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そして入学へ

69 冒険者の服を作りたいのですけれど

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 ケイティシルクと名付けられた絹糸と絹織物が紡績業界に颯爽と現れたのは学園の夏の長期休暇が終わって暫くたってからよ。

「んーーっ!このブラウス凄く良いです!マリエル様!」

「ふふ、そうね。さらっとした着心地で通気性もあるし、織り方によっては華美過ぎない光沢が学生でも似合うし…‥流石、ケイティシルクだわあ~」

「なんでマリエルシルクにしないのよ!手柄だけ私が貰ったみたいで気持ち悪いわ!」

 ちょっとツリ目でケイトリンに睨まれちゃったけど、だってケイトリンのダイヤ領にいたイモムシから取れたんだもん!今年の夏はとってもハードだったわ……。

 ケイトリンに約束を取り付けて、何故か「私も行きたいです!」と手を上げたユウキさんも連れて素敵な糸探しの旅行に行った訳よ。何故かクイーン全員やキング達までいて大旅行になっちゃったけれど、山に入って巨大なイモムシちゃんと出会ったり、その子が食べる葉っぱを研究したり、意外と温和なイモムシちゃんで可愛がると懐いたり……とても大変だったわ!

「きゅぅ~きゅぅ~~~!」

「いもこ!いもお!元気で暮らすのよ~~~!」

 ダイヤ領から帰ってくるときはイモムシのいもこといもおが悲しそうに鳴いていたわね……。またお休みの日には会いに行ってあげなくちゃ。

「最初あり得ないくらい気持ち悪いと思ったけれど、意外と慣れたらカワイイのよね。私もピンクちゃんにまた会いたいわ」

 リズもイモムシを一匹可愛がっていて、名前がピンクちゃん。不思議な事にピンクちゃんの紡ぐ糸はうっすらとピンクがかっていて、リズのブラウスは少しだけシルキーピンクだったりする。

「本当だな、色も若干違うのも不思議だ」

 アリアのブラウスはうっすらと水色なのよね。私のは少し緑でケイトリンはクリーム色。不思議~。そしてユウキさんは真っ白だったの。

「育ててもらっている農家の人達によると白ばかりだというけれど、この辺は研究が必要みたいね」

 手触りも良いし舞台映えもするし軽くて丈夫なんて夢のような布が手に入ったのよ!探せばあるものねぇ!

「これで完璧な……」

 冒険者の服が作れるわ!軽い、丈夫、更に破れにくいし汚れにくい!ユウキさんの冒険者デビューの晴れ着、このマリエルが作って見せましょうぞ!フーハハハ!!

「ウェディングドレスが作れるね!マリエル」

「ん?」

 リズがにこにこと語尾に音符が付きそうなほどご機嫌に言う言葉を聞き返した。へ?ドレス?

「ウェディングドレス?なんで?」

「え?結婚式で着るんでしょう?これ、凄くいいから絶対流行るだろうし、染色もしやすいからドレスを仕立てても最高だしって……あれ?違うの?」

「違う……けど?」

「えっ?違うんですか!?マリエル様」

 な、なんでユウキさんまでびっくりするのかな?

「てっきりその為だと思ってたのに……違うのか、マリエル」

「嘘でしょ?もう何パターンかの試作品発注したわよ、マリエル!」

 アリアもケイトリンも何を言ってるの……私はこれでユウキさんのデビュー服を作るのよ……?

「え……?」

 やだ~何を言ってるのかしら?意味が分からないんだけど……?



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