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19 フォデリック

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「ヴィオル侯爵!今日は何とも麗しの佳人をお連れですな?」

「はは、妻の事ですかな?」

「イリーナ夫人も勿論本日も麗しいのですがもしかして「フォデリック様」では?」

「まあ?私はフレデリックのオマケかしら?ほほほ」

「まさか!滅相もない!」

 イリーナ・ヴィオル、ベルモンド義兄上の細君であり、目端のキツイ方で私の事はとても可愛がって下さるが……。

「フレイ、ちょっとあなたが使ったハンカチくれない?」

「何故ですか?」

「ファンに見せびらかすから!」

「義姉上?!」

 ちょっとだけ、ユニークな方だ。


「ふふ、でも気になりますわよね。これ以降のお話は男性同士でどうぞ?私はご婦人方と話して参りますわ」

 それでも動きも足取りも優雅にイリーナ義姉上は行ってしまう。待って、待って下さいーー!ハンカチでも靴下でも差し上げますから、ここに置いて行かないでー!!

 ベルモンド義兄上は確かに沢山の人達を紹介してくれたが、沢山過ぎて誰が誰だか分からなくなるし、ついでに皆口を揃えて

「フォデリックの……!」

「はは……」

 愛と悲しみのアシャンタはどれだけ流行ったんだ……?気を利かせてオルウィンが人気の少ない所に連れ出してくれなかったら、倒れてしまいそうだった。

「駄目だ……誰が誰だか覚えていない」

「ベルモンド兄上もフレイの事自慢したくてしょうがなかったんだ。それにああ見えてフレイをダシにしてかなり商談なんかを纏めてるから、その辺真似した方が良い」

「流石、ヴィオル家当主は違うなぁ」

「そうだね」

 オルウィンは優しく笑う。笑っている場合じゃないぞ?お前だってヴィオル家の一員なんだから、家の為に変な病気は治せよ。

「その服、似合ってる」

「え?」

 贈られて来た礼服?そう言えばヴィオル三兄弟でお揃いという事は、私とオルウィンもお揃いと言う事だ。
 あれ?ベルモンド義兄上はイリーナ義姉上の瞳の色と同じ紺色が差し色だな?そしてオルウィンの差し色は水色で、私の服の差し色は黄緑……うん、オルウィンの色だな?
 この場にベルモンド義兄上がいないと言う事は私とオルウィンはそれぞれの色を纏ったお揃いを着てるって事?

 うわっ!引くわぁ!ほぼカップルじゃないか!!

「フレイ……フレデリック。私と結婚して欲しい」

「は?」

「昔からフレイの事が気になってた。アージェ姉上を失った君を見て私は確信したんだ。君の事が好きだ、ずっと一緒にいて欲しい」

 オルウィンの病気が悪化して、ついに壊れてしまったぞ!!!?

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