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護るべきもの

35**寿司食いねぇ!**

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「開けろ」「はっ!」

 扉の外から声が聞こえて、眠りから覚める。やっぱり来たか…このマグロ好きめ。来なくていい、帰れ帰れ!という私の心の祈りは届かない。

 キイと扉が開き、ランプを持った王子が入ってくる。護衛の騎士も2人ついてくる。

「起きているか?」

「ええ、残念ながら目が覚めました」

 ぎしり、とベッドの上で目が合う。
今日はマグロでなくてすいません。

「昼間の返事を聞きたい」

「お断り致します」

 なぜ、私が嫁にならねばならんのだ。なんのメリットもないじゃないか。

「ふむ…断るのか。ならば断れないようにするしかないな?」

 護衛の騎士が動く。

「なに…を…!」

 私の手を取り、一度手枷を外すと、右手はベッドの右端に、左手は左端にくくりつけられる。自分の体も満足に支えられてないのだ、抵抗できない。
 なんだよ、コレ!やる気満々かよ!

「ねぇ、コレがなんだか分かるかい?」

 目の前でとぷんと揺れる小瓶。中はオレンジの液体が入っている。まさか、いやあり得る…?

「分かりませんが…」

 ソランジェが見せてくれたものに似ている。ソランジェのものより濁ってみえるが…嫌な感じしかしない。 

「ここに」

私の腹を楽しそうに突く。

「私の子供が出来れば、妻になってくれるだろう?」

「い、嫌ですっ!」

「高いモノなのだよ?わがままを言わずにしっかり味わいなさい」

「いやです!いや!」

 ガシャガシャと鎖の音が大きい。

「押さえろ」

「やめろ!」

「これは直接入れるらしい。動くなよ?こぼれたらもったいだろう?」

「ひっ!」

 3人がかりで押さえつけられる。孔から、とろりとしたものが流れ込む。気持ちが悪い。それは体の熱で溶け、吸収されていく。
 
「あ。ああ、あああ…!」

 ナカが熱い。何かが迫り上がってくる。シたい、ヤリたい!

「下がってて良い」

 2人の騎士は軽く礼をして、扉の外に出て行った。ちらりと私に哀れんだ目を向けてから。

「良く効く薬で助かるよ、効きすぎな気もするが」

「はっ…くっ…」

 これはきつい。薬や毒に強い耐性を持つ私にこれほど効くなんて、売り出してはまずいレベルだ。どんな闇錬金術師から手に入れたんだ?
 動悸が止まらない、息が苦しくて頭がくらくらする。二日酔いのような吐き気もする。

「…ずいぶんと辛そうだが、」

「…人には…使わない方ががいいでしょう…ね。死にます、よ」

 つい先日食らった毒のレベルに近い。脂汗が出る。解毒剤の類いがあるなら、お願いしたい。

「…そうか、それは…すまないね」

 解毒剤をくれないなら放っておいて欲しいのだが、ベッドに上がってくるこの王子さまを誰か成敗してくれ。

「なら、触らないで…」

「そうも行くまい?」

 こいつ、やだーーー!

「ひっ!やめっ…!」

「気持ち良くなった方が楽なんじゃないか…?ふふふ」

 ダメだこいつ…!早く何とかしてーー!だれかー!誰もいねぇーー!

