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110 わかりみだよ、分かりみ
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「やあ!私の名前はリキュシュ。みんなリュキって呼ぶよ」
「私はマシェッツ。マシェだ。君のことはヴィシュで良いかな?」
「ひい!」
拙者達はヴィシュル王の私室に乗り込んでいた。これには訳がある。
「せっかく暗雲が去ったのに新王がアレでは」
「全王も愚王であったが、その上がいたとは」
「何をするにもなにも決まらぬ!早くアレを何とかしてくれ! 」
「と、父上に泣きつかれまして」
「私もです」
ヴィシュル王の決断力のなさに仕方がなく王都に残ったオル団長の父上とレイ殿の父上はほとほと困り果てているのだそうだ。
まず、なにをするにもびくびく、おどおど。人と話をするにもボソボソと声が小さく何を言っているのか聞き取れない。気がつくと、その場から消えていて、部屋に閉じこもっている。
部屋から会議へ引き摺り出して来るのも一苦労。急いで復興策を練らねばならないのに、何も決まらないんだそう。
なのでマシェと二人で鼻息を荒くしたのだ。
「旦那様が困ってるならば助けてあげるのがイケてる伴侶の勤めだろう、な!マシェ」
「ござるござる!そうでござるよ!兄者ぁ!」
と、いう訳で我らは両手いっぱいに荷物を持って凸したのだ!!
それもあるんだが……ヴィシュル王の噂は、死んでこの世界に来る前の我らそっくりで放っておけなかった。
「我らは二人だった。だから焦りや苛立ちはあっても孤独はそれなりに軽減されていた。しかしヴィシュル王は一人だ」
「一人は辛い。兄者に知り合う前は辛かった……」
「分かりみが深い」
だから、我らはお節介を焼きに来たのだ。
「では絨毯を引きます!」
「応!」
「靴を脱いで上がってくだされ!さあ、ピザとコーラでござる!やはり自宅に集まった時はこれでござろう!」
「ござるござる!この為にピザ窯を作ったでござる!伸びるチーズも作ったでござるよーーー!」
「ひ」
「ひ」と「ひい」しか言わないヴィシュル王だったけれど、絨毯の上に座らせて、コーラの入ったコップと熱々のピザを目の前に置くと興味は示した。
「チーズが伸びるうちに食べるでござる」
「冷めたらガッカリでござるよー」
マシェと二人で手掴みで食べるところを見せると、恐る恐る手を伸ばし口に運んだ。
「熱い」
「冷めると不味いでござる」
「……おいしぃ」
「やけどする前にコーラでござる。これが技でござるよ」
「……わざ」
「うむ」
そうしてだらだらと食べながら、お話を始めた。
「ヴィシュ殿の趣味はなんでござるか?」
「実は、錠前を……」
消え入りそうな声。自分の趣味を披露して失望される瞬間、恐ろしくて恐ろしくて泣きたくなるあれだ。
「あっ!わかるー!やはりガチャっていう瞬間で?」
「それとも形状でござろうか?!」
「あ、あの……ピッタリはまる瞬間が」
「「わかりみぃ~~~!」」
話の腰を折らぬよう、話を奪わぬよう、ヴィシュ殿の語りを傾聴する。
「そして、その時!無くしていたと思っていた鍵が合って開いたんですござるよ!」
「アツいー!激アツでござるーー! 」
「それはテンション上がるでごさるな!!」
「そうでござろう!そうでござろう!!」
ヴィシュ殿の話は中々に面白く、我々は酒もないのに明け方まで盛り上がり、そのまま絨毯の上でごろ寝してしまった。
「うにゃ……」
「リュキ、迎えにきましたよ」
「わぁい~レイどのぉ、抱っこ~」
「もちろんですよ」
「マシェ、私です」
「オル殿ぉ、何だか寒いですぅあっためてぇ」
「では一緒に寝ましょうね」
