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31 化けました?

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 一方翌朝アイリーンは物凄く爽やかな目覚めを迎えていた。

「おはよ……ございます、おかぁ様」

「おはよう、レン。よく眠れましたか」

「ええ!このお布団の素晴らしくふかふかで良い匂いで……私の今までの布団とは比べ物にならなくて……」

「ふふ、そうね」

 レンブラントと一緒に寝る事など暫くなかったのですが

「環境が変わりましたので、今夜くらいは一緒の方がよろしいのではないでしょうか?」

 レンブラントはそんな必要はないと断ったのですが、この城の侍女長様のお気遣いなので、従いました。

「お目覚めですか?アイリーン様、レンブラント様。宜しければ朝のお支度のお手伝いをさせて頂いてもよろしいですか?」

「ありがとう」

 凄く良いタイミングでメイドが声をかけてくれたので、もしかしたら扉の前で待っていてくれたのかもしれません。

「レンブラント様はこちらへ。お部屋で着替えを致しましょう」

「分かりました。では母上、また後ほど」

「ええ」

 ふふ、起き抜けはお母様と久しぶり呼んでくれて少し嬉しかったです。


「あら……?」

「はい?」

「あら、あら、あらあらあら……?」

「はい……?」

 わたくしの身支度を手伝ってくれたメイド達が驚きの声を上げていますが、何故でしょうか??

 支度を整え、朝食の席に案内されますと、シュマイゼル様や、前王様や皇后様が揃っておいででした。

「遅れてしまい申し訳ございません」

「何の問題もないですよ、アイリーンさま……」

「シュマイゼル様?」

 わたくしの顔を見て動かなくなってしまいました。わ、わたくし何か変な顔をしているでしょうか??

「母上、今日はお綺麗ですね!」

「え?」

 にこにことレンブラントが声をかけてくれました。

「瞳もぱっちりしていて、とてもお元気そうに見えます!」

 ああ、そう言う事でしたか。今日はメイド達がきれいに化粧をしてくれました。

「ふふ、ありがとうレンブラント。でもこれはお化粧なのよ」

「そうだったんですか?じゃあどうして今までお化粧をしていなかったのですか?」

「……それは……」

 この和やかな朝食の場で言いたくはないのですが、エルファード様に禁止されていたからです。

「私より目立つことは許さん!」

 訳の分からない理由だった気がします。もしかしたらネリーニがそう言うように言ったのかもしれません。仕方がなく本当に最低限の事を御客様や取引相手に会う時だけしていましたから、今日のように普通のお化粧ですらしていませんでした。

「アイリーン様は何というか……とても施しがいがあるお顔です!」

「本当に……化けるレベルですわ……」

「もっと本格的にしても良いですか……!?」

「素のお顔も十分可愛らしいですが……美女、です」

 そんなに変わるかしら……?わたくしは自分の顔は見慣れておりますから、そうとは思いませんでしたが

「う、美しい……」

「ほんとね……アイリーン、素敵よ」

「本当だなあ」

 お三方が手放しで褒めてくださるので照れてしまいます。

「母上、良かったですね!」

 嬉しそうなレンブラント。わたくしが褒められるとこの子も嬉しいのでしょう。

「ありがとうございます」

 醜いと言われ続けておりましたが、なんだか少し自信が持てそうな気がします。わたくしも皆さんに笑顔を返せるよう頑張りたいと思いました。

「うっ!美しすぎる、心臓に悪い!」

 シュマイゼル様は少し、言い過ぎです。




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