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そして入学へ

55 困った聖女

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「ルドルフさまぁ~」

「またあなたですか。用もないのに2年生の教室へ来ないでください。それと呼び方には注意してくださいと先ほども申し上げました」

「えーーー!だって私、ルドルフ様とお話がしたいの!」

「教室へお戻りください。ユウキさん」

 どうやら聖女ユウキのルドルフ殿下への猛烈なアピールが始まったみたいなんだけど、そのやり方はどうかなぁ……。

「……なんですの、あれ」

「はしたない以前の問題ね」

「あれは男子でも引くな」

 所かまわず突撃して殿下の護衛のエディソン君(22)に阻まれている。少し見かけた事があるのだけれど、殿下は涼しい顔で知らんぷり……しているように見えて、内心かなり怒ってイライラしているようだわ。なにせずーーっと●Recしてきた私なら些細な殿下の表情や仕草でまるっとお見通しなのだ!
 それにしても聖女ユウキ(デフォ名ユウキだったよ!)さんはちょっと酷い。ゲーム「トランプる!」の学園は上下関係がない事を謳い文句にしていたけれど、ここは違うの。クラスが高位貴族と下位貴族で別れるように、上下関係に気を付けるお付き合いを学ぶ場になっているのよ。
 勿論上位貴族でも使えない子とかは振り落とされるし、下位貴族でも素晴らしい能力の持ち主なら引き抜く。そういう観察の場でもあるの……だからこの場合子爵家預かりのユウキさんはいくら聖女の資格があったとしても、下位貴族扱い。

 これが聖女の資格ではなくて完全に神殿から認められた聖女であって実績があれば話はちょっと変わってくる。
 実績を積んだ聖女であればどんな出身でも王族と同じ扱いになる。ゲームの聖女はそうなんだけど、どうもこの「ユウキさん」はあまり「修行パート」が好きじゃないみたい……。

 困った事にユウキさんが殿下に敬称もなしで直接話しかけるのはマナー違反。エディソン君(22)に何度注意しても直らないのは「見込みナシ」の烙印を押されちゃう可能性も……。ええええ!ヒロイン大丈夫なの??

「まあ……そんな事より」

 大事な推しを苛立たせるのはヒロインでも許しがたいわねぇ。はぁ、私が注意しないといけない所よね。だって今の殿下の婚約者は私なんだもの……やだなぁ悪役令嬢か、上手に出来るかなぁ?今日は早く帰って推し達の記録映像を円盤に編集する作業に没頭したいのに!思わずため息が漏れちゃうわ。


「ユウキさん、あなたのなさりようは目に余りますわ。もう少し規律を守っていただかないと学園の風紀が乱れる事をお忘れなく」

「え……?」

「異世界から来られたとかで、こちらのマナーや礼儀のお詳しくないのは存じておりますが、最低限の事は覚えてください。このままでは学園を去る事になりますよ?」

「や、やだ……怖いッ!こわいーーー!誰か助けてぇー!ルドルフ様ー!ヴィンセント様ぁーー!!!」

「え……?な、なにを言って……!?」

「怖いー!あの人が私を脅してくるんです!誰か助けてー!殺されるーーー!!」

 そんな中大騒ぎが起こったのよ。あのユウキさん、声がめちゃめちゃ大きくて学園中に彼女の「助けて」「殺される」って響き渡ったの……。「トランプる!」は推理とサスペンスゲームじゃないのよ……?

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