【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
40 / 64

40 鬼がいます

しおりを挟む
「私が今日からこの屋敷の女主人。メイド長、この屋敷の荒れた姿は貴女の怠慢です。今日から厳しく致しますので、覚悟してちょうだい」

「し、しかしお屋敷が荒れてなどおりません。私達はきちんと心を込めてお屋敷やお嬢様のお世話をしております。何も知らない方に言われたくはございません」

 バチバチ、と女性たちの間に花火は上がらなかった。

「なるほどわかりました、貴女はクビです。明日には出て行ってもらいます」

「な、なんですって!?長年このレイクリフ家に勤めた私を、ク、クビ!?どういう事ですかっ旦那様っこの横暴を許すというのですか!!」

「良いのですよ、今すぐ出て行っても。明日まで荷物をまとめる時間を上げようと思いましたが、要らぬという事ですね。リエリ、メイド長の部屋行って荷造りをして差し上げなさい。もし隠し帳簿や横領の証拠があれば全部押さえて来て」

「畏まりました、奥様」

 リエリと呼ばれたメイドは綺麗なお辞儀をすると「この手の作りは一階の割といい場所にあるのよね、メイド長の部屋って」と一度も来たことがないはずなのにスルスルとメイド長の部屋にたどり着いていた。

「メイドが女主人に逆らう意味を分からないはずがないわね?そう言う事よ。さあ、旦那様達は執務室へ行ってくださいな。邪魔ですので。フレジットもそっちへ、邪魔ですので」

「あ、ああ……アイーダ、家の事は頼むよ。さあ、レイクリフ公色々聞きたい事もございます。執務室へ参りましょう」

「え?あ、わかった……そなたの細君は……」

「アイーダは凄腕ですよ……家の中で逆らってはいけません。鬼教官とナザールの令嬢達の間では有名でしたから」

「お、鬼……」

 鬼の前では人間は無力とばかりに男性陣はそそくさと執務室へ逃げ込ん。

「さあ、使えないメイドは切りますよ。不正をしていた者は今日中に提出する事。今日であれば懲罰だけで許します。明日からはクビですよ」

 ピシャリと言い切るアイーダは「やーん!レン可愛いわぁーーー!」と孫馬鹿になっていた顔は何処へやら、泣く子も躾ける鬼教官に変わっていた。アイリーンの母であり、ハイランド家の女主人であった女性はやはりとても強いのだ。

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

あなたに恋した私はもういない

梅雨の人
恋愛
僕はある日、一目で君に恋に落ちてしまった。 ずっと僕は君に恋をする。 なのに、君はもう、僕に振り向いてはくれないのだろうか――。 婚約してからあなたに恋をするようになりました。 でも、私は、あなたのことをもう振り返らない――。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

処理中です...