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23 カエルは駄目だ!

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「あの……シュマイゼル王。宜しければこの爺に少しお聞かせ願いたいのですが……」

 執事のマーセルは執事の鏡の様な人なので、マーセルの方からシュマイゼル様に声をかけるのにはとても驚きました。
 マーセルが礼儀を欠いてまで聞きたい事は何なのでしょうか?わたくしも少し気になってしまい、諫める事を怠りました。

「ああ、なんだ。私に答えられる事ならば」

 良かった、シュマイゼル様も気を悪くしていらっしゃらないようです。これがエルファード様なら烈火の如く怒り狂って……忘れましょう、あの方の事は。

「シュマイゼル様は随分とアイリーン様にご執心のように見受けられますが、いつアイリーン様をお見初めになったのです?この爺、とんと見当がつきませぬ」

 それはわたくしも知りたい所でございました。記憶にある限りのシュマイゼル様と交流と言えば王妃になってからの外交のみであったかと思いますが。その頃なのでしょうか?
 シュマイゼル様はまた苦い顔をなさってから

「ひ、引かないで下さいね」

 と、前置きしてから話して下さいました。

「アイリーン様は、5歳の頃、ニールス国のラペル侯爵令息と婚約しておったでしょう?」

「ええ……生まれた頃からヴェルフェ・ラペル侯爵令息とは婚約を交わしておりました」

「そしてその頃、ラペル家に遊びに行かれたはずです」

「そう……だったでしょうか?」

 流石にその頃の事ははっきりと覚えておりませんが、マーセルを見るとこくりと頷いたのでどうやらそうらしいですね。

「ニールス国ラペル侯爵家のタウンハウスの隣の家は……あの、バルト公爵家でして」

「はあ?」

 わたくしは少し話が見えませんが、マーセルが小声で

「シュマイゼル様のお母上様であらせられる皇后様はバルト家のご出身でありましたな」

 と呟くのです。

「あの時、私は母に連れられてバルトの屋敷に遊びに来ていて……垣根越しにヴェルフェとあなたに会いました……そして恋に落ちたのです」

 5歳でしたわよね?わたくし。

「引かないでって言ったのに……」

 流石のわたくしも顔に出てしまいました。

「恋には落ちましたが、もう貴女はヴェルフェの婚約者でしたから、諦めました。そしてあなたに似た令嬢を探し……見つけられずに……引かないでって言ったのに……」

 流石のわたくしでも……ちょっと……。

「流石にそれは良くないと思い、諦めて勉学に打ち込んだのですが、なんと貴女はあの阿呆カエルの婚約者にされてしまった!ヴェルフェなら諦めもつきました、あいつはできる男です。今もニールスの中枢で頭角を現していますし。でも、でもカエルは駄目だ!!」

 しくしくと泣いていたかと思うとガバリと頭を上げ

「あんなのに、あんなのに恋しい人が奪われたんですよ!何度もナザールに戦を仕掛けてアレをカエルの日干しにしてやろうと思いました!でも、マグルとナザールの間にはニールスがあるんです!ニールスはとても友好な素晴らしい国です。戦に巻き込むわけには行かないんです!だから……叶いませんでした……」

 わたくしはニールスがあって良かったと心から思ったのでした。

 あとシュマイゼル様は顔に似合わず中々執着心が強い方のようでした……わたくし、大丈夫でしょうか?少しだけ心配になってしまいました。





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