上 下
47 / 117
海へ

47 目の下真っ黒

しおりを挟む
「へへへ、人魚だろうと、人間だろうと女性はキラキラしたものが好きなんだぜ!ヘッヘッヘ!」

「わ、分かるぜーーーー!」

 工房の中でガラスのバングル作りが1番上手なロウさんが、衛兵のグローグさんの袖の下に腕輪を3つ差し込んだ。完全に言ってる事とやってる事が「悪徳代官」で笑ってしまう。

「ほら、あんたが拾ってきた七色サンゴのかけらと紅サンゴのかけらを入れておいたぜぇ?へっへっへ!」

「あれか!」

「君の為に見つけたんだ……キリッ!だろ!」

「うっひょひょ!」

 衛兵とメイドさんは人魚なのだと言う。

「みたい!」

 そうお願いすると、窓の外をスイスイと泳いでくれた。巨大な尾びれがとても綺麗だった。
 
 そして考えてることや、感覚は人間の俺たちと大して変わらなかった。

「リト!私、ネックレスがいい!」

「ギーゴさんに頼みなよ!」

 ギーゴさんは首飾りが得意だ。あんなぶっとい指でちまちま糸に通して行く姿は笑うを通り越して凄い!

「三連のつなぎ目に珊瑚を嵌めたい。取ってきて欲しい」

「わかったわ!」

 ここに無理矢理連れてこられた6人はみんなそこそこの技術を身につけた。きっとガラスを溶かしてくれる相方がいてくれれば職人としてやっていける。

「精霊との契約は難しいだろうな」

 1番年上のジモンさんが頭を抱えた。ガラスは溶かさないとどうにもならない。

「うーん、そしたら炭だよなぁ……便利だけどアレ、ギアナ様作るの許してくれるかなぁ……」

 6人はギアナ様所に行ってもらおうと思っている。あの人ならきっと上手に使ってくれるはず。

「きゅーーー」

「あ!ザック帰って来た!」

 面倒だからと、ザックも人前では喋らない。人間の言葉は面倒なのかな?でもきゅうきゅう鳴いて俺を呼ぶのはとても可愛いんだ!

 1番深い下に降りて行くと、風呂敷包みを背中にくくりつけたザックが両手を振っていた。

「ザック!何これ?」

「きゅぅ」

 困った顔。どうしたんだろうと包みを解くと手紙とたくさんの飴が出てきた。ナニコレ?

「えーと……ギアナ様かな?この手紙」

『リト、おれ、ギアナに握り潰されるかと思ったー!』

 そっとザックが呟いた。

「ありがとう、ザック」

 手紙にはとにかく無事か!元気か怪我してないか!などなどとにかく取り乱している文字が所狭しと並んでいた。

『ギアナ、目の下真っ黒。寝てない、手紙書いて倒れて寝た!』

「わっ!どうしよう!早く戻らなくちゃ!」

『穴、屋敷の庭に繋がってる!人通れるくらい掘れそう!任せて!』

「うん!お願い!」

 ザックはぽすんと胸を叩いた。流石頼りになるなぁ!

「そうだ」

ザックに俺の名前が彫ってある首飾りを渡す。

「ここは手紙を書くものがないからね、これをギアナ様に持って行って。俺は元気だからね!」

「きゅっ!」

 ザックはアナを大きくしながらまたトンネル工事に戻って行った。早くギアナ様に会って安心させてあげたいなぁ。
 俺の頭はギアナ様でいっぱいで、両手は飴でいっぱいだった。

 食べろってことだよね??

「甘いものは疲れた時に良いらしいからかな??」

 なんで飴なんだろう??

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞奨励賞、読んでくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...