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72 退寮と秘密にしないメニュー開発

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 お兄様が渋々お城へ出かけたのはだいぶ経ってからだった。


「エヴァン・フェンルース。妖精の祝福を解くんだ」
「無理でございます」
「何故だ!お前が寄越した祝福だろう!」
「私がお三方にかけた訳ではありません。妖精がお三方にかけたのです。解くことは妖精にしかできません」
「ならば妖精に解かせろ!」
「それは無理な話でございます。妖精に命令などできるわけがないのですから」

 飄々と答えるお兄様に痺れを切らした国王陛下が、お兄様を牢へ入れるよう叫ぼうとした瞬間、激痛に襲われベッドの上で転げ回ったそうです。


「あの時、妖精達の様子が少しだけ見えたのだけれど、寄ってたかって攻撃していたなあ……あれはとても痛そうだった」
「そこまで行くと少し可哀想な気もしますね」
「うん、でも私達は基本的に妖精に何かを強要することはできない。向こうがフェンルースを気に入って勝手に手を貸してくれているだけだからね。無邪気で気まぐれ、それが妖精だ」

 そうなのよ、妖精は私達がどうこうできる存在じゃなくて、向こうが勝手に力を貸してくれるだけなんだ。きっとお兄様が妖精の姿を見た時も、妖精達が見せたいなと思ったから見えただけ。私に話しかけてくるときも向こうからだし。

「まあ分かっていただけたみたいで、すぐに帰して貰えたよ」
「きっとエヴァンお兄様がお帰りになるまで体中が痛んだんでしょうね」
「そのようだね、早く帰って下さいって言われたからね」

 お城の人達はもしかしたら我が家を呼び出せば何とかなると思っていたのかもしれない。でも妖精は私達が契約している訳でも使役している訳でもない。本当にどうしようもないのだ。もしかしたらもう許してあげて欲しいと頼めば何とかなるかもしれないけれど、そこまでしてやろうという気も起きない。だってこの騒ぎのせいで謝罪すらされていない。王太子殿下は部屋から出られないみたいだからもう大丈夫だとは分かっているけれど、馬車が通る道を歩くのが怖くて仕方がなくなってしまった。

「あんな目に合えば当然だろう、むしろ家から通った方が良さそうだ」
「そうします……」

 寮での暮らしは楽しかったけれど、家から通う事にした。食堂の女将さんはとても残念がってくれたけれど、私が食べていたメニューはダイエット食として大人気だよと教えてくれた。栄養のバランスは取れているらしい。
 その後、この女将さんが街で低カロリーレストランを作って女性に大人気になった。私も何度か呼ばれてメニューや味付けなどを意見させてもらったりした。あまり油分や塩分を使わずに薄味だけど美味しいとか中々難しかったけれど、繁盛しているみたいでほっとした。
 私のせいで売れなかったら申し訳ないですもんね。

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