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20 美穂のハムスターは銀次(クロ目線)

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「あーん、九郎ちゃあん、何してんのよ。しゃーないわねぇ、私が新しいスマホ買ってあげるわぁ」

「あ、ああ。ありがとう美穂ちゃん」

 そうは言ったが、俺は心ここに在らずだった。


 俺は、あのネズミ野郎に酷い事をしたのか?!俺はあのネズミ野郎を虐めたのか?!?!
 なんて事だ!いじめなんて最悪だ!俺は!俺は何て事を!!

「うわぁ……俺は最低な猫だぁ……」

 かなり酔っ払っている美穂ちゃんはゲラゲラ笑って俺の背中をバンバン叩いた。

「あはは!九郎ちゃんったら何言ってんのよぉー!もー大丈夫よぉ~」

「でも美穂ちゃん……虐めなんて最低だ……俺、いっつもホームでじーさんとばーさんにいじめは駄目だって言ってんのに……。俺、もうみんなに顔向け出来ない」

「九郎ちゃん!大丈夫よ!人間はそんなに弱くないわ!ハムスターじゃないんだし!」

 美穂ちゃんのセリフが俺に突き刺さる!

「は、はむ!ハムスターあ?!?!」

「そうよ、九郎ちゃん!ハムスターならストレスに弱いから死んじゃうけど、人間は意外と強いのよ!」

 俺はがっくりと膝をついてしまう。

「は、ハムスターは……し、死ぬ、のか?!」

「……死ぬ、わね。私が小学生の頃可愛いがってたジャンガリアンの銀次も……うっ……」

 俺は!俺はなんて取り返しのつかない事を!!

「み、美穂ちゃん!お、俺!俺どうしたら?!」

「うう、銀次……銀次ーー!うわーーん!」

「美穂ちゃんーーー!」

 俺たちは手を取り合って泣いてしまった。


「九郎のいるテーブルはいつも賑やかで楽しそうですね」

 店のみんなに呆れられるのはいつもの事だった。

 
 そんなこんなで朝帰りすると、慌てて出かける誠子にばったり出くわした。手にはケースを持っている。
 ま、まさかネズミ野郎?!

「それ、ハムスター?」

 俺はなるべく冷静に聞いた。

「え?ああ、そうなんだ。すまんがこいつを病院に連れて行かねばならなくて。またな……猫村さん」

 び!び!び!病院!!病院って言ったか!

「え?!あ、そ、そうか?いってらっしゃい」

 俺は慌てて部屋に飛び込むと、がっくり項垂れた。

「俺は!俺はなんて最低野郎なんだーーーーー!!」

 いても立ってもいられなくなり、ネズミ野郎にメッセージを送る。

おい 大丈夫か しぬな 悪かった 返事 ごめん うー

 俺はネズミ野郎が誠子に抱えられて普通のハムスターとして病院に連れて行かれたのを見ていたのに、あいつのスマホにメッセージを送り……既読がつかないのに絶望していた……。

 暗い想像ばかりがぐるぐる回る。朝比奈のばーさんが死んだ時、猫村のばーさんが死んだ時。ホームのじーさんが死んだ時……。

「ううー!ごめん!ごめんよー!ネズミ野郎ぉーー!」

 俺は悲しくて割れたスマホを抱えてべそべそ泣いていた。

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