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107 ホラゲー!
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その日、地上に建っている修道院の窓から外をぼーっと眺めていたのはノースで、ソレを見た時にこう思ったらしい。
「ああ、越冬に失敗した熊が起き出しちゃったんだな。あいつらは凶暴だからなあ~」
でもよく見ると熊じゃなかった。恐怖が全身を駆け巡り、一瞬硬直したのでドアにカギをかけるのが遅れたようだ、それが命取り。
「コパアアアアアア……」
「キャーーーーー!?」
当然、後者の女の子みたいな悲鳴がノースのもので熊だと思ったのは魔物でも妖怪でもなくてスカーレット王女だったんだ……。
「男を出せ……オルフェアか……レイクリフがいるだろう……」
「ひ、ヒイイイ!いません、いません!いるわけがありませんんんんーー!」
ノースは一応修道士の恰好をしていたし、どうもスカーレット王女の印象に残っていなかったらしく、元騎士だということがバレなかったらしい。
「何か……食べるものを出せ!」
「ひッ」
縮み上がりながらも、このハウルフォーン修道院の設定を思い出したらしい。「極寒の一番厳しい修道院。何人も人死にが出る北の厳しい所」だから厳しく行ってもいいはずだと。
「た、食べるものもほとんどないのはお判りでしょう?この雪です、ここは閉ざされた地、乾いたパンが数個あるだけ」
「寄越せえええええ!!!」
「ヒイイイイイ!」
何にも使っていない礼拝堂に何にも使っていない食堂。何せ私達は秘密の入り口から地下の街で快適に生活中だから上の建物は何も使う必要がない。でも一応と思って食堂に数個、固いパンを置いておいたのが良かったらしい。そのパンにそのままかぶりついているスカーレット王女を放置してノースは逃げ帰ってきた。
「たたたたたすけてえええええええ!上に、上にヤヴァイものが住み着きましたあああああ!」
「ヤヴァイもの?」
流石に復唱した。そして話を聞くと本当にヤヴァイもので全員ゾッとした。
「え……あの赤女がオル団長とレイ殿を追って……この地まで……?」
「怖い……今年最大のホラー事件ですよ兄者……わ、私怖くて夜に一人でおトイレに行けないかも」
「マシェ、私が一緒に行ってあげましょうね」
「オル殿ぉ~~~~!」
何でそこで抱き合ってるんだろ?でもそんな恐怖生物が頭上に住み着いているなんて確かに怖すぎる。
「怖い……」
「リュキ、大丈夫ですよ」
「レイ殿ぉ……」
いやこれは抱き着きでもしなければ怖くておしっこちびっちゃう。
「と、とりあえずこの地下への扉へはあの巨体では近づけないと思いますが、もっと厳重な守りにしましょう」
「うん……あの修道院からここの地下へ降りてくる道は一つしかないから、そこさえバレなきゃ何とかなる」
なるよね……?
「兄者、監視カメラが必要ではないですか?行動を監視しないと恐怖で寝れないかも」
「あー知ってる。そう言うタイプのホラゲーね、分かるよわかるー」
分かるかぁ!!
「き、きっとココには何もないと分かればそのうち山の洞穴に帰って行きますよ、ね?」
「一応、アレは人間ではなかったっけ」
「熊と一緒にするな!熊が可哀想だろう!熊はもっと可愛いぞ!」
「確かに!」
我々は新しいホラーゲームの扉を開けてしまったようだった。
「ああ、越冬に失敗した熊が起き出しちゃったんだな。あいつらは凶暴だからなあ~」
でもよく見ると熊じゃなかった。恐怖が全身を駆け巡り、一瞬硬直したのでドアにカギをかけるのが遅れたようだ、それが命取り。
「コパアアアアアア……」
「キャーーーーー!?」
当然、後者の女の子みたいな悲鳴がノースのもので熊だと思ったのは魔物でも妖怪でもなくてスカーレット王女だったんだ……。
「男を出せ……オルフェアか……レイクリフがいるだろう……」
「ひ、ヒイイイ!いません、いません!いるわけがありませんんんんーー!」
ノースは一応修道士の恰好をしていたし、どうもスカーレット王女の印象に残っていなかったらしく、元騎士だということがバレなかったらしい。
「何か……食べるものを出せ!」
「ひッ」
縮み上がりながらも、このハウルフォーン修道院の設定を思い出したらしい。「極寒の一番厳しい修道院。何人も人死にが出る北の厳しい所」だから厳しく行ってもいいはずだと。
「た、食べるものもほとんどないのはお判りでしょう?この雪です、ここは閉ざされた地、乾いたパンが数個あるだけ」
「寄越せえええええ!!!」
「ヒイイイイイ!」
何にも使っていない礼拝堂に何にも使っていない食堂。何せ私達は秘密の入り口から地下の街で快適に生活中だから上の建物は何も使う必要がない。でも一応と思って食堂に数個、固いパンを置いておいたのが良かったらしい。そのパンにそのままかぶりついているスカーレット王女を放置してノースは逃げ帰ってきた。
「たたたたたすけてえええええええ!上に、上にヤヴァイものが住み着きましたあああああ!」
「ヤヴァイもの?」
流石に復唱した。そして話を聞くと本当にヤヴァイもので全員ゾッとした。
「え……あの赤女がオル団長とレイ殿を追って……この地まで……?」
「怖い……今年最大のホラー事件ですよ兄者……わ、私怖くて夜に一人でおトイレに行けないかも」
「マシェ、私が一緒に行ってあげましょうね」
「オル殿ぉ~~~~!」
何でそこで抱き合ってるんだろ?でもそんな恐怖生物が頭上に住み着いているなんて確かに怖すぎる。
「怖い……」
「リュキ、大丈夫ですよ」
「レイ殿ぉ……」
いやこれは抱き着きでもしなければ怖くておしっこちびっちゃう。
「と、とりあえずこの地下への扉へはあの巨体では近づけないと思いますが、もっと厳重な守りにしましょう」
「うん……あの修道院からここの地下へ降りてくる道は一つしかないから、そこさえバレなきゃ何とかなる」
なるよね……?
「兄者、監視カメラが必要ではないですか?行動を監視しないと恐怖で寝れないかも」
「あー知ってる。そう言うタイプのホラゲーね、分かるよわかるー」
分かるかぁ!!
「き、きっとココには何もないと分かればそのうち山の洞穴に帰って行きますよ、ね?」
「一応、アレは人間ではなかったっけ」
「熊と一緒にするな!熊が可哀想だろう!熊はもっと可愛いぞ!」
「確かに!」
我々は新しいホラーゲームの扉を開けてしまったようだった。
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