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そして入学へ

71 祭り、始めます

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「私!ミシェルと一緒に魔王を退治しに行くの!魔王の首はマリエル様にあげますね!」

「いりません!」

 魔王の首ってなに!?ともかくミシェル君とピーチェとも打ち解けたユウキさんはそれにあの冒険者ギルドのおっさんヒューイさんも連れて魔王退治の旅に出るらしいのでお見送りに来ていた。

「気を付けて、いつでも戻って来てね?」

「分かりました!お土産期待しててくださいね!」

 魔王の首は要らないから、と何度も念を押したけれど聞いていたかどうか不安だわ。にこにこと手を振りながら元気に出発していくパーティメンバー。「トランプる!」にそんなイベントはなかったけれど私達はここで生きているんだからイベント以外のイベントが起きても不思議じゃないわよね。

「……あのヒューイという男。ヒューバート・ダルセンだよな、マリー」

「え?誰それ」

 アリアに言われたけれどさっぱり分からないわ。えーと?

「スペード家所縁の家でね。ダルセン辺境伯は相当な使い手なんだけれど、自分の事を田舎者だと卑下する奴で
……確か大怪我をして一線を退いていたはずだけれどいつの間にか元気になっていたんだな」

 ……私が治しました……。はぁ、あのヒューイのおっさんが辺境伯……辺境の伯爵?あれ、名前が出てこなかったけれど「トランプる!」の悪役令嬢マリエルの左遷先はそんな感じじゃなかったかしら……?殿下に断罪の上、婚約破棄されて飛ばされる先があのおっさんの嫁か……。知らない人よりマシね。
 結婚する前からおっさんが死んで未亡人なんてイヤだからおっさんの無事も祈っておこう。ミシェル君やピーチェ、ユウキさんの半分くらいの気合で良いかしらね、なんか殺しても死ななそうな顔してるし。結婚前から死んでいたら未亡人にはならないなんて言う世の中の常識はさておきとして、無事で楽しく旅が出来れば良いなと思う。


「そろそろ……船、かな」

 本格的な季節イベントの再現に向けてやらなきゃいけない事が多すぎるわ。分かるわよね、季節イベント。どうしてその文化がこの世界にあるの!なんて考えちゃ駄目な奴。だって見たいんだもの、それが何よりの力こそパワー!夏の浴衣、10月のハロウィン、12月のサンタ!そのためにはこの国だけの文化じゃ補いきれないのよ!他国に乗り出す準備が必要なの、分かる!?分かるわよね!

「大型……ガレー船って言ったかしら……。帆と、櫂で……でもあれって奴隷を……ダメ、奴隷絶対駄目!となると、魔法かしらね……」

 私がブツブツ呟いているのを家の皆は「また何か面白そうなことを考えている」って暖かく見守ってくれてたみたい。気が付かなかったけど。まあ……それより先に。

「春のフラワーフェアリアフェスタ……滾る……」

 春の妖精祭り。今この「トランプる!」にはそんなのないわ。ないなら作れば良いじゃない!春の暖かい陽光を浴びて白やピンク、イエローなんかのフワフワの夢カワ~な衣装を身につけた推し達……たまらん、あの衣装コンプするのに何回ガチャで天井回したか覚えてないわね……フフ、フフフ……!
 イケメン達がお花飾りをつけて~馬鹿みたいに似合うテオドールとか

「こんなの私が似合うわけないだろう」

 ってキレながら照れちゃうデュカスとか……はあああ!そして闇落ちお兄様がたった一つ花を愛でる貴重スチル……ぐへへ……さあ、あれを全て3Dで我が前に顕現させたまえ!!!

「お祭りってどうやったら作れるのかしら?」

「規模が大きいね、マリエル」

 流石にお兄様からツッコミが来たわ。



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