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40 絶対怒ってるヤツ
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「あのアデリンという女は恐ろしい女だった。あれほど強烈に人を長年に渡り憎める人間はそうそういない。アレを処分するのに帝国は頭を悩ませ……そしてあの壺を作る事を思いついた。どこにでも外道な発想を持つ者はいる」
「……呪いを吸い取って兵器にしようと?」
「そうだ。何度も何度も実験は繰り返され……今までかかってしまった。その辺りはすまないと思う」
「……」
「ただ、あのままあの女を殺しても、間違いなく悪霊悪魔の類になり、もっと強い力でお前を呪っただろう」
「……それは……確かにそんな気がする」
10年以上私を呪い続けたアデリン……昔はとてもきれいな女性だったんだろう。何せあの可愛いアージェから王太子を奪う位だったんだ、見た目も素晴らしかったんだろうな。
だが中身は腐り切っていた。
「私は、お前を救いたかった。それは嘘じゃない」
「……信じるよ……」
それだけは信じられそうだ。
「それと、意外とお前を愛していると言ったら信じられるだろうか?」
「それは信じられないな」
それは無理だ。
沈黙が降りた私達に声がかかった。
「皇弟殿下、これを持つ者が殿下へのお目通りを願い出ておりますが」
「……通せ」
「は」
何かメダルのようなものを受け取ってセシリーはためらいなくそう答えた。これは、何だろう?どこかで見た事があるような……。誰かが肌身離さず持っていた物に似ている気がする。
「フレデリック様っ!!!」
扉が開いて飛び込んできたのはなんとジェス家の執事のアーヴァインだった。
「アーヴァイン!?何でこんな所に!」
「アヴ。私より先にフレデリックの心配か」
「当たり前でしょう!私はあなたと別れたあの日からフレデリック様に仕えるって決めたんです。主人をセシリーからこの方に替える、あなたも納得したでしょう!ああ!フレデリック様!こんな外道男に虐められて、お可哀想に。私が来たからにはもう安心してください、こいつの弱点なら私が知ってますからね!」
「ア、アーヴァイン??ど、どういう事??」
アーヴァインはにこりと笑ってから
「まず、どんな状況か確認しましょう。それからお話すべきことは全てお話します」
有能執事はこんな時でも有能だった。
「なるほど、アデリンですか。その女が元凶だった、という事ですね」
「そう……みたいだ」
ふむ、頷いてからアーヴァインは順に全て話してくれた。
「まず、私とセシリーはフレデリック様が学園へ行かれる前にジェス領に流民に化けて逃げ込んだのです……私はここに居るセシリーの友達……まあ幼いながら部下でした。あの当時帝国は跡継ぎをめぐって苛烈な身内争いが起きていました。後ろ盾が弱かったセシリーは危機を感じ逃げ出したのです。ジェス領が緩いのは今も昔も変わりませんから」
「……緩いけど……」
緩いけどさあ!帝国の皇族の血を引いた人が逃げ込めるほど緩かったっけ?……緩いな。
「覚えておいででないでしょうか?私達が初めて会った時にはセシリーもいたんですが」
「……ちっとも……アージェに出会う前の記憶って薄くって……」
私は前世の記憶があったにも関わらず、とてもゆる~く生きていた。努力することもなく学園でも目立つこともなく。貧困に喘ぐ領地を何とかすることもなく、ただ使えない次男として流されていた。
「……まあ着の身着のまま逃げ出した私達はジェス領でなんとか暮らし……私達はお館の下働きとして雇って貰えました。当時はセシリーも働いていたんですよ?」
「え、ほんと?」
「うわー本当に覚えてないのか!確かに何にも覚えてなさそうな顔だったけどよ!」
ショック、と言った顔でセシリーが頭を抱えているが知らんし、覚えてないし?
