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40 自分でも気がついていないこと

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 はっと目を覚ますと、自分の部屋の自分のベッドの上だった。

「あ、兄者、起きたでござるか!」
「マシェ……」
「一体何があったでござる?」

 マシェに聞かれたが私はこう言うしかなかった。

「なんていうか……大人ってしゅごい」
「禿同」

 なんか同意されたぞ。

「まだまだ我らの知らない陽キャの世界は広い……」
「全面的に禿同で」
「まさかキッスで気を失うとは」
「分かりますぞ、兄者!なんでしょうな?あれは。なんかふわぁ~っとなるし、恥ずかしいようなそれでいてちょっと気持ちいいような」

 おや?マシェもどこかで体験済み?

「しかし、運命の美人とキッスをしてそのまま倒れているようでは駄目だよな!何とか頑張って耐えられるようにならねば」
「全くその通りでござるよ!これはこれからもオル殿にお願いせねば」
「うむ、拙者もレイ殿に良く指南して貰わねば!」

 二人でうむうむ!と腕を組みながら頷き合う。そして我ら本人さえ気がついていなかったのだが、他の人に頼もうと言う気は一欠片も浮かばなかったこと。
 もし仮にマシェとキスしてみろと言われたら断固反対しただろう事。
 そして多分、私がオル団長と、マシェがレイ殿とキスをしようとしたら、二人とも全力で阻止しただろう事。多分の多分、そんなフリだけでもヘソを曲げてクローゼットに閉じこもってしまいそうな事。
 その時は考えなかったけれど、多分そう思うと何故か確信した。

「ああ、兄者。レイ副団長が心配しておりましたから、顔を出した方が良いですぞ」
「ああ!そうだね。いやぁとんだ失態だぁ」
「はは!ドンマイでござる!これから何とかすれば良いのでござるし。オル殿も心配しておったから、拙者はオル殿に報告して来るでござるよ」
「うむ!」

 私はベッドから飛び起き、部屋の扉を開ける。

「リュキ!」
「わっレイ殿」

 開けると目の前にレイ殿が立っていてぎゅっと抱きしめられた。あらぁ、これは心配かけてしまったなぁ。

「拙者はオル殿に報告に行くでござるよー。では」

 そんな私たちの横をすーっとマシェは通り抜けていく。近くの角を曲がった後

マシェ!
わっ!オル殿かぁ!びっくりさせないでー

 なんて声が小さく聞こえて来たから、オル団長も心配して近くにいてくれたのだろう。いやはや、何と情けない。

「すいません、リュキ」
「何も謝る事などないですよ、レイ殿」

 ぎゅっと抱きしめてくれる腕の強さが何だか心地良い。私の方が背が低いのでちょうど胸筋に挟まる。何だろうこの圧迫感……気持ち良いぞ。
 もうちょっと密着した方がより圧迫されて気持ちよさそうだと、思わずレイ殿の背中に手を回す。おお!ジャストフィットぉ!

「すみません……」
「いえいえ!私があまりに耐性が無いのが悪かったんです。これから慣れるまでいっぱいお願いします!」
「い、いっぱい……?本当に良いので?」
「もちろんですとも!」

 キスの一つや二つで倒れる不甲斐ない隠キャですがどうぞよろしくご鞭撻くださいですぞ!
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