「ほら、足を開いて…」

「いや、だ!触るなぁ…!」

 口だけは自由に動くが、どこもかしこも言うことを聞かない。
 苦もなく開かれ、逃げ出す力もでない。

「中も良さそうだな?」

 くちゅっと音がして、ゆっくり押し広げられる。ゆっくり、ゆっくり中に入ってくるのを止めることができない。

「や、あ、あ!ああ、ひっ」

「ふ、ふふ、やっぱりいいんじゃないか?」

 全てを飲み込まされ、肩で息をする。内臓を押されて吐き気が増すが、ろくな食事を取っていないので何とか堪える。

「う、うぅ…ふ、きもち、わる…い」

「いいの間違いだろう?」

「ひゃんっ!」

 少し中をこすられただけで、声が漏れた。もう、耐えられない。負担がすごい分効き目も恐ろしい。

「あ、あぁ…ん…らめぇ…!」

「最初から素直に啼いていれば良い。」

「あん!あん!いー…イくぅ!あっあっあっ!」

「良いのか?中で出したらできるかもしれないぞ…?」

 だめ!ここでやめないで。もうちょっとで気持ち良くなれるのに!こんなお預けは酷い。

「良い!良いのぉ!ナカに、ちょうだい!イきたいーー!」

「可愛い子を頼むよ?」

「あ、あ、あ!ああああーーっ!」

 背中をのけぞらせ、ビクビクと痙攣する。そのまま気を失った。

「リィン?おい、大丈夫か?」

「…え…?あれ、私…?」

 頬を叩かれて意識が浮上した。目の前にクソ王子の顔があったので、何が起こったか、理解できた。

 ああ、トんで落ちたのか。

「やはり、起きている時の方が楽しいね。寝ている時は扱い易いけど」

「最低ですね……」

 言わざるを得ないー!!
さも面白そうにくくっと笑って

「自覚はある」

 しかし、悪びれずに言う。かっこよくて、金があって、地位が高ければ何やっても許されると思ったら大間違いだぞ!コラァ!

「では、私は戻るよ。しかし、あの薬あんなにキツい物だとは知らなかったよ。起きている時に使ったのは初めてだしね?」

「⁈ それは、どういう…事ですか…?」

 起きている時に使ったのは初めて、と言うとこは意識なく眠っていた時は…?

「君が連れて来られてから、ずっとね。意識がなかなか戻らなかったのは、薬のせいもあったのかなぁ?」

「な……‼︎」

 7日、意識が戻らなかったと聞いた。その間、ずっと仕込まれ続けていたと。流石に顔が青ざめた。ソランジェがわざわざ特別に調合したものではない。

「出来てると良いねぇ?体に障るといけないから、無茶はしないでおくれよ?可愛い私の銀月殿」

 クソ王子はまた私の腹を軽く突いて部屋を出て行った。クソ!出来ていてたまるか!元々の法則をねじ曲げる薬なのだから、成功率は低い。それに賭けるしかない。
 ソランジェのようなスーパーマッド錬金術師がそこらにほいほいいてはたまったものではない。

 王子と入れ替わりにマリーが入ってくる。手に湯の入った桶とタオルを持っている。

「お体を清めさせていただきます。どうかそのままで」

「分かりました……」

 静かに繋がれた手枷を外す。私もマリーも無言だ。何か喋りたい気分でもないし。
 マリーは手際良く私の体を拭き、夜具を取り替える。暖かいタオルを渡してくれて、

「宜しければ私がお世話いたしますが…」

「いえ、自分でします……」

 視線が下半身の方を向いていたので、いたたまれない。

「その、王子は毎日…?」

「はい」

「いつも、あなたが?」

「はい……」

 あー…今更だった…。なんかすいません…私のせいじゃないけど…。

「あの、良ければもう一枚着るものを貰いたいのですが……」

 寒いので…主に心が…だが、顔色も悪いだろう。
 マリーは物凄く気の毒そうな顔をして、少し待っていてください、と探しに行ってくれた。
 手枷をつけるの忘れてますよ…。まぁそのままおとなしく待ちますが。

「お待たせいたしました」

 少し暖かそうな上着と肩掛けを着せてくれる。自由になっていた両手を少し笑いながら見せると、あっ!と大きく口を開けたので、それをみて少し心が和んだ。
 マリーはまた手枷をつけ、

「お休みなさいませ。今日はこの後は王子様は参られませんよ」

 と、慰めてくれた。

「ありがとう、おやすみなさい」

 ランプを持って、扉を閉める。ガチャリと鍵がかかる音。マリーが鍵を扉の前の兵士に預ける音。

「王子様のなさりようは…」

「我々は何も見なかったふりをするしか…」

 愚痴を零す声が聞こえる。


そして、私はするりと手枷を外す。




























 








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