「あなたは使えない次男の典型でしたが、使用人には優しかった……少ない小遣いで誕生日にクッキーを買ってくれたことを私達は一生覚えているというのに!忘れたんでしょう!フレデリック様!」
わ、忘れてるけれど……確かに屋敷にいた使用人の誕生日にはなけなしの金でクッキーを買ってあげていた。買えない時は材料を買って厨房で作ったりしたなあ。
「……まあ……暫くジェス領で暮らしていたんですが、帝国が落ち着き、アザリー様が皇太子として確立したことによって、セシリーは帝国へ戻ったんです。そして私はジェス領に残りました。それほど感謝をしていたんですよね……はあ」
「……なんか忘れてごめん」
良いですけど、とアーヴァインは言うけれど、これ絶対怒ってるヤツ……。
「……呪いを吸い取って兵器にしようと?」
「そうだ。何度も何度も実験は繰り返され……今までかかってしまった。その辺りはすまないと思う」
「……」
「ただ、あのままあの女を殺しても、間違いなく悪霊悪魔の類になり、もっと強い力でお前を呪っただろう」
「……それは……確かにそんな気がする」
10年以上私を呪い続けたアデリン……昔はとてもきれいな女性だったんだろう。何せあの可愛いアージェから王太子を奪う位だったんだ、見た目も素晴らしかったんだろうな。
だが中身は腐り切っていた。
「私は、お前を救いたかった。それは嘘じゃない」
「……信じるよ……」
それだけは信じられそうだ。
「それと、意外とお前を愛していると言ったら信じられるだろうか?」
「それは信じられないな」
それは無理だ。
沈黙が降りた私達に声がかかった。
「皇弟殿下、これを持つ者が殿下へのお目通りを願い出ておりますが」
「……通せ」
「は」
何かメダルのようなものを受け取ってセシリーはためらいなくそう答えた。これは、何だろう?どこかで見た事があるような……。誰かが肌身離さず持っていた物に似ている気がする。
「フレデリック様っ!!!」
扉が開いて飛び込んできたのはなんとジェス家の執事のアーヴァインだった。
「アーヴァイン!?何でこんな所に!」
「アヴ。私より先にフレデリックの心配か」
「当たり前でしょう!私はあなたと別れたあの日からフレデリック様に仕えるって決めたんです。主人をセシリーからこの方に替える、あなたも納得したでしょう!ああ!フレデリック様!こんな外道男に虐められて、お可哀想に。私が来たからにはもう安心してください、こいつの弱点なら私が知ってますからね!」
「ア、アーヴァイン??ど、どういう事??」
アーヴァインはにこりと笑ってから
「まず、どんな状況か確認しましょう。それからお話すべきことは全てお話します」
有能執事はこんな時でも有能だった。
「なるほど、アデリンですか。その女が元凶だった、という事ですね」
「そう……みたいだ」
ふむ、頷いてからアーヴァインは順に全て話してくれた。
「まず、私とセシリーはフレデリック様が学園へ行かれる前にジェス領に流民に化けて逃げ込んだのです……私はここに居るセシリーの友達……まあ幼いながら部下でした。あの当時帝国は跡継ぎをめぐって苛烈な身内争いが起きていました。後ろ盾が弱かったセシリーは危機を感じ逃げ出したのです。ジェス領が緩いのは今も昔も変わりませんから」
「……緩いけど……」
緩いけどさあ!帝国の皇族の血を引いた人が逃げ込めるほど緩かったっけ?……緩いな。
「覚えておいででないでしょうか?私達が初めて会った時にはセシリーもいたんですが」
「……ちっとも……アージェに出会う前の記憶って薄くって……」
私は前世の記憶があったにも関わらず、とてもゆる~く生きていた。努力することもなく学園でも目立つこともなく。貧困に喘ぐ領地を何とかすることもなく、ただ使えない次男として流されていた。
「……まあ着の身着のまま逃げ出した私達はジェス領でなんとか暮らし……私達はお館の下働きとして雇って貰えました。当時はセシリーも働いていたんですよ?」
「え、ほんと?」
「うわー本当に覚えてないのか!確かに何にも覚えてなさそうな顔だったけどよ!」
ショック、と言った顔でセシリーが頭を抱えているが知らんし、覚えてないし?
「あなたは使えない次男の典型でしたが、使用人には優しかった……少ない小遣いで誕生日にクッキーを買ってくれたことを私達は一生覚えているというのに!忘れたんでしょう!フレデリック様!」
わ、忘れてるけれど……確かに屋敷にいた使用人の誕生日にはなけなしの金でクッキーを買ってあげていた。買えない時は材料を買って厨房で作ったりしたなあ。
「……まあ……暫くジェス領で暮らしていたんですが、帝国が落ち着き、アザリー様が皇太子として確立したことによって、セシリーは帝国へ戻ったんです。そして私はジェス領に残りました。それほど感謝をしていたんですよね……はあ」
「……なんか忘れてごめん」
良いですけど、とアーヴァインは言うけれど、これ絶対怒ってるヤツ……。
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