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82 そういうことですよね

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「やあっと帰れるワァ~!」

 スカーレット王女の結婚式は是非わが国で、とあの王様が駄々を捏ねたらしいので私はとんぼ返りをすることになった。

「私も絶対ついていきます!!」

 マシェはこれだけは絶対だと主張してイオリア兄上の口添えもあって一緒に行く事ができるらしい。良かったぁ!

「あ、あの……リキュシュ王子、マシェッツ王子……今まで国庫に納めていたお金は」
「返してもらえますかね?」
「は?返す?今まで通り入れるのではなくて返せと?」

 宰相がそっと近寄ってきたのでバシッと切り捨てた。

「そりゃそうでしょう。私とマシェが何故働いて得た金銭を国庫に納めなければならないんです?しかも私的な儲けだ。我々は王族としてそれに見合う振る舞いも仕事も出来なかった。だからその代わりにお金でこの国のためになるように支払ってきた。なのに今になって王族として義務を果たせというんならその対価は返却してもらうのが筋」
「流石に全部返せとは言いませんよ。ずっと「無能」でしたからね。でも直近5年分くらいは返してもらって問題ないでしょう。リュキなど身売りされるようなものですし、私もどこかに売り渡すんでしょう? 」

 面倒だから宰相に噛みついたことはなかったけど、こいつきらいだ。我々が言えば言う事を聞くと思っているところも改めて貰わないと。特有の若干早口でまくし立ててやったぜ。

「いえ、あの……国庫は今、カラで銀行から金を借りているような状態なので、し、支払いなど」
「そんなの知るか。この国から公的に私を追い出すんだ、しっかり金は貰うよ」
「し、しかし!携帯食料の入荷もなく、職人がどんどん他国へ逃げ出し、我が国の産業はガタガタで税収もどんどん落ち込み」
「それを何とかするのが偉い人の役目だろう。その頭は飾りじゃないんでしょ? 」

 この国から追い出される私の知ったこっちゃねえし~?

「マ、マシェッツ王子はこの国に残っていただきますよ!?国がどうなっても良いのですか! 」
「べっつにー。残りたくて残る訳じゃないし。助けたい人もいるわけじゃないし。あ、もしかして私をこの国に残せばまたお金を国に入れると思ったの?ざんねーん、そんなこと絶対にしませんから」
「……は?」
「ていうかなんで王家の末端王子とはいえ私が私的に働いたお金を国庫に納めねばならないんです?それなら宰相さん、あなたの給料も全部国庫に入れたら良いんじゃないですかー?そういうことですよね」
「は?」

 心底意味が分からないという顔をされてしまったが、我々の方が意味が分からない。だってそうでしょう?なんで「無能王子」が「個人的に働いて得た収入」を「国庫に納める」んだ?税金ならまだしも普通に得た賃金をだぞ?

「し、しかし我が国の財政はあの金で補っていた所が多く……え?」

 この人、大丈夫なのか……?兄上が国王になったらすぐ引退して貰わないと。


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