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そして入学へ

66 どうした?ヒロイン

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「ど、どうですか……」

「……良くここまでできたね、ユウキ。これならば聖女と名乗っても問題ないじゃろう」

「や、やったぁ……!」

 とうとうユウキさんはお爺ちゃん教皇様から聖女として認められた。回復魔法も一通り使え、長い時間祈る事も出来るようになっていた。

「何に祈ればいいか分からなかったけれど、なんでもいいって事をマリエル様に教えてもらったの。昨日食べたケーキが美味しかったら、その材料を作った全てに感謝すればいいって。かっこいい人がいたら、かっこいい人に出会えた出会いに感謝だって……そしたら楽しくなっちゃって!いくらでも神様に祈れるようになったのよ!」

「そ、そんな感じなの?」

「そうだよ~!」

 ユウキさんが祈ると「トランプる!」のゲームのように白い蝶のエフェクトがわあっとでて本当にきれい。エフェクトって言うとアレなんだけど……神聖力が見えるって事ね。ちなみに私はどうも桜の花びらが散るようらしい……自分で見た事がないから分からないけれど。きれいだって褒められちゃうとますます調子に乗ってしまうわ!
 学園でも最低だった点数もどんどん上がってきている。何せユウキさんにつきっきりで冷血のユリアンナ副学長が予習復習を手伝っているのだ。

「聞いてくださいっユリアンナ教授!」

「素晴らしい、素晴らしいわ!ユウキさん!」

 防音が聞いたはずの音楽室でユウキさんが歌を歌っている。三つ葉塚歌劇団から借りた楽譜で新作歌劇の「義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります~義妹達は華麗に笑う」の一節だ。意地悪だと思った義母が実は裏で大活躍し、虐げられていた娘を救ってしまう場面転換の激しさがウリなの。
 それを高らかに歌い上げ、更に回復の魔法を歌に乗せるという新しい技法を見い出したのよ。凄い!

 ユリアンナ教授は素晴らしい素晴らしいと絶賛するし、聞くだけでなんだか元気が出てくるし、かなり広範囲の怪我人を癒す事ができるの。

「マリエル様もできるのではないですか!」

「ご、ごめんなさい……私、歌は苦手で……」

 滅茶苦茶音痴だったの……とてもつらいわ。鼻歌でも草木が萎れる勢いよ……。

「これなら……聖女ならAクラスの転入も認められるし、ルドルフ様の婚約者になる事も出来るわね」

 うん、「トランプる!」の設定に合った聖女になったと思う。中々大変だったけれど、ユウキさんはやればできる子だったんだもん。

「マリエル様」

 どうしたのかしら?ユウキさんはまっすぐ私を見ている。そうね今、私は王太子ルドルフ様の婚約者ですもの。その私を婚約者の座から引き釣りおろして自分がそこにつく為に、気合を入れて決別する必要があるもんね。
 良いのよ、私は「トランプる!」の世界を愛しているもの。その愛に準じる事に何の抵抗もないわ。それに離れていたって課金は出来るもん。皆に幸せでいてもらいたいし、このユウキさんならきっと殿下も好きになってくれると思うのよ。
 私はどこか遠くの領地の隅から輝かしい推し達を見守るわ……そろそろ草ドレスの発注をしておかなくちゃ……。

「私、Aクラスには移りません。Bクラスでたくさんお友達が出来ました。Bクラスが好きなんです」

「あら……そう、なの?ルドルフ様と同じクラスの方が仲良くなれるのではないですか?」

「あと、王太子殿下の婚約者は目指しません。私にはあのマナー本を覚えることが出来ない……ううん、覚える気がおきません!」

 あ、あれぇ?ど、どうした、どうしたヒロイン!!??

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