「わぁい」
ヴィシュ殿はお付きの侍従殿がベッドに入れてくれた。
我々はとても仲良くなれたと思う。
「私はマシェッツ。マシェだ。君のことはヴィシュで良いかな?」
「ひい!」
拙者達はヴィシュル王の私室に乗り込んでいた。これには訳がある。
「せっかく暗雲が去ったのに新王がアレでは」
「全王も愚王であったが、その上がいたとは」
「何をするにもなにも決まらぬ!早くアレを何とかしてくれ! 」
「と、父上に泣きつかれまして」
「私もです」
ヴィシュル王の決断力のなさに仕方がなく王都に残ったオル団長の父上とレイ殿の父上はほとほと困り果てているのだそうだ。
まず、なにをするにもびくびく、おどおど。人と話をするにもボソボソと声が小さく何を言っているのか聞き取れない。気がつくと、その場から消えていて、部屋に閉じこもっている。
部屋から会議へ引き摺り出して来るのも一苦労。急いで復興策を練らねばならないのに、何も決まらないんだそう。
なのでマシェと二人で鼻息を荒くしたのだ。
「旦那様が困ってるならば助けてあげるのがイケてる伴侶の勤めだろう、な!マシェ」
「ござるござる!そうでござるよ!兄者ぁ!」
と、いう訳で我らは両手いっぱいに荷物を持って凸したのだ!!
それもあるんだが……ヴィシュル王の噂は、死んでこの世界に来る前の我らそっくりで放っておけなかった。
「我らは二人だった。だから焦りや苛立ちはあっても孤独はそれなりに軽減されていた。しかしヴィシュル王は一人だ」
「一人は辛い。兄者に知り合う前は辛かった……」
「分かりみが深い」
だから、我らはお節介を焼きに来たのだ。
「では絨毯を引きます!」
「応!」
「靴を脱いで上がってくだされ!さあ、ピザとコーラでござる!やはり自宅に集まった時はこれでござろう!」
「ござるござる!この為にピザ窯を作ったでござる!伸びるチーズも作ったでござるよーーー!」
「ひ」
「ひ」と「ひい」しか言わないヴィシュル王だったけれど、絨毯の上に座らせて、コーラの入ったコップと熱々のピザを目の前に置くと興味は示した。
「チーズが伸びるうちに食べるでござる」
「冷めたらガッカリでござるよー」
マシェと二人で手掴みで食べるところを見せると、恐る恐る手を伸ばし口に運んだ。
「熱い」
「冷めると不味いでござる」
「……おいしぃ」
「やけどする前にコーラでござる。これが技でござるよ」
「……わざ」
「うむ」
そうしてだらだらと食べながら、お話を始めた。
「ヴィシュ殿の趣味はなんでござるか?」
「実は、錠前を……」
消え入りそうな声。自分の趣味を披露して失望される瞬間、恐ろしくて恐ろしくて泣きたくなるあれだ。
「あっ!わかるー!やはりガチャっていう瞬間で?」
「それとも形状でござろうか?!」
「あ、あの……ピッタリはまる瞬間が」
「「わかりみぃ~~~!」」
話の腰を折らぬよう、話を奪わぬよう、ヴィシュ殿の語りを傾聴する。
「そして、その時!無くしていたと思っていた鍵が合って開いたんですござるよ!」
「アツいー!激アツでござるーー! 」
「それはテンション上がるでごさるな!!」
「そうでござろう!そうでござろう!!」
ヴィシュ殿の話は中々に面白く、我々は酒もないのに明け方まで盛り上がり、そのまま絨毯の上でごろ寝してしまった。
「うにゃ……」
「リュキ、迎えにきましたよ」
「わぁい~レイどのぉ、抱っこ~」
「もちろんですよ」
「マシェ、私です」
「オル殿ぉ、何だか寒いですぅあっためてぇ」
「では一緒に寝ましょうね」
「わぁい」
ヴィシュ殿はお付きの侍従殿がベッドに入れてくれた。
我々はとても仲良くなれたと思う。
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