。あのボロの靴下は誰から貰った物だったかしら……貰った時から、穴を繕ってあった靴下。それは心を込めて繕われた物だった?思い出せぬまま、私達はまたロクサーヌらしき魔物と一晩対峙する事になったのです。
レティシアあああ!!!すべてを私に頂戴よおおお!
「囲め!閉じよ!」
これまで守ってばかりだったのに、今夜は神殿が動きました。
「魔女の本体はもう死滅している!あとは精神体を破壊するだけだ!結界を閉じよ!」
人間のくせにぃー!このわたくしを殺すと言うのかぁああ!!レティシアあ!力を!力をおよこしぃ!
恐ろしい恫喝が続きます。でも隣にいるルルの暖かさに、私はなんとか正気でいられるのです。私達はお互いにお互いの体を抱きしめあいながら震えて夜が明けるのを今か今かと待ちわびます。
ああああ!!!!死ぬ死んでしまう!わたくしがぁ!わたくしがああ!
結界に封じられ、登ってきたお日様に焼かれ。多分ロクサーヌであっただろう影はチリになり消えて行きました。
「し、死んだの……?」
「ええ!ええ!良く頑張りました!レティシアお嬢様!ああ!神よ感謝します!」
ルルが私の横で涙を流して喜んでくれますが、全てが現実味がなく、ぼうっとしてしまうのです。
国を追われて、ロクサーヌらしき影がチリになり……もう襲ってこないと確認されてから、私は王宮に呼ばれて全てを聞くことができました。
「ロクサーヌが古の黒魔女の生まれ変わり……?」
「うむ。そなたら一家はなんの落ち度もなかった。ただ、選ばれてしまった、それだけだった」
私の妹として恐ろしい黒魔女の生まれ変わりとしてロクサーヌは生まれました。生まれた時から、邪悪な力を持っていたらしいのです。
そしてロクサーヌは私を使って完全に力を取り戻すつもりだったようでした。
「レティシアの両親はなんとか君を助ける方法を探して……そして徹底的に君を貶めることにした。ロクサーヌを可愛がり、君から遠ざけたんだ。両親の異常な君に対する厳しさはいわば君のためであった……それが正しいことであったか、私は分からない。だが、君はこうして命を繋いでいる。その事実だけは忘れないで欲しい」
あの両親の態度は全部私のため?ロクサーヌの興味を私からそらすための?嘘でしょう?
「君たちの犠牲があって黒魔女という厄災から世界は守られた。人として礼を言わねばならない。ありがとう、そしてすまなかった、レティシア」
何も頭に染み込んで来なかった。
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