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11 無能の正体 レイクリフ視点
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双子を伴って我らが母国、ルゼンへ到着した。
「フィフナーとあまり変わらないね」
「良いんですよ、はっきり言ってください。ルゼンの方がフィフナーより寂れています」
「はは……」
馬車の窓から街並みを見ていた双子王子は苦笑した。色々な産業が興っているフィフナー王国と違ってルゼンには何の産業もない。細々と先細りしていく未来しか見えない国。国民の顔も暗く、国を離れ他国……それこそフィフナーへ移住しようというものも少なくない。
それでも私達はこの国で貴族として生まれた。責任は果たさなければならない。
「フィフナー国のように何かお金になる産業があれば良いのですが」
「ふむぅ」
二人は仲良く首を傾げている。だがそんな起死回生の妙案などある訳もない。我らは我らでなんとかこの廃れ行く国を守らなければならないのだ。
「このまま馬車で王宮まで行きましょう。王や王妃に挨拶をした方が宜しいでしょう?」
「あ、う、うん」
双子の顔が曇ったがまさかあんなことになるとは思いもしなかった。
「よく参られた、フィフナー国のリキュシュ王子、マシェッツ王子」
「……」
二人は広間で王と目を合わせようとしない。俯いたまま、返事もしないのだ。
「……王子、いかがなさいました?」
王妃の声かけにも反応がない。ざわざわ、ざわざわ会場に不穏な空気が広がってゆく。そしてどことからもなく聞こえ始めるあの噂。
「フィフナーの……お荷物」
「……無能……王子」
「挨拶すらまともに出来ぬ……ハハ、なるほどな」
おかしい、そんな国王に無礼を働くような性格ではないのに!私が俯いたまま顔を上げない二人に少し近づくと理由がすぐに分かった。
「団長……!」
耳打ちをし、私はリュキの隣に、別の団員をマシェの隣に立たせた。
「陛下、口を開く許可をいただきとうございます」
「許す」
すぐに許可が出た……良かった。
「リキュシュ王子、マシェッツ王子、お二人とも長旅ゆえに体調を崩されております。しかも高熱があるようで意識が朦朧としており、立っている事もやっとの様子なのです。部下達に医務室まで運ばせても宜しいでしょうか」
「な、なんと?誠か?」
私はコクリと頷く。リュキの肩を支えるようにして隣に立つが、リュキ自身はされるがまま、反論する様子もなくぐったりこちらへ身を預けてきさえしている。
「大事なフィフナー国から預かり受けた王子達だ、すぐに連れて行きなさい」
「御前失礼します」
私達は二人を抱え上げ、広間から小走りに出てゆく。なんて……なんてこと。何故、一言言わないんだ、この二人は。
「こわい、こわい、こわい、おんなのひとこわい、こわい、こわい、こわい」
「いっぱいいる、こわいこわいこわい」
熱はないが焦点が合わない目でぶつぶつと呟き続けている。
「副団長……」
「医務室には連れていけないな。あそこには女性の看護人もいる。部屋へ行こう」
私達は双子のために与えられる予定の部屋へ急いだ。まさかここまで女性が苦手だったとは気が付かなかった。苦手、というよりもはや恐怖症の一種だろう。あれだけ広いのに同じ空間に女性がいるだけでこの二人は震えて縮み上がり、手も口も動かなくなってしまうようだった。
「……これが無能の正体か」
どんなパーティでも女性は必ずいる。王のそばには王妃がいる。多分それだけで二人は立っている事すらやっとの状態になってしまうのだろう。私達も女性が苦手だという事前情報を知らされていなければすぐには気づけなかった。理由を知らなければ、挨拶も碌に出来ぬ無作法な無能者だと思われても仕方がないのかもしれない。
「副団長は二人が目を覚ますまでついていてあげてください。目を覚ました時知っている顔があれば少しは落ち着くでしょう」
「わかった、ではこの部屋に女性は近づかないよう君は通達してくれ」
「了解しました」
マシェを運んでくれた騎士は一つ礼をして出て行った。私達は双子が挽回するチャンスを作ってやらなければならないだろうな。
「フィフナーとあまり変わらないね」
「良いんですよ、はっきり言ってください。ルゼンの方がフィフナーより寂れています」
「はは……」
馬車の窓から街並みを見ていた双子王子は苦笑した。色々な産業が興っているフィフナー王国と違ってルゼンには何の産業もない。細々と先細りしていく未来しか見えない国。国民の顔も暗く、国を離れ他国……それこそフィフナーへ移住しようというものも少なくない。
それでも私達はこの国で貴族として生まれた。責任は果たさなければならない。
「フィフナー国のように何かお金になる産業があれば良いのですが」
「ふむぅ」
二人は仲良く首を傾げている。だがそんな起死回生の妙案などある訳もない。我らは我らでなんとかこの廃れ行く国を守らなければならないのだ。
「このまま馬車で王宮まで行きましょう。王や王妃に挨拶をした方が宜しいでしょう?」
「あ、う、うん」
双子の顔が曇ったがまさかあんなことになるとは思いもしなかった。
「よく参られた、フィフナー国のリキュシュ王子、マシェッツ王子」
「……」
二人は広間で王と目を合わせようとしない。俯いたまま、返事もしないのだ。
「……王子、いかがなさいました?」
王妃の声かけにも反応がない。ざわざわ、ざわざわ会場に不穏な空気が広がってゆく。そしてどことからもなく聞こえ始めるあの噂。
「フィフナーの……お荷物」
「……無能……王子」
「挨拶すらまともに出来ぬ……ハハ、なるほどな」
おかしい、そんな国王に無礼を働くような性格ではないのに!私が俯いたまま顔を上げない二人に少し近づくと理由がすぐに分かった。
「団長……!」
耳打ちをし、私はリュキの隣に、別の団員をマシェの隣に立たせた。
「陛下、口を開く許可をいただきとうございます」
「許す」
すぐに許可が出た……良かった。
「リキュシュ王子、マシェッツ王子、お二人とも長旅ゆえに体調を崩されております。しかも高熱があるようで意識が朦朧としており、立っている事もやっとの様子なのです。部下達に医務室まで運ばせても宜しいでしょうか」
「な、なんと?誠か?」
私はコクリと頷く。リュキの肩を支えるようにして隣に立つが、リュキ自身はされるがまま、反論する様子もなくぐったりこちらへ身を預けてきさえしている。
「大事なフィフナー国から預かり受けた王子達だ、すぐに連れて行きなさい」
「御前失礼します」
私達は二人を抱え上げ、広間から小走りに出てゆく。なんて……なんてこと。何故、一言言わないんだ、この二人は。
「こわい、こわい、こわい、おんなのひとこわい、こわい、こわい、こわい」
「いっぱいいる、こわいこわいこわい」
熱はないが焦点が合わない目でぶつぶつと呟き続けている。
「副団長……」
「医務室には連れていけないな。あそこには女性の看護人もいる。部屋へ行こう」
私達は双子のために与えられる予定の部屋へ急いだ。まさかここまで女性が苦手だったとは気が付かなかった。苦手、というよりもはや恐怖症の一種だろう。あれだけ広いのに同じ空間に女性がいるだけでこの二人は震えて縮み上がり、手も口も動かなくなってしまうようだった。
「……これが無能の正体か」
どんなパーティでも女性は必ずいる。王のそばには王妃がいる。多分それだけで二人は立っている事すらやっとの状態になってしまうのだろう。私達も女性が苦手だという事前情報を知らされていなければすぐには気づけなかった。理由を知らなければ、挨拶も碌に出来ぬ無作法な無能者だと思われても仕方がないのかもしれない。
「副団長は二人が目を覚ますまでついていてあげてください。目を覚ました時知っている顔があれば少しは落ち着くでしょう」
「わかった、ではこの部屋に女性は近づかないよう君は通達してくれ」
「了解しました」
マシェを運んでくれた騎士は一つ礼をして出て行った。私達は双子が挽回するチャンスを作ってやらなければならないだろうな